感謝の言葉です。
よろしくお願いします。
ライシェラは、トロールの杖を持つ手の指を切り裂く。
「ピリカカム、痛いぞ。だが森の勢いは止まらぬ」
トロールの言うとおり、枝や木の葉の攻撃は止まない。
ライシェラは、自分の背丈の倍以上ある杖を奪い枝達から逃げるように一旦離れる。
「なんじゃ?そんな棒きれを奪っただけか?」
ライシェラは黙って杖を膝で折ろうとする。
「待った!今の無し!もうそれは使わんから折らんでくれるか?ちょうど良い長さと握りのモノを探すのは大変なんじゃ」
トロールが動揺しながら、止めようとする。すると葉っぱがハラハラと、木の枝がカランカランと落ちる。
ライシェラは、長い杖を横に投げる。
「はぁ、ピリカイセポお主、良い奴じゃな。ならば早いとこ終わらせる。ユプケ・ハム」
トロールは、ドンッと地面を叩きその周囲の葉っぱを腕の周りで回転させて纏わせる。
そして、大きな拳をライシェラに向かって振り下ろす。
その動きは大きいのにとても速い、しかも腕に纏った葉っぱが四方八方に棘のように飛んでいく。
もちろん自分にも刺さるが、すぐにハラハラと葉っぱが落ちる。
刺さった所から再生しているみたいだ。
「ユプケ・ハム」
そしてまた地面の葉っぱを腕に纏わせる。
ライシェラは、腕の攻撃はかわせても、葉っぱを全て避けきるのは難しいみたいで、少しずつ傷が増えていく。
「ピリカイセポ、動きが鈍くなってき、ムグッ」
「だまる」
ライシェラが手から糸を飛ばしてトロールの口を塞ぐ。
あの糸は、アラクネーの糸だ。
アージが服に付けた付与魔法の一つで、ライシェラの使い道のあまりない魔力を使うためと言っていた。
アラクネーの糸とほとんど同じ性能で、強靭で粘着性を持たせたりもできるみたい。
でも、元が魔法だからか、簡単に消すことができる反面、何もしなくても半日ほどで、消えてなくなってしまう。
そのため、それで布を作ったりはできない。
「ぐぅぉ!なんじゃこれは!ねば、ングゥ!」
「だまるといった」
手で引きはがすとすぐに、また口を塞がれてしまう。
しかもライシェラは糸を出しながら動き回り。
口の糸を取ろうとした腕を、トロールの体に巻き付ける。
さらに足もグルグル巻きにして、トロールを蹴り倒す。
見えない糸を伝って上に昇る。
見上げると、いつの間にか木の高い幹と幹を繋いで、蜘蛛の巣の様な円網が出来上がっていた。
そこに糸を通しトロールの足首に巻いて、吊り上げる。足が上になるトロールの逆さ吊りが完成した。
「かった、まけをみとめる」
そう言うと、トロールの口の部分の糸だけ消す。
「ぬぉー、こんなことで!」
トロールは必死に暴れるが、左右にプランプランと揺れるだけだ。
「むだ、もうなにもできない」
「・・・しかし!ピリカイセポではワシを倒す事はできない。引き分けだ」
ライシェラが、やれやれと言うように、ため息をつく。
「とろーるは、かいふくが、おそいばしょと、はやいばしょがある」
「・・・なにをいっとるんじゃ」
「そして、いたみににぶいけど、いたくないわけじゃない」
しゃべりながら、ゆっくりとトロールに近づく。
「だからなんじゃ」
「このふくは、どくをつくることができる。かいふくのおそい、しんぞうやせぼねに、どくをながしこめば・・・ながくくるしむことができる」
「そっそんなことできるわけ・・・」
「ひとがたのつくりには、くわしい。ためしてみる、たえれるものなら。たえてみせろ・・・」
ライシェラが、ジャキンって音が聞こえそうな勢いで爪を出す。
「待て!待て!!わかった。ワシの負けじゃシトマメノコよ!アペ・フチ!トクイェ!!イカスイ!オピウキ!!」
「やれやれ、ライシェラ。許してやってくれよ。恐ろしい女だってさ。もうなめられたりはしないだろ?」
レティが僕を持ってライシェラの横に飛んで行って、肩に触れる。
ライシェラがその手をバチっと跳ねのける。
「・・・こいつから、いやなにおいがする。からだがころすべきといっている」
「・・・ライシェラ」
ライシェラの背中がまるで別人みたいで、気づいたらの袖を引っ張っていた。
ライシェラが僕の方をみる。
「じょうだん、しんぱいいらない」
そういって、ライシェラが僕の頭に手を乗せる。
いつものライシェラだった。
そして、トロールをグルグル巻きにしていた糸を消す。
ドダンッと頭からトロールが落ちてくる。
「ふぅ、久々に怖かったわい」
「ニタイエカシ、これは貸し一つな」
「なんじゃ、なんか欲しいものでもあるのか?」
「いや、数日後ヒュムの一団が黒の森に入る。その間、見つからない様、陰から守ってやってくれよ」
「なんじゃ、めんどいのう」
「これは、手間賃だ」
そう言ってレティが自分のカバンから2冊の本を手渡す。
「・・・まぁ、暇つぶしにはなるか。やってやるわ」
そう言って、本を受け取り、杖を拾って、すぅっと木の陰に消えていった。
「シトマメノコヤイライケ」
ふと、そんな言葉が聞こえた気がした。
読んで頂きありがとうございました。




