いつの間にか居ませんでした。
よろしくお願いします。
「そう言えば、ヒュドラがいなぐなっちゃだね」
「ん?逃げたんじゃないか?」
ライシェラが、鼻を動かす。
「ライシェラさん、ご無事ですか!?」
チコリが駆け寄ってきた。
「よゆう。らくしょうだね」
「けっこう、服がボロボロだぞ?」
ライシェラは、改めて自分の服を見た。
傷はもう治ってるけど、服はあちこち穴が開いている。
ライシェラも擦り傷ぐらいなら簡単に治せるみたい。
そう思っていると、服の穴が塞がっていく。
「そんなことも出来るのか」
「いとをだす、おうよう」
「便利なもんだ」
「コブン、こっち」
ライシェラは、そう言って僕の頭に手を乗せたままビエラヤの方へ歩き出す。
振りほどく程ではないけど、なんとなく恥ずかしいので、せめて肩に手を乗せるとかではだめだったんだろうか?
まぁ、身長差的に屈まないといけなくなるか。
「どうしたライシェラ?」
背中越しに、レティとチコリが顔を見合わせて、ついてくるのがわかった。
「なっな!?」
ビエラヤと魔狼が近づいてくるライシェラを見て、後退っている。
どうしたんだろう?
ライシェラは見向きもしないで、その横を通り過ぎる。
「ビエラヤ?なにビビってんだ?」
「あ、いえ。そのような事は・・・」
「あぁ、ライシェラは意外と考えて戦うタイプだからな。襲うなら一気に仕留めないと手こずるぞ」
「そっそんな。襲うなんて・・・」
「レティシア、しつれい。いがいじゃない」
「でも、ライシェラさん凄かったですね。まさかあの様な方法でトロールを無力化するとは・・・」
「・・・レティシアが、まほうまほう、うるさかったから、つかってみた」
「じゃあ、アタイのおかげだな」
「ちがう。そうは、いってない」
「なんだよ?そういう事だろ?」
そんな話をしながら、僕たちは戦っていた場所から、ライシェラがすでに切り開いた道を戻る様に進んだ。
しばらく戻ると、森の中にヒュドラの石像が見えてきた。
いや、よく見ると頭の一本が石じゃない。
僕は慌てて駆け寄る。
近づくと周囲の木々も一部が白い石になっている。
「・・・石化の呪いだな。でもそんなの使える奴、この辺りにいるのか?」
「・・・それは・・・」
後ろから聞こえてきた声はレティかもしれない。
でも僕はそれどころじゃない。
ゆっくりだけど、ヒュドラの最後の頭も石になりかけている。
全てが石になったら死ぬのかどうかはわからないけど、ヒュドラのなんとなく悲しそうな顔を見たらこのままじゃダメだって思う。
急いでヒュドラの体に触れる。
深呼吸して、はやる気持ちを落ち着けて、集中する。
・・・治せそうだ。
僕は、腰の袋から素材を取り出し、合成してレティの所へ戻る。
「レティ、お願い」
「ほいよ」
レティは僕から受け取った薬を、空中に振り撒く。
するとレティの後ろから、ブワッと風が吹き抜け、薬を舞い上げる。
その風はヒュドラの周りを包み込むように巡り、最後に頭上ではじけて消えた。
振りかけて使うには、ヒュドラは大きすぎるし、飲ませようにも頭は僕の遥か上だったからレティに頼んだ。
効果はげき的で、まるで白い泥を水で洗い流すように、ヒュドラと木々が元に戻る。
「レティシア様!素晴らしい魔法ですね!!?」
ビエラヤが、感極まったように胸の前で両手を組んでレティを見つめている。
言われたレティも、ライシェラとチコリまで、え?何言ってんの?みたいな顔になった。
確かに、ああやって薬の効果をより広い範囲に出来るのはすごい事だよね。
それに、レティを褒められて悪い気はしない。
「まぁな、じゃあ行くか。お前はどうする?」
そう思ってるとレティが、ヒュドラに尋ねる。
すると、石化が完全に溶けたヒュドラが僕に頭を近づけて頬ずりした。
といってもサイズが違い過ぎて、体を軽く横に押された感じだ。
残念ながら頬と頬が触れ合う感じじゃない。
しかも左右と背負子も頬ずりされて、結構もみくちゃだ。
取り合えず、左右の頭だけでも撫でておいた。
「来るみたいだな」
なんか色々あったけど、黒の森のさらに奥を目指してまた進み始めた。
読んで頂きありがとうございます。
ヒュドラさんが居なくなっていました。
決して!作者が存在を忘れていたわけでは無いのです!
その言い訳のためのお話でもないのです!
色々すみません。




