魔女に会いました。
すみません、遅くなりました。
街の中に入ると、前にも増して物々しい雰囲気だ。
入ってすぐの所に、金属製の鎧を着込んだ人達が居たり、大きな馬車が止めてあったりする。
この街には、冒険者ギルドは無いって言っていたので、冒険者ではないと思う。
それに、皆同じ様な鎧を着てるし、発している空気もピリピリしてる。
『レティあの人達は?』
「んー?たぶん騎士団かな?何かあったのかも知れないね」
「ふーん、なんだろうね?」
その人達から離れて少し進んだところで、道の真ん中に黒い猫が待っていた。
ジッとこちらを見ている。
ここは、馬車も通る大きな道なので、危ないなって思っていると、にゃっと鳴いた。
レティは特に気にしてないみたいだ。
猫が僕たちの行く手を遮るように移動する。
あ、レティが猫を跨いだ。
猫はレティを追いかけて足をペチペチ叩いている。
「はぁ、わぁかったよ。鬱陶しいなぁ。どっち?」
猫がにゃっと鳴いて路地に入っていく。
入ったところで振り返って、にゃにゃ、にゃにゃ、にゃにゃっと鳴いている。
「わぁかったって。ライシェラ、先にココナの屋敷に行って、黒猫がうるさいから、遅れるって伝えてくれ」
「わかった」
ライシェラは、うなずくと、スタスタ歩いて行く。
それを少し見送って、レティはしょうが無いって感じで、鳴いてる猫の後を追った。
僕もレティに着いていく。
路地に入ると、薄暗くて生活感が無い感じだ。
あ、ネズミだ。
あ、捕まった。
そのままネズミを咥えて、何事も無かったように案内を続ける。
しばらく行くと、光が差し込む裏庭みたいなところに出た。
猫はそのまま一軒家に入っていく。
レティは、クルッと回って引き返そうとするが、猫が入り口でまた鳴き始める。
「わかった、やめろ」
『コブン、少しお願いがある・・・』
レティに言われたことをしてから、少し遅れて家に入る。
中は色んな生地や糸、毛糸や様々な小物が所狭しと並べてある。
店の奥で揺り椅子に座っているお婆さんが、店内を見回していたレティと目が合う。
レティは事務的に、お婆さんは優しそうに微笑みながら、話しはじめる。
「おやおや、レティシアじゃないか?よく来たね」
「その猫に呼ばれたんだよ」
「あら?そうなの?イタズラッ子で困っちゃうわねぇ。そういえば、いつごろ街に着いたんじゃ?すぐに顔を出してくれればえぇのに」
「今回は冒険者として来たから、寄らなかったんだよ」
「そうなのかい?ラティキエのとこの・・・あのチビちゃんは、その日に会いにきてくれたがね?」
「ラティキエの?あぁ!チコリもこの街にいるんだ?」
「・・・それに、魔女として、全く何もしなかったわけじゃ無いんじゃろ?」
「どういう意味だい?街中でしたことなんて、市場で買い物くらいか」
「あらあら?そうなのかい?宿に泊まらなかったのかえ?」
「今回は安い仕事だからね。泊まったら赤字になるよ」
「まぁ、そうじゃったんか?言ってくれれば、いくらでも寝る場所くらい用意したんだがね」
「迷惑かけるのも悪いし。最近、野宿でも不便には感じないんだ」
「あら、あら、そうかね。そうかね?そういえば、誰かさんが街中で赤毛の女の人を探し回っておったなぁ」
「・・・じゃあ、そういう事で、元気そうでよかったよ」
「お前さんが、絞め殺したシスターの話をしとるんじゃ」
「・・・なんの事だ?絞め殺した?物騒な話だね」
「王都の魔女狩ルカルト・フィリル。魔女の特定の魔法を無力化できる、なんらかの加護を持つ。王都の魔女を10人近く狩った経験がある、要注意人物じゃ。ところが、数日前この街の門の近くで意識を失った状態で発見された。首には後ろから掴まれた痣があり・・・まだ聞くかい?」
「それで?なにが言いたいのさ?」
「いくら魔女同士は原則、不干渉だったとしてもじゃ。こういう危ないのに絡まれた時は、街の顔役のワシにも一言、声をかけておくれって言いたいんじゃよ!今回は最初にお前さんの所に行ったから、赤毛の女ばかりを探して、他に襲われた者はおらん。その点だけは僥倖じゃった。しかし、この街はハルシュレックみたいな魔女の巣窟じゃない。戦えない子の方が多いくらいなんじゃ。皆がみんな、お前さんみたく武闘派って訳じゃないんじゃぞ!」
「ヤだね、めんどくさい。それにアタイは無関係だしね。とんだ濡れ衣さ」
「どこ探したって、魔女狩の背後から、片手で絞め落とすヤツなんざ、お前さんぐらいしかおらんじゃろ!」
「魔物かも知れないだろ?あてずっぽうの長い説教なんて、聞きたかないね」
「あくまで、しらばっくれるか!!はぁ、やれやれ、最後にこれだけは教えとくれ。なぜフィリルはこの街に潜り込んだんじゃ?王都がヤツの縄張りじゃろ?」
「さぁ?知るわけ無いだろ」
「・・・もう、えぇわい」
店の商品を見ていた僕は、めまいがしたような気がして倒れ込む。
「おや?お前さんの連れ、具合が悪いみたいじゃぞ?」
二人の視線が一瞬こちらに向く。
「・・・また、毒を使ったのか?」
「はて?何のことじゃ?どれ?ワシが診てしんぜようか?」
「・・・またハルシュレックの時みたいに街に居られなくしてやろうか?」
レティの手の平から黒い炎が噴き出す。
「あまり、ワシをなめんことじゃ。いま、飛竜騒動で王都から騎士団がきとる。その団長は、お前さんの殺したシスターの兄じゃ。街の顔役と、妹を殺した冒険者。さぁて、騒いだ時どちらが悪者かね?お前さんも王国相手に、やりあう気はなかろう?」
「さすが、王都から教会を追い出そうとしてる、過激派は情報力がちがうね?アタイが暴れて王都を敵に回すのまで計算の内かい?」
「・・・そんな、余裕ぶっててよいのか?ん?お前さんのかわいがっとるゴブリンが、苦しそうじゃぞ?」
「解毒薬はあるんだろうな?」
「無論、ここは薬もあつかっとるよ」
「・・・何が知りたい?」
「フィリルの動機じゃ」
「・・・アタイが知ってるのは、いま一緒に依頼を受けてる冒険者が、光を背負ったヤツに、ピンクの玉を取られた。ってのを聞いたぐらいさ」
「何の話じゃ?・・いや、天使か・・・まさか、ヤツらが嗅ぎつけた!?・・いや!いや、たまたまギフト持ちがしくじったのか?なぜそいつは、この街に来た?」
「依頼だろ。毒トカゲ退治のな」
「・・・なぜ天使が、贈物を奪う?フィリルが集めておるのか!?まさか!この街の魔女からラオベンを集めるために?」
「知ってることは話した。解毒薬を寄こせ」
「はぁ、立場がわかってないのぉ。じゃが、お前さんの話がホントとは限らぬ。それにフィリルがお前さんを捜している理由はなんじゃ?」
「・・・はぁ、もういいや。アタイは帰るよ、次会ったら、その姿でも殴るからな」
「こら、待て!話は終わっとらん!!そのゴブリンが死ぬぞ!良いのか!?」
「行くよコブン」
「わがった」
僕は起き上がって、パンッパンッとほこりを払う。
「な!?何故動ける?毒が効かぬというのか!?」
「アンタの得意な毒魔法に対策しないわけないだろ?何度も同じ手はくわないさ」
「クッ、騎士団に殺しの事を訴えれば・・・」
「まさか、同胞を売るほど落ちちゃいないだろ?そんな焦ってるのは、フィリルってヤツに逃げられたか?なに企んでてもアタイは感知しない。だからこれ以上グダグダ言うな」
「クッ!」
「じゃあな」
レティについて、僕も店を出る。
「よがったの?」
「まぁ、アタイに出来ることは無いね。それにしてもコブン、演技が下手だね。もう少し苦しそうにするとかなかったの?アタイは、そっちの方がバレないか心配だったよ」
「ごめん。演技とかやっだごと無くて」
「まぁそうだね。ああいうのは、堂々としてりゃいんだよ。だいたいはね」
「・・・そうなんだ」
堂々と苦しいふりって、よくわからなかったけど、聞けなかった。
僕たちは薄暗い通りを抜けてさっきの馬車道り戻る。
そこでライシェラが待っていた。
「悪いなライシェラ、待ったかい?」
「へいき」
それから僕たちは3人で、まだ人がまばらな、通りを抜けて、ココナの屋敷を目指す。
丁度、パン焼き窯の横を通ったとき。
ライシェラが少し上を向いて、鼻をスンスンっと鳴らす。
お腹すいたのかな?
「れてぃしあ」
「食べるか?」
「ちがう」
「またつけられてる?」
「いや、たぶん、うごいて、ない、よわってる」
レティが、チラッと僕の顔を見た気がした。
「ふーん?どっち」
「こっち」
「でもその前に・・・」
レティが、焼き窯の方に行って、売り物じゃないって言われているのに、大きいパンを1つ、沢山お金を出して買ってきた。
「コブン、しばらく何も食べてなかったろ?」
「ありがどう」
一口、食べる。
胃がビックリするといけないのでゆっくり噛む。
「ちがうから!これで、3人分、なんか合成できるだろ?パン焼きのヤツが、1つしか売らないって言うから買えなかったけど、加工すれば少しは量も増えるだろ?」
「あぁ、そっが」
「あぁ!コブン、わかってないね?コブンが倒れたおかげで、アタイ達がどんなに辛かったか、理解してないでしょ?ゴブリン達の飯は、美味くない。おかげで宴会もイマイチ盛り上がらないし、腹は減るしで大変だったんだ」
ライシェラまで、うんうんと、うなずいている。
「そっが、ごめんね」
僕は草原で採れる栗みたいな木の実とパンを合成する。
出来たのはマロンクリームパン、栗をペースト状にしたタイプだ。
なんとなく、消化の事を考えて選んだ。
「美味いな!この栗の風味と・・・」
菓子パン一つでも難しい事を言い始めるレティ。
「ん、うまい。れてぃしあ、こっち」
そう言って、ライシェラが小路に入っていく。
少し道なりに進んで、曲がった先のドアの前で、ライシェラは立ち止まり、レティの方を見る。
なんとなく目で会話した気がした。
僕は背が小さいので、会話に入れず見上げていただけだ。
レティは、何も言わずにドアに触れる。
鍵はかかっていないみたいだ。
開けた瞬間、女の人が襲いかかってくる。
レティは難なくそれを受け止め、腕を捻りあげる。
「クッ、赤毛の魔女!!」
女の人は裸だった。
背中に複雑な模様が書かれている。
「あらら、呪いで能力が封印されたのね」
「クッ!」
「まぁ、別にどうこうする気はないよ。ってかライシェラ、こいつだったら、ほっときゃいいのに」
「・・・れてぃしあの、しりあい、でしょ?」
「はぁ、また、変なタイミングで関わっちゃったな」
レティが女の人を放すと、その人はすぐに距離をとって身構える。
「見なかった事にする。じゃあな」
そう言って、振り返ったレティと目が合う。
「・・・助けたいの?」
僕は女の人を見る、とても脅えている様な気がする。
「・・・わがんない」
「はぁ、今日アタイ達は街を出る。外まで送ってやろうか?」
「だれが!」
その時、お腹の音が鳴る。
当然、食べたばかりの僕たちじゃない。
僕はいったん部屋を出て、パンの残りと、栗みたいな木の実を取り出して合成する。
また3つのパンができる。
微妙な空気の部屋に戻ると、レティとライシェラがサッと一個ずつ取って食べてしまう。
あまりの速さに、二人の顔を見つめると。
「毒味だ、コブン。信頼を得るためのな」
ライシェラは何も言わずに親指を立てた。
なんだろう、気絶している間に、二人の連携が上手くなってる。
僕はローブをほろってから、脱いでその上にパンを置く。
「つがって」
「あとは、好きにしな。ついてくるなら早く決断するこったね。んじゃ行くか」
僕は耳を隠せる、ニット帽みたいな帽子を被る。
これは、アージがもしもの時にって作ってくれた帽子で、弱い認識阻害がかかっている。
僕をゴブリンだと思って見ないとヒュムに見えるらしい。
作者には腹の読み合いみたいな、会話は無理でした。
でも書いてしまいました。
なぜそんな流れにしてしまったのかは、わかりません。
ちなみにこの街のパン焼き窯は一定区画の共同で、パン屋さんではありません。
一般家庭は窯にパンを持って行って焼いてもらう。っという作者の妄想です。
じゃあレティが無理やり買ったパンは?・・・たぶん焼いてる人のパンです。




