コブンを手に入れた。
ゴブリンの視点から変わります。
よろしくお願いします。
「・・・グッグギィ・・・」
手の中でゴブリンが唸った。
はぁ、アタイも相当参ってるな。
ゴブリンに話しかけるなんて、通じる訳も無いのに。
しかし、この子供のゴブリン、見た目は普通だが、さっき確かに合成の異能を使ったよな?
・・・そんなの今まで聞いたこと無い。
しかも、アタイを助けようとしたのか?
ヒュムの冒険者は逃げ出したのに・・・いや、まさかな。
ゴブリンは弱い魔物だ。
だが、悪知恵が働く。
だからこそアタイのカバンを漁った。
・・・でも何も取らなかった。
まぁ、毛皮しか入ってないか・・・。
・・・食べ物を用意してアタイの横に置いた。
毒でも入っていたのか!?
・・・ってもう食べてしまった。
しかし今の所、異変は感じ無い。
むしろ元気になった、魔力も少し回復したから震えも止まったし・・・。
「・・・お前、アタイを助けようとしたのか?」
そうゴブリンを見ると、目に涙浮かべて必死に頷いた。
ん?なんかアタイがイジメてるみたいに・・・なってないか?
それより、会話が成立したような・・・気がしないでもない。
「・・・お前、食べ物に毒入れたのか?」
「ぎげでなぎでぐ」
なんか、唸りながら首を横に振った。
必死に否定しているように見えなくもない。
「お前、アタイの言ってる言葉がわかるのか?」
持ち上げて顔をのぞき込む。
すると、やたらカクカクと頷いた。
・・・もしかすると、通じているかもしれない。
さて、どうするか。まさかアタイ程の魔女が、ゴブリンなんかを使い魔にするとか・・・あり得ない。
しかし、こいつは異能を持っている。
もし、他にも魔力を回復できるようなモノが作れるなら、逃がすのは惜しい。
特に今アタイは瀕死、こいつが森を抜ける切り札になるかもしれない。
だがしかし、服従とか支配系の魔法は苦手だから、今は魔力が無くて使えない。
今できるとしたら、力を分け与える契約の方法だけだ。
そうだ、アタイが使い魔にすれば、きっと力も強くなる。
子供のゴブリンでも、この辺りなら大抵の魔物に勝てるはず・・・ふむ。
まぁ、死んでしまっても、ラオベンを奪う方法を調べておけば、無駄にはならないか。
「お前、アタイの言葉がわかるなら手、出して」
ゴブリンは涙目になりながら、震える手を出した。
アタイは、すっかりボロボロになってしまった手甲から、針を取り出す。
血が必要な契約用の針で、他には大した使い道が無い。
緑の震える手にチクッとやる。
ゴブリンの血を手の平で受け取り、自分の手もチクッとやる。
「いい?今からアタイが呪文を唱えるから、最後に『はい』って言いなさい。あ、言えなければ心の中で同意するだけでいいわ」
ゴブリンはやはり、あまりよくわかってない顔で何度も頷いている。
まぁ、わかってなくても契約してしまえばこっちのモノだ。
アタイは緑の小さい手を握り、唱え始める。
「我、魔女レティシアは・・・。お前、名前は?・・・え、無いの?じゃあ、子供ゴブリンだから『コブン』ね」
「グェ?ゴギャガッゲギ!?」
「うるさいよ。・・・コブンと契約し、絆を結ぶモノなり、命尽きるまで互いを助ける。・・・ほれ」
アタイがゴブリンの方をみると頷きながら。
「ガギィ」
「双方の同意を持って成立とする。『契約』」
少し、クラッとした。
多少は魔力が回復してると思ったが、意外と契約って魔力を消費するんだな。
「よし、取り合えず、これでいい。いいか、もう勝手に逃げられないし、アタイを傷つける事もできないよ」
「ギグヅゲデジガギゴ」
『傷つけるなんてしないよ』
「あぁ、ホントに意味ある言葉を喋ってたんだね。でも、ゴブリンの鳴き声は耳障りだ。もう契約したから、近くに居れば頭で考えるだけで伝わる。だからしゃべるな、今少し頭痛がするんだ」
「グギィ?」
『えっ?』
ゴブリンは相変わらず、分かっていない感じで、小首を傾げている。
「また魔力を使ったからね。まぁ、面倒な話はいいよ。それよりゴブリン。あ、いや、コブン。アタイまだ動けそうにないから、なんか食い物くれ」
読んで頂きありがとうございます。
17年8月10日21時頃、修正しました。
最初、レティシアさんの性格がぶれまくっていたので、かなり大きく修正しております