コブンになりました。
自分には毎日更新とか無理です。
よろしくお願いします。
僕は、やっと解放された首を、思わずさすってしまう。
よかった、痛いところは無い。
・・・一見怖いけど、いい人なのかも知れない。
僕はボロボロな袋の中から、あるだけの木の実を出した。
リンゴや青い木の実が、コロコロと草の上を転がり、人間の前に行く。
「・・・これは、小リンゴか?・・・それに野良グレープまで・・・森の深部、しかも黒の森にのみ自生してる木の実をどうやって?」
人間はリンゴよりブドウの方が好きみたいだ。
「ゾグガ・・・・・・」
『そうなの?森の中のキラキラ探せば採れる』
「キラキラ?なんのことだ?」
キラキラじゃなくて他の呼び方があるのかな?
僕は出来るだけ、身振り手振りも交えて説明してみる。
『森のいろんな場所、たまにキラキラしてる。この実、その低い木から採れる』
うーん、いまいち伝わってない感じだ。
「それはこの辺りにもあるのか?」
いわれて僕は辺りを見回す。
そう言えば、いつの間にか小鳥たちの鳴き声も聞こえる様になっている。
危険が無くなったって事なんだろうか?
『あの奥の木と、その奥の茂みも』
僕は草藪の向こうの木と、日陰で薄暗くなっている茂みを指さすが、人間は首をかしげている。
「・・・何かあるようにはみえないけど?」
『見えない?じゃあ採ってくる』
「待て。一応言っておくけど、逃げようとしても無駄だからな」
そう言った人間の手は少し震えている。
もしかしたら、この人も一人で心細いのかもしれない。
僕には見えるけど、人間には薄暗くて見通しの悪い、不気味な森なのかも。
『大丈夫、行ってくる。木の実、食べて良いけど1個ずつ残しておいて』
「こんなの渋くて、生でなんて食べられないよ」
たしかに、青い木の実の種は美味しくないけどね。
『種をペッすれば美味しいよ?』
僕はキラキラへ向かって駆け出した。
するとしばらく行った所で声がした。
『うぉ!確かに甘い・・・なんだこれ?』
突然の頭の中に響くような声に驚いた。
でも、頭の中に響いた声も、驚いていた。
うーん、今のさっきの人間の声だよね?
戻った方がいいのかな?
振り返ってみたが、もう姿見えないほど離れている。
もっとも、草の背が高すぎて、離れて無くても草藪に入った時点で、僕には見えないんだけど。
こんなに離れてても、すぐ隣に居るみたいに聞こえるんだな。
そう思っていると、近くで草の揺れる音がした。
なんだろうと思って、音のした方に顔を向ける。
僕の背より大きな鳥が、ジッとこちらを見下ろしていた。
僕は一気に体が冷たくなるのを感じた。
辺りは草が茂っていて、全身を見ることは出来ないけど、その鋭い目つきと、ギザギザの嘴は、肉を食べるのが好きだと言っているみたいだ。
それになにより、僕の体の反応が危険な鳥だと言ってる気がする。
『にっ人間さん、危なそうな鳥に会っちゃった』
『・・・・・』
・・・返事は帰ってこ来なかった。
あれ?向こうの声は聞こえたのにな。
『・・にんげ』
もう一度言い終わる前に、鳥の目つきがいっそう鋭くなり、こちらに向かって走り出す。
僕は慌てて背中を向け人間の方へ走る。
「クケーッ!」
鳥が一声鳴いて追いかけてくる。
まるで、僕に逃げるなって言っているみたいだけど、そりゃ無理な相談だ。
でも、僕より全然速い。
振り返ってる余裕なんて無いけど、草を掻き分けてる音で分かる。
僕がガサッガサッガサッなら、後から聞こえる音はガザザザザッて感じだ。
次の瞬間、鳥の足音が消えた!?
僕は咄嗟に横っ跳びする。
するとさっきまで僕が居たところに、鳥がザザッと飛び降りてくる。
そして、僕の横の地面に、鉤爪がグサッと刺さる。
「ケーッ!」
僕は慌てて起き上がり、草むらに飛び込む様にして、また走り出す。
前のめりに走ったのが良かったのか、鳥は少し僕を見失ったようだ。
でも、すぐにまた見つかってしまう。
後ろからザザザッて音が迫ってくる。
僕はわざと低木の間を縫って走り、何とか人間の所にたどり着く。
『とっとりにおそ・・・』
「ゴォゴギグォゾ・・・」
最後まで言い終わる前に、人間の手前で転んでしまう。
「うるさいよ、我が前の敵を屠れ『疾風』」
頭上を風が吹き抜けたかと思うと、転んでうつ伏せになっている真横に、鳥が落ちてきた。
短い翼をバタバタ暴れさせて僕を叩く。
僕は慌てて這いずり、鳥から離れる。
追ってこないので、振り返って見ると、鳥は首と胴体が別れていた。
僕が息を整えている間に、胴体も動かなくなる。
なんとなく手を合わせた。
「はぁはぁ、食材を連れてくるなんて、やるじゃないか」
人間は笑っているけど、体がさっきより震えている。
僕が鳥を連れてきちゃったので、怖かったのかもしれない。
ガサガサッて音が迫ってきたら怖いよね。
それに、頭もまだ痛いのか、眉間にしわを寄せて、汗もかいてて辛そうだ。
それなのに、僕を励まそうと笑ってくれているんだ、きっと。
「でも、アタイと契約したんだから、お前ならこの程度の鳥、簡単に倒せるはずだけどね」
戦うとか、考えもしなかった。
だって鳥、すごく怖そうな顔してたし。
『僕、戦い方、知らない』
「はぁ、まぁいいけどね。食べ物つれて来たんだから、それよりお前、この鳥でなんか作れるか?」
『まって、みてみる』
鳥を調べてみると、なんとなくやり方がわかった。
錆びたボロボロナイフを取り出す。
「まさか、そんな汚いナイフ使うつもりか?こっちを使いな」
そう言って綺麗なナイフを貸してくれた。
僕はまず最初に、プチプチプチプチッて、ひたすら手を動かす。
「そんなもん集めてどうするのさ?」
『何かに使えそうな気がするから』
ボロボロの袋は鳥の羽でパンパンになった。
近くのくぼみに、お腹の部分を捨てて、土をかける。
残念だけど、綺麗な水が無いと、お腹は危ない気がしたからだ。
「大したもんだ、ずいぶん手際が良いじゃないか?」
僕の作業を眺めながら人間が言ってきた。
『なんとなく、やり方わかる。・・・この鳥なんて言うかわかる?』
「ん?これは土鳥だ。森土鳥とも言ったかな?これは少し小さめだけどね」
土鳥のお肉を、色んな角度からジッと見つめて、調べる。
(森土鳥の肉、森に生息する鳥の肉、森の青草と合わせると『土鳥の香草焼き』が出来る)
なんとなく、そんな事がわかった、気がした。
『・・・あおくさ?』
草って食べられるのか。
それは、考えなかったな。
「どうした?」
『青い食べられる草って知ってる?』
「香草の事か?お前のすぐ後ろに生えてるのがそうさ」
僕は後ろを見てみる、色んな草が生えている。
キラキラはしてないけど、なんとなく食べられそうな草がわかった。
その中で、青緑の草を摘んでみる。
さわやかな臭いが周囲に広がる。
舐めてみると、少し苦みがあった。
お肉と草を両手に持って集中する、出来上がりを思い浮かべて念じる。
『若土鳥の香草姿焼き』を手に入れた。
僕の手の上でお肉と草がパッと光った。
「なっ?!いきなり?」
人間が驚いた様な声を出した気がした。
光が消えると、大きな木の皿の上に葉っぱに包まれた料理が出来上がってた。
僕の両手には収まりきらない大きさだからか、木のお皿は地面に置いてある。
でも、お皿の下に大きな葉っぱが敷いてあったのが、なぜか少し嬉しかった。
お皿の上の包まれた、葉っぱを広げていくと、中から鶏肉が姿を現す。
皮はこんがりあめ色で、ホカホカと湯気が出ていて、美味しそうだ。
葉っぱを全て開くと、お肉は半分しか使ってないのに、1羽分の鳥肉が焼きあがっていた。
それに、鶏肉の内側には、使った覚えのない、野菜が入っている。
コロッとしたホクホクの丸いイモ、赤くて甘みのある何かの根、柔らかく甘みのあるたまねぎ?
「やっぱり、合成の異能だ。まさか道具を一切使わずに、素材の補完までなん・・・」
人間が何か難しい事をブツブツ言っている。
聞いていても意味がわからないので、僕はナイフで食べやすい大きさに切り分ける事に集中する。
全て分けてから、お肉を少し葉っぱの上に取る。
残りは皿ごと人間にあげる、ついでにナイフも油を葉っぱで拭って返す。
『人間さん、食べる』
「・・・ん?こんなに?」
『これ人間さんの獲物。僕は捌いた分け前もらった。残りは人間さんの』
僕は葉っぱに切り分けた自分の分を見せる。
ちょっと取り過ぎただろうか、考えてみれば、僕は逃げただけで何もしていない。
「・・・人間さんって何?」
人間は少し腕を組んで考えた後に、そう聞いてきた。
『人間さんは人だから人間さん』
「ん?ヒュムの事か?ってそこじゃ無い。種族名じゃなく、名前で呼ぶように」
『・・・なまえ?知らない』
あれ?なまえってなんだっけ?
「ん?名乗ってなかったか?アタイの名はレティシア。レティでいいよ、今後もよろしくね」
そう言われて、思い出した。
『わかった。レティ、さん、よろしく・・・おねがいします。それより速く食べる、冷めるよ』
なんとなく、少し恥ずかしくなって、そう言ってごまかした。
「レティね。お互い名前がわかったし、改めてアタイ達は相棒だ。だから一緒に食べるよ。コブンも成長期だ、もっといけるだろ?」
レティは皿の前に座って、その横に座れって手招きした。
そして、ほらって僕の葉っぱの上に、美味しい部分のお肉をくれた。
僕はレティの手が震えて大変そうなので、木の匙で彼女の口元へ持っていく。
「ありがとな。ってうっま!皮のパリッとした食感の後に押し寄せる、ジュワッとした肉汁の波!それでいて鳥の臭みを感じさせず、コショウのようなキレのある刺激を与える香草の香り!しかも肉汁を吸った野菜の甘味が、全体の調和を生み出している!シンプルな味付けながら、その旨味をお互いに引き出し合い相乗効果を与え合う!それはまさ・・・・・・・」
最初の一口を食べたら、レティがまた難しい事を言い出した。
しかも、全然何を言っているのかわからない。
手の震えも止まったみたいで、すごい勢いで食べている。
僕も食べてみる、確かに美味しい。
レティは食べることがホントに好きみたいで、その嬉しそうな顔を見てたら、僕の胸が少し温かくなった。
・・・気がした。
読んでいただきありがとうございます。
17年8月11日23時ごろ修正しました。
大筋の流れに変更はありませんが、描写を少し増やしています。
よろしくお願いします。




