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また街の門へ向かいます。

 ゴブリンの子供が泊まった日の夕方ごろ、ギルドにあいつが来た。


 いつの間にか隣村まで行き、他の冒険者達と合流していたらしい。

 ・・・じゃあ、あの子の主人に対して誤解していたのかもしれない。


 彼らへの依頼内容は、村の近くに魔物が現れたので調査してくれとのことだった。

 結果は無事調査を完了し、更にオークを3体も追い払ったようだ。

 討伐できたわけでは無いので証明部位は無いが、村長からの達成証と感謝状も提示された。


 オークはゴブリンとは比較にならない危険な魔物だ。

 その体格は成人したヒュムの男性より二回りはお大きく、力も強い。あまり足は速くないと言われているが、これには個人差があるらしい。そして恐ろしくスタミナがある。

 ヒュムの5倍は動き続けるらしい。

 余談だが子供を盾にするとおとなしくなると報告されたこともある・・・。

 

 以上を踏まえて、彼らの報酬は追加報酬が発生し3倍近くになる。

 おーおー、皆喜んでいる。

 にしても、リーダーとあいつ以外全員が女でよくもめないわね?

 でもなぜか僧侶の女性が、一人だけ浮かない顔だ。

 少し、話した方がいいかもしれない。

 ああいう顔をした、若い冒険者はやめてしまう事が多いのだ。


 のらぼう菜の味噌汁を食べ終えた後にレティがそろそろ街に行くと言い出した。

 ラムしゃぶを食べてから数日が経っている。

 理由はラティキエが来て、レティの作ったポーションをまとめて買っていったからだ。

 その時、お土産に魚と干し肉を置いて行ったので、しばらく食材に事欠かなかった。


 僕はレティにお願いして歩いて門まで向かう。


 今日の朝はキラキラがいつもより少なかったので、途中で採りたいからだ。

 レティにそう伝えると。


 「え?ヤだよ」


 そう言ってじりじり近づいてくる。


 『もっもしかしたら!今まで採れなかった食材が採れるかも?』


 「・・・それだけ?」


 『・・・もし採れて、食べ物に出来たら、保存しないで食べる』


 「しょうがないなぁ、今回だけだよ」


 レティは頭の後に手を組んで歩き出した。

 僕の最近の趣味は保存食作りだ。

 家の軒下や、地下室に毎日食材が増えて行っている。

 吊して干した野菜や乾燥させた果物なんかだ。

 でもレティとしては、新鮮なものをその時に食べたいみたいだ。


 スタスタ歩いてくレティを追いかけながら坂道を下ると、小さい馬車ならすれ違えるぐらいの広い道に出た。

 後を振り返ると木々に覆われて、今来た道が無くなっていた。


 「いくよ、コブン」


 足の速いレティはもうだいぶ先にいた。

 広い道に出るとキラキラはほとんど無くなってしまったけど、珍しい物も少し採れた。



 『・・ねぇレティ?けっこう歩いたね』


 「・・・そうだね。あの道曲がったら門みえてくるんじゃない?」


 『そっか、なんかさっきもそんな事いってなかったっけ?』


 「そうだっけ?まぁもうすぐじゃ・・・聞こえた?」


 僕は耳を澄ます。

 かすかに何かが吠える様な音と、叫ぶような音が聞こえた。 


 『聞こえた・・・行くの?』


 「うーん、コブンはどうしたい?」


 『行って、みたい』


 「わかった、じゃあ行ってみよう」


 道から外れて音のした方へ進む。

 音は次第に大きくなる。

 レティが、途中で自分の腕輪を指して僕に認識阻害の腕輪をしてって身振りで示す。


 そこは木々の少し開けた場所で、ゴブリンと人が争っていた。

 3人のゴブリンに対して人は7人。

 でもゴブリンは僕と見た目が全然違う。

 僕は緑色の肌だけど、そのゴブリン達は薄黒い色合いで灰色に近い肌だ。体格も僕より全然大きくしっかりしている。

 しかも魔狼ワーグに跨がり、武器と防具で武装している。

 こんなゴブリンは見たことが無かった。

 彼らは油断無く人を取り囲み、威圧しながら武装を解除しろと訴えている。


 『レティ?彼らは?』


 『うん?たぶん冒険者とエルフだな』


 『あ、ごめん。ゴブリン達のこと』


 『あぁ、そうか。黒の森の方に住むゴブリンだ。本来はこんな所に居ないんだけどな』


 『人はあんなにビクついてるのに、何で武器を捨てないの?命は取らないって言ってるのに?』


 『そうなのか?ゴブリン語は難しいな。アタイには叫んで脅してるようにしか聞こえない』


 僕は腕輪に触れようとして、レティに止められる。


 『・・・どうする気コブン?人とゴブリンの争いなんて、関わると良い結末にはならないよ?いいの?』


 『・・・それでも、せめて通訳だけでも・・だめかな?』


 レティは笑って、コブンが決めたなら付き合うよって言ってくれた。

 僕は腕輪を外してゴブリンに呼びかける


 「ガゲガキガ、ヅグジダガギガ、ガレヅグジズグ」


 「ダガガ!?」


 僕はフードを外し両手を上げて、前に出る。


 この後の彼らとの話を翻訳すると。


 「子供のゴブリンが、何故ここに居る!?」


 「僕の巣は滅ぼされました。今は人と暮らしています」


 「裏切り者か!?」


 「僕は誰も裏切ってません。人と歩むと決めただけです」


 「なんだと!?」


 「兄弟、落ち着け。相手は子供だ。子供!通訳すると言ったな?このエルフ達を武装解除させることは出来るか?」


 横から冷静なゴブリンが助け船をだしてくれた。

 そのゴブリンは3人の中で1番大きく自分の身長ぐらいある剣を持っている

 ちなみに彼らの目は最初に僕をチラッと見ただけでその後は7人の方を向いている。


 「わかりません、僕も人の言葉は苦手です。でも相棒を呼んで良いなら話すことは出来ます」


 3人のゴブリンが、一瞬視線で会話した気がした。

 その後、下のワーグを撫でて。


 「いいだろう。ただし相棒に変な動きをさせるな」


 僕の横に立つようにレティが出て来る。両手を頭の後ろで組んでいる。

 鼻歌歌いそうな気軽い感じだ。

 でも、灰色ゴブリン達は違った。

 一瞬レティを見た後、一人はレティから視線を外さない。

 さらにワーグを上手く誘導して僕とレティに近いて止まる。たぶんそこが僕たちを攻撃しやすい位置なんだとわかった。


 「エルフと冒険者、アタイは調停者だ。ゴブリンを使役しているため彼らの言葉がわかる。彼らは武装解除をすれば命は取らないと言っている」


 「なんだと!?そんな話が信用できるか!」


 冒険者の中で先頭で剣を構えている男の人が叫ぶ。


 「待ってください!あなたはレティキエさんですよね?先日ペコラ村でご一緒しました。僧侶のラポラです」


 彼の脇から1人の女の人が顔を出す。


 「ん?誰だ?」


 「オークの件でお世話になったラポラです!」


 「んー、あぁ!でもなんだレティキエって?」


 「・・ごめんなさい。どうしても気になって!ゴブリンが相棒の冒険者って少し調べたんです」


 『前にチコリとラティキエが言ってたよ。街中でもめた時、姉妹だから僕の安全を保証してくれるって』


 「ふーん?なんか気回したのか?じゃあギルドではアタイはレティキエなんだ?」


 『うん、多分そう』


 「そっか、それでこれはどういう状況?」


 「実は・・・」


 「待て!ラポラ!簡単に妖魔に加担するような者を信じちゃだめだ!」


 さっきの剣を構えている人が遮る。


 「まぁ、話したくないならいいや、で?戦う?戦わない?一応助言すると、あなた達が勝てる相手ではないよ。きっと」


 「クッ・・・それは」


 「調停しようと思ったが、そちらが協力しないのであれば無理な話。コブン彼らは死んでも戦うようだ」


 僕は冒険者達の方を見る、半分の人は戦う意思は感じなかった。


 「ワガッタ」


 「・・・まってくれ!武器を置く、だから彼らを下がらせてくれ。抵抗はしない」


 後に居た杖を持っている人が両手をあげて声を掛けてきた。

 「な!?・・・」とか「あれには・・・」とか揉めていたけど、皆が武器を置いた。


 灰色のゴブリン達はワーグを下がらせ、少し距離を取る。そして冷静な人だけが降りて、武器をワーグのくらにつけたさやに収めて一人で近づいてくる。


 レティと僕で彼らの通訳をする事になった。

 

 『ヒュムとエルフは我々を突然攻撃してきた。よって、本来ならば滅ぼす所だ。しかし我らは今、最優先にすべき使命がある。森の静観者を自称するエルフならば森の異変について何か知っているか?もし知っているならば話せ。それを対価としてお前達の行いは水に流し命は助ける』


 灰色の人の言葉をレティに伝えてレティは冒険者達に伝えた。

 間違えないように気をつける。


 「それは!当然の事だろ!目の前に妖魔がいたんだ討伐するのは!」


 冒険者の剣を持っていた人が憤っている。


 「何の目的で森に入ったのか知らないが、そちらを優先すべきだったな。彼らの討伐が目的では無いんだろ?だいたい何故こんな無理な戦いを仕掛けた?」


 「最初は一騎しかいなかった!」


 「・・・援軍や逃げられたときのことを考えなかったのか?まぁいい。それで?エルフは沈黙を守るのか?」


 二人のエルフはビクッと肩を震わせた。


 「・・・わたしから、そんな穢れた生き物へ話すことなど無いわ」


 小さいエルフがツンっとしてそっぽを向く、もう一人のエルフが「・・お嬢様」とか言っている。


 「まぁ。それでいいなら良いけどね」


 「まって!でも同盟者であるヒュムになら、特別に!」


 「いや、アタイは知りたくないし、どうでもいいや」


 「あ!ダメなんです!レティキエさんははっきり言わないと察してくれたりとかしない人なんです」


 慌てて話に割り込んで来たのはラポラと言った人だ。


 「なんだよ、そのアタイが空気読めないみたいな言い方」


 「あ!違うんですぅ。エルフさん今話さないと、皆ころされちゃうんですよ?」


 エルフの二人が顔を見合わせた後、大きい人が「わたくしが・・」とか「ダメよ!・・」とか言い合っている。


 「・・・違うんだから!わたしはゴブリンなんかじゃ無く!皆のために話すんだから・・・」


 小さいエルフは泣きながら話した、それを大きいエルフが「お嬢様ご立派です」とか言ってる。

 ちょっとエルフって謎生物だ。


 彼女の話では森の異変とは、森の中に何体か存在する超越種 (ターラやアゴダシみたいの)のどれかが暴れているせいで、強い魔物達が住処を追われ森の奥から中層に移動してきて、中層の魔物はさらに浅い層に移動するという大移動が原因らしい。


 それを教えると灰色の人達はワーグに跨がり離れていった。

 最後に僕にお礼を言ってくれた。


 「やったな、コブン!丸く収めたじゃん?」


 「だが、あんた達の処遇は如何するかな?」


 冒険者の人が剣を持ち直して僕たちに向ける。


 「あれ?アタイ達はあんたらの恩人だよね?」


 「そんな訳あるか!?お前達はゴブリンを使ってエルフ達の秘密を暴いたんだ!」


 「じゃあ、聞くが?あのゴブリン達相手にあんた達で対処できたのか?無理だったろ?勝てやしなかった」


 「そんな事はやってみなくてはわからなかった!」


 「じゃあどうする?ここでアタイ達を殺すのか?」


 「あっあの!わたしは彼女達のお陰で助かっ・・・」


 「君はまだこのパーティーに入って日が浅い。口を挟まないでくれ」


 ラポラが、止めようとするが杖の人が遮った。


 「お前達はエルフの国へ引き渡す!処遇についてはエルフ達が決める。それでいいですね?」


 泣き止んだエルフに確認を取るとうなずいた。


 『レティごめん。大丈夫?』


 「あぁ、逃げて犯罪者にされてもつまらないしな。付き合うさ」


 「罪ある者を拘束しその自由を奪え!ハンドカーフス!!」


 僕の両手首に緑色の光が現れ拘束する。


 「逃げられるなんて思わないことです!」


 「こりゃ凄い、魔術師の魔法か?でもアタイはいいのかい?」


 「あれ?そんな!ボクは二人をたい・・・」


 「そんな奴らに魔法なんか使わなくても縄で縛っておけば良い!」


 そう言って剣の人がレティの両手首を縄で縛る。


 「こりゃ、逃げられそうも無いね」


 「当然だ!お前達は真ん中だ。無駄な抵抗はせずついてこい」


 そうして、僕らは彼らとの一緒に森の中へ入っていくことになった。

あぁ、灰色ゴブリンをもっと活躍させたかった。

読んで頂きありがとうございます。

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