第10話 異世界パパ活作戦継続中!
「六十八、六十九……ちょうど七十枚か」
積み上げた金貨をざーっと袋に戻してしっかり口を閉める。
これだけで一財産だ。しばらくは遊んで暮らせるほどだが、まだまだ私の目標には足りない。
「この短期間でよくそれだけ稼いだな。ほら、飯」
「ありがとう。いただくわ」
「たまには自分で作ってみたりしない?」
「私が食事を作れるように見える?」
「見えない……」
嘆息するクラウに微笑んで、スープとパンの食事をありがたくいただく。
「まだ続けるのかい、パパ活」
「そのつもり。でも昨日もらったドレス、明らかに安物の既製品だったのよね。
その前にくれたネックレスはいい値段で売れたのに……。安い女だと思われたのかしら」
「よそにもっと気になる子が出来たとか」
「それならそもそも私と会わなくなるでしょ。今日も約束してるから様子を見てくるわ」
パパ活作戦は今のところ順調に推移中。ガラブも私と会うのを楽しみにしていて、高価なプレゼントを大量にくれる。
ま、何をもらったってすぐ換金しちゃうんだけど。
「今日も帰りが遅くなるのかい」
「え? いつも通りだけど」
「夜遅くに一人で帰ってくるのは止めたらどうだ。夜の森は危ないぞ」
「だったら迎えに来てくれる?」
「そんなに暇じゃないよ」
「じゃあ一人で帰ってくるしかないじゃない……」
最近、クラウはちょっと変。急に不機嫌そうな顔をしたり、私の予定を聞いてきたり。
「何がそんなに気に入らないの? 夜遅くに私が帰ってくるから迷惑してる?」「そういうことじゃない」
「ちゃんと説明してくれないとわからないわ」
「……別にいい。悪かったね」
クラウは椅子から立ち上がり、食器を置くとふらっと小屋から出て行ってしまう。
「……もう。なんなの」
何を聞いても全然話してくれない。
どうして森の中に一人で住んでいるのか。普段何をしているのか。一体何者なのか。聞きたいことは山ほどあるのに、秘密にしてばっかり。
「ちょっとぐらい教えてくれたっていいじゃない」
毎日作ってくれる料理は美味しいのに。馬鹿。
「お会い出来て嬉しいですわ、ガラブ伯爵」
「やあ、今日も美しいな。そんなイデア嬢にふさわしい可憐な花を持ってきたぞ、受け取ってくれたまえ」
差し出してきたのはそこらで摘んできたと思われる花が数輪。はぁ? よくこんなもの持ってきたわね。
「まあ、可愛い花。ありがとうございます」
ガラブ伯爵の衣装からも装飾品がいくらか減っている。うーん、急激に搾りすぎたのかも。
お金がないならパパ活相手としては限界だ。そろそろ新しいターゲットを探さなきゃ。
「おや、ガラブ伯爵じゃないか」
不意に横から声がかかる。近付いてきたのは軍人風の男性だ。しかもかなり裕福そう。
「ガーンズ公爵! こんなところへお出でになるとは珍しい」
ガラブ伯爵はさっと席を立って挨拶をする。
(ガーンズ公爵……聞いたことがあるわね……?)
確か爵位持ちでありながら、軍の指揮官も務める人物だっけ。ガースバルト帝国の中でも重要な地位にあったはず。
こっそりと眺めていたら、思い切り目が合ってしまった。
落ち着いて優雅に微笑むと、相手も笑みを返してくれる。む、なかなかいい感じ。少なくともガラブより知性を感じる。
「こちらの美しい方は?」
「はじめまして。イデアと申します」
「ガーンズだ。……ガラブ伯爵が最近入れ込んでいると評判のお嬢さんだな。いやはや、思った以上に美しい」
「まあ。私より美しい方なんて大勢おりますわ」
わかる。手に取るようにわかるわ。ガーンズ公爵は私に興味を持っている!
(次の獲物、見つけちゃったかも)
今度は金品を毟り取るだけで終わらせない。
上手く手玉に取って転がして――ゆくゆくは軍部に食い込んでいかないとね。




