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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』
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600:4thナイトメア4thデイ・タルウィテラー・3-2

本日は五話更新になります。こちらは一話目です。

「くっ……ザリチュ無しは流石に想定外ね……」

 落下すること十数秒。

 私は『毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』習得時に訪れた、直径500メートル近い石造りの円形闘技場に立っていた。

 なお、円形闘技場の外は相変わらず虹色の霧に包まれており、何も見えない。


「まあ、『化身(ザリチュアバタ)』のコストは回復されているから、問題になるのはザリチュの能力分、防御面が弱くなっていることくらいか」

 HP、満腹度は最大値含めて全回復している。

 干渉力も問題なし。

 ザリチュの能力分だけ弱体化していると言っても、これから戦う相手の能力として想定されるものを考えると、渇砂操作術が使えないのは想定の範囲内だし、実質的な問題としては防御力と乾燥耐性が下がるくらいか。


「くくく、よく来たな。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル」

 闘技場の貴賓席と思しき場所から『悪創の偽神呪』の声が聞こえてくる。

 ただし、その姿は一番見ているトカゲ型ではなく、虎柄の蘇芳色の服を身に纏い、藁色の髪をポニーテール状にまとめ、金色の瞳を持った女性の姿だ。


「さて、私の事を知っているものも多いだろうが、念のために自己紹介をさせてもらうとしよう。私の名前は『悪創の偽神呪』。偽りの神を名乗ることが出来る程度には実力を有するカースであり、これから『虹霓竜瞳の不老不死呪』タルが受ける試練の監督を務めさせてもらう」

 ああなるほど。

 『石化の邪眼・2(タルウィペトロ)』や『淀縛の邪眼・2(タルウィボンド)』の試練と同様に、今回の試練も中継されているのか。

 だから、自己紹介から一応始めると。


「ちなみに、今回の試練の内容はイベント非参加のプレイヤーだけでなく、参加中のプレイヤーもリアルタイムで閲覧可能だ。そして、その都合上、時間の流れもイベントの空間と等倍になっている。と言う訳で、普段のように何時間もかけてはいられない事を貴様は覚えておくように」

「……」

 うわ、地味に面倒な事を……倒すのに時間をかけすぎると、五日目に響くと言う事か。


「では、そろそろ試練を始めるとしよう。内容は前回と同じ。今から私が生み出す呪いに打ち勝て。ただそれだけだ」

 『悪創の偽神呪』が指を鳴らす。

 すると、前回と同様に大量の呪詛が集まっていき、何かしらの生物が形作られていく。


「ザリチュが居ない件については?」

「くくく、常に決まった相方が居ると言うのもつまらないだろう? ああそうそう、試練開始までは呪術のチャージは出来ないからな」

「分かっているわよ。そんな事」

 呪術のチャージは出来ないが、戦闘の準備は出来る。

 と言う訳で、私は上下水平あらゆる方向に飛べるように態勢を整えつつ、ネツミテを錫杖形態に変化させて、両手で握る。

 同時に、他に武器になりそうな物……鼠毒の竜呪の歯短剣の位置を確認したり、毛皮袋の中に入っている幾つかの使い捨てアイテムの状態も確認。

 最後に原始呪術と『鑑定のルーペ』が使えるかを確認するが……前者は発動せず、後者は既に消えている、この辺は前回と同じか。


「さて、貴様がどのような戦いを私に見せてくれるか、楽しみにさせてもらうぞ」

 『悪創の偽神呪』が集めた呪詛の霧の中から、渦を巻いた乳白色の角が二本出てきた。

 ただ、羊の角とも、アンモナイトの殻とも取れる角の形状と密度から、攻撃に用いるよりも防御に用いた方が良さそうな形だ。


「そう。じゃあ、ご期待に沿えるように頑張らせてもらう……」

 次に出てきたのは、ほぼ黒の、しかしよく見れば紫色が混ざっているように見える羊毛に覆われた毛皮。

 そして、毛皮が現れてからは毛皮が呪詛の霧から現れ続けて……。


「わ?」

 呪詛の霧が晴れた後には、直径5メートルほどのモコモコな毛に表面が覆われた球体が残った。

 一対の角が羊のそれに似ている事もあって、巨大な羊の頭だけが転がっているようにも見えるが、目や鼻、口などは一切見えない。

 『悪創の偽神呪』が試験として生み出し、得ようとしているのが『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』の強化系である以上、弱い事はあり得ないと思うのだが、現状の見た目からでは正体も強さもまるで掴めない。

 これはどうすればいいのだろうか?


「では、試練開始だ」

「これは……」

 そう私が思っていた時だった。

 『悪創の偽神呪』が試練開始を告げると同時に、紫がかった黒い毛皮の中から触手と称すのが一番近そうな、細長く、よく曲がる、直径数十センチの物体が八本出て来た。

 その八本の触手の先端が熟れた柘榴の実のように割れて、中に牙がびっしりと生え揃っている事と筒の奥に繋がる穴が見えた事で、私はその触手が触手と言うよりも、破接の幻惑蟲呪の頭と首に近い物であると認識した。

 それはまるで、巨大な羊の頭部から、八体の蛇が姿を現わし、鎌首をもたげたようにも見えた。


「「「メエエェェゲエエェェニャアアァァ!!」」」

「多頭竜!?」

 八本の触手から叫び声が放たれた。

 途端に私の全身が震え出し、HPバーなどのUIが消し飛ぶ。

 恐怖とUI消失状態の状態異常だ。

 そして、相手の正体を私は理解した。

 今回の試練の相手は、共通する胴体部分を羊毛と羊角で守った八本首の多頭竜である、と。

07/24誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[良い点] そういう多頭竜もあるのか。なるほど
[気になる点] >本日は五話更新になります。こちらは一話目です。 気付かなかった…… [一言] >「「「メエエェェゲエエェェニャアアァァ!!」」」 色々混ざってて何が何やらw あれおかしいな、テラー…
[気になる点] ≫ただしれだけだ (´・ω・`)?
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