601:4thナイトメア4thデイ・タルウィテラー・3-3
本日は五話更新になります。こちらは二話目になります。
「「「メメメゲ……」」」
「きょ、恐怖は推定スタック値100以上かかかか……」
UIが消し飛んだ以上、自分の正確な状態は分からない。
とりあえず手足が震え、喋る事もままならない事からして、恐怖のスタック値は100以上と仮定。
よって、CTのチャージが完全に止まるので、邪眼術は一切使用不可。
それでもスタック値の減少によって、ほんの少しずつ貯まる可能性を考慮して、『恐怖の邪眼・3』のチャージは開始していく。
「「「ゲゲゲニャアァァ……」」」
次に多頭竜の状態。
20メートルほど離れた場所で、多頭竜の八本首は大きく口を開き、首を動かす事で個々の位置を変化させつつも、口の中心は常に私の方へと向けている。
そして呪詛を口内に貯め込むような形でチャージしている。
ほぼ間違いなくブレス、それも『毒の邪眼・3』のドラゴンの尾に付いている歯を飛ばす攻撃と同様に、本来ならば事前に攻撃の軌道を知らせてくるタイプだ。
だが、肝心の軌道はUIの範疇に含まれるらしく、今の私の目には見えない。
「まずはああぁぁ……接近!」
私は多頭竜に向かって足と背中の翅を使って、真っ直ぐに駆け出す。
一歩、二歩、三歩と進み……
「「「メギャアアアァァァ!!」」」
「今っ!」
多頭竜の八本首に集まる呪詛の箍が外れたと認識したタイミングで進路変更。
斜め前に飛ぶ。
直後。
そのまま進んでいた場合、あるいは急停止をした場合に私が居たであろう場所を貫くように、多頭竜の八本首から黒いビーム……否、墨が水圧カッターのような速さで発射された。
墨は地面に着弾すると、直ぐにその場で広がっていく。
そして、黒い煙を立ち上げ、墨に触れている地面と空気が周囲の健常な地面と空気からの圧力に負けて、押し潰されていく。
十中八九、干渉力低下の状態異常、その重症版だ。
「ふんぬっ!」
「メゴォ?」
で、そんな光景を翅に付いている目で確認しつつも、私自身は多頭竜に接近、跳躍、空中で勢いよく回転し、全力でネツミテの打撃部を多頭竜の首の一本に叩きつける。
「はい! 効果なし! し、知ってた!」
が、ダメージらしいダメージは無し。
一応、僅かながらに毒と灼熱は入ったのではないかと思うが、相手のスペックを考えると、誤差の範疇に近いだろう。
「「「ベエエェェギャアアァァ!!」」」
「逃げっ!」
多頭竜からの反撃。
八本首が口を大きく広げ、私の体を食い千切ろうと勢いよく迫ってくる。
私はそれを13の目で軌道を読み取り、背中の翅で上下左右あらゆる方向に飛び、ネツミテを振るう反動で体を動かし、持てる力の全てを利用する事で、回避し、多頭竜の側面方向、角がある方に向かって逃げていく。
「飛ぶっ!」
「メンギャッ!」
そして、無事に側面まで逃げたところで、多頭竜から遠ざかるように跳躍。
直ぐに私が居たところへ角が叩きつけられるように多頭竜が体を動き、大質量が動く時特有の風が私に叩きつけられた。
で、多頭竜の動きが止まったタイミングで角と羊毛の部分に向かってネツミテを振るってみたが、手応えは首を攻撃した時以上にない。
見た目通りと言うべきなのか、どうやら耐衝撃に限れば、角と胴体の方が防御は堅いようだ。
「「「メエェェギャアァァ……」」」
多頭竜が八本の頭を巧みに使う事で、私の方へと向き直る。
「色々と試すしかないわね……『熱波の呪い』」
対する私は『熱波の呪い』を発動。
ネツミテが自己意思を持たないカースであるおかげで、恐怖の状態異常にかかることもなく、UI消失状態でも問題なくネツミテの呪術は使用可能なのが、ありがたい。
そして、ネツミテとドロシヒの持つ呪術的に、攻撃に用いれるのは『熱波の呪い』のみ。
ならば、攻略のカギを握るのは『熱波の呪い』である可能性は高いだろう。
「「「ベエエェェギャアアァァ!!」」」
「せいっ!」
多頭竜が噛みつき攻撃を再び仕掛けてくる。
私は『熱波の呪い』によって攻撃能力を持った呪詛を操り、生成した無数の呪詛の剣によって多頭竜の首に攻撃を仕掛ける。
が、効果は薄い。
どの首も『熱波の呪い』によって攻撃能力を持った呪詛の剣など気にする様子も見せずに、私への攻撃を続けてくる。
つまり、このままでは駄目、と。
「「「ベベベエエェェェギイイャアアアァァァ!!」」」
「恐怖の維持は……欠かさない……のね!」
リーチと遠距離攻撃能力の差を考えて、多頭竜から大きく離れないようにしつつ、時々咆哮を上げてもいる多頭竜の攻撃の回避を続行。
で、隙が出来たタイミングでネツミテの打撃部に呪詛を集めていく。
『熱波の呪い』の効果によってネツミテの打撃部はまるで火球のように輝いていく。
「ベギャアッ!」
「此処っ!」
そして、紙一重で避けられる攻撃を体を回転させながら避けると、その回転によって遠心力をネツミテの打撃部に乗せ、振るう。
「!?」
「手応えあり!」
ネツミテの打撃部が多頭竜の柔らかそうな首へ叩き込まれる。
返ってきた反応からして、先ほどの何もしていない攻撃の数倍のダメージは見込めそうだ。
「「「ベベエェェギャアアァァ!!」」」
「おっと!」
だが、追撃は出来ない。
既に他の七本の首が私への攻撃を仕掛け始めている。
なので私はネツミテを指輪形態に戻すと、全力で距離を取るように動いて逃げる。
「さて、こっちも試しましょうか」
十分に逃げたところで私は鼠毒の竜呪の歯短剣を一本抜いて、構えを取った。
「「「ベエエェェギニャアアァァ……」」」
「ベギョベゴベビョ……」
私が距離を取ったことで、多頭竜は七本の首で呪詛のチャージを始め、一本の首は口を小刻みに動かした後……
「ベゴッポ」
「うげっ」
上空に向かって墨の塊を何発も吐き出し始めた。
07/24誤字訂正




