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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』

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585:4thナイトメア3rdデイ・トランス-1

「いやー、酷い目にあったわぁ……」

「スパスパとプレイヤーの体が飛ばされたな……」

「対策があって、足止めしようとしたプレイヤーもあっという間だったものね」

「そもそも視覚異常のせいで逃げる事も叶わなかったプレイヤーも多かったでチュけどね」

 私たちはどうにか『愚帝の暗き庭』を脱出し、自分たちの生産用エリアに戻ってきた。

 いやー、本当に死ぬかと思った。

 一応、逃げつつ『気絶の邪眼・2(タルウィスタン)』での妨害も試みたのだが、相変わらずの割込の灌木呪のせいでそれも上手くいかなかったし、中々に際どかった。


「とりあえず報酬の確認ね」

「まあ、そうだな」

「せやな」

「でチュね」

 では、二種類の鑑定をするとしよう。



△△△△△

噛啜の蝗害呪の死体

レベル:30

耐久度:100/100

干渉力:125

浸食率:100/100

異形度:20


噛啜の蝗害呪を構築する蝗型カースの死体。

甘い汁を噛み啜り、己のものにしようとする。

だが、彼らの序列は明確であり、皇帝の命は絶対であり、どんな理不尽であっても受け入れなければいけない。

▽▽▽▽▽


△△△△△

欺瞞の蝗呪の死体

レベル:30

耐久度:100/100

干渉力:128

浸食率:100/100

異形度:20


欺瞞の蝗呪と言う名称のカースの死体。

黄金と宝石の輝きを持ったその身は、昆虫よりも宝飾品のように見える。

だが、その本質は見るものを惑わす力にある。

▽▽▽▽▽



「ふうん……」

 噛啜の蝗害呪の死体については、上手く使えばアレが出来そうだが、他に使い道はなさそうか。

 欺瞞の蝗呪の死体は……これを使えば、色々と偽装が出来るかもしれない。


「あ、欺瞞の蝗呪の死体については、ウチの呪詛薬に加えて欲しいわ。相性が良さそうに思えるから」

「俺の方も破盾の雷雲呪の素材を呪詛薬に加えてもらいたい」

「分かったわ」

 二人の求め通りに私は動く。

 欺瞞の蝗呪の死体は粉状にして、ゼンゼ向けの呪詛薬に投入する。

 破盾の雷雲呪の素材……帯電している氷のような物体も、マントデア向けの呪詛薬に投入する。

 朝から煮込み続けていたこともあって、二つの呪詛薬の中には既に固形物はない。


「あ、二人にお願いなんだけど、少量だけど血を貰ってもいいかしら?」

「血を?」

「血を渡すのはええけど、どうやればええんや?」

 では、完成に近づけて行こう。

 と言う訳で、まずは二人から血を貰うとしよう。

 これは今の彼らの心身を構築している情報を得て、呪詛薬を彼ら専用のものにし、呪いの精度と効果の調整をするためである。


「この壺の中に針があるから、私の『出血の邪眼・2(タルウィブリド)』を受けたら、手を突っ込んで」

「ああなるほど。これで俺らの血でも渡せると」

「呪い塗れになった血なら、風化の呪いも受けない。不老不死の呪いも血ぐらいなら逃れられる、と言う事やな」

「正解でチュ」

 私は二人に壺を渡す。

 そして二人に目一つ分の『出血の邪眼・2』を撃ち込み、血を回収。

 回収した血は直ぐに呪詛薬へ投入した。


「で、此処からどうするん?」

「んー、呪怨台に乗せて、最終調整、かしらね」

 これで必要な素材は全て投入した。

 マントデアの呪詛薬には、剛皮の巨人呪の皮膚、鼠毒の竜呪の肉、破盾の雷雲呪の素材の他、身体能力を高め、守りを堅くするのに使えそうな素材と、マントデアの血が入っている。

 ゼンゼの呪詛薬には、幻惑の狐呪の尻尾が複数本に、鼠毒の竜呪の尾、欺瞞の蝗呪の死体とゼンゼの血が入っている。

 後は呪怨台に乗せて、呪詛薬として完成させるだけである。


「じゃ、マントデアの方から仕上げましょうか」

「何か俺がやる事はあるか?」

「んー、呪怨台の前に座っておいて。で、出来るだけ、呪詛薬を飲んだ後の自分に対して明確なイメージを持ってくれると嬉しいわね」

「分かった」

 私はマントデアの呪詛薬を手に持つと呪怨台に運ぼうとする。


「む……」

「どうした?」

「いえ、何でもないわ」

 うん、熱かった。

 ずっと熱していたからか、容器も熱くなっていて、僅かにだが手が焼けた。

 まあ、気を抜いていなければ問題はないか。

 と言う訳で、呪怨台に乗せる。

 ただし、私の呪怨台ではなく、マントデアの呪怨台にだ。


「では、始めましょうか」

「おう」

 容器が乗せられた呪怨台へと呪詛の霧が集まってくる。

 私はそれに干渉すると、『七つの大呪』全てを活性化すると同時に、どう作用するかを選択していく。

 同時に呪詛の霧の一部をマントデアの近くに伸ばして、マントデアが干渉しやすいようにしていく。


xif(ィフ)pots(ポッツ)dloh(ドロフ)peek(ペーク)tnatsnoc(トナツノク)ytinrete(イチンレテ)nwonk(ンヲンク)

 呪詛薬の中に含まれている複数種類のカースの素材。

 それらの中から目的とする呪いだけを取り出し、他の呪いを廃棄し、今のマントデアに合わせて構築していき、安定化をさせる。

 最終的に目指すのは新たなマントデア。

 マントデア自身もまだ見た事がない未知のマントデア。

 ああ、実に楽しみだ。

 私自身の為ではなく、私以外の為に呪詛薬を作ると言う初めての行為。

 未知に溢れていて、思わず力が入りそうになる。

 だが、力を入れすぎてはいけない。

 飲むのは私ではなくマントデアであり、求められるのは未知に興じる事ではなく、確実な成果なのだから。


「さあ、我が友、マントデアの魂に相応しき新たな呪いを授ける結晶よ。我が熱を以って、我らの前に来たれ!」

「出来たでチュね」

「これが……俺の為の……」

「へぇ。こうなるんやな……」

 やがて呪詛の霧は呪怨台の中心へと飲み込まれて行き……霧の中から現れたのは、白く細い枝に付けられた、電光を纏うカマキリの卵のような物体だった。

07/09誤字訂正

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― 新着の感想 ―
しれっと自然な形でゼンゼが七つの大呪の存在を知っている発言がちゃんと出てくるのすごく好きです。
548:4thナイトメア1stデイ-1で、マントデアの生産設備はないと書かれているのに、呪怨台があるなんて??? 呪怨台は必須なのでわざわざ書くまでもない、ということでしょうか。
[一言] >回収した血は直ぐに呪詛薬へ投入した。 「あれ?逆だったっけ?」 「「!!?」」
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