584:4thナイトメア3rdデイ・フローダー-6
「お疲れさまー」
「お疲れー」
「いやぁ、疲れたな……」
私とゼンゼの救護活動が行われているが、それは私たち個人の話であるため、他のプレイヤーたちは欺瞞の蝗呪の討伐を労い合っている。
で、内容としてはだ。
「しかし、竜の外見は偽りかもなと思っていたが、蝗とはなぁ」
「まあ、周辺の国や街を食い荒らしている『ユーマバッグ帝国』らしいカースと言えばらしいけどな」
「それな。頭が偽装工作大得意なのも含めて、本当に納得ばかりだ」
だいたいは欺瞞の蝗呪についてだ。
と言っても、話の方向性についてはフレーバー面だけではない。
「なあ、再討伐の場所とかって出現したのか?」
「どうだろうな? 一回限りってのはイベントであっても無いとは思うが……」
「とりあえずこの辺りにはそれっぽい場所はないな」
欺瞞の蝗呪の素材が大量に欲しいらしく、再討伐が出来ないか考えるプレイヤーが居る。
「しかし、第一段階の解除条件が結局分からなかったな。誰が何をやったのが原因なんだ?」
「破盾の雷雲呪と困惑の鳥呪の討伐に意味があったのは確かだと思います。でもそれ以上は分かりませんね」
「第二段階も困りものだよな。多段範囲の置き攻撃とか、持ち合わせているプレイヤーがどれだけ居るんだか……」
「第三段階は楽だったよな。なお第四」
「全力逃走はらしいと言えばらしいけど、それ以上にウザいよなぁ」
欺瞞の蝗呪との戦闘について考察しているプレイヤーも居る。
「えーと、手に入った素材は……くそ、噛啜の蝗害呪の死体ばかりだ」
「俺もだなー」
「おっ、欺瞞の蝗呪の素材あった。死体が一つだ」
「ん? そっちにも欺瞞の蝗呪の死体があるのか? こっちにもあるぞ」
「ほー、一匹一匹が小さいから、死体が複数出ている、と言うところか」
手に入った素材について確認し合っているプレイヤーも居るようだ。
なお、私は噛啜の蝗害呪の死体が三つに、欺瞞の蝗呪の死体が二つだった。
一匹一匹が小さいので、翅のような特徴的な部位はともかく、そうでない部分はまとめて磨り潰して粉にし、それから使用する事になりそうだ。
ちなみに、欺瞞の蝗呪の能力で噛啜の蝗害呪が変身していたカースの素材は、そのままの状態で残されているらしい。
死んだことで、化けている相手の姿で固定されてしまったそうだ。
「くっ、レライエの奴どこ行った!?」
「姿隠すの早過ぎと言うか、PTメンバー相手にまで隠れないで欲しいんだが!?」
「コケエエェェコオオォォ! 我が友よ! 一体どこへ行ったと言うのだ!」
余談だが、どうやら私の知り合いに当たるようなプレイヤーはだいたいこの場に集まっている。
そして、彼らの傍にはだいたい見知らぬプレイヤーが二人居る。
私のように顔見知りと組んでいるプレイヤーが少ないのか、私が知らないだけで知り合いなのか……まあ、後者の方が可能性は高そうか。
「しかし、プレイヤーがカースを呼び出せるんだな……」
「噴毒の華塔呪。レベルもHPもヤベえな……」
「表面がかなり堅いみたいですね。水には弱そうですけど」
「ちなみに変形できるでチュよ」
「「「!?」」」
もう一つ余談だが、13体の華塔呪は化身ゴーレムの言葉に応じるように甲殻をスライド、ラッパ型の花を形成し始めている。
ただ、ビームを見せる気はないらしく、陽気な感じに花を揺らしている。
処理については、プレイヤーがこの場から居なくなってから、自爆させるのが穏当だろうか。
「さて、この後はどうしましょうか?」
「んー、このままゲートに全員揃って行けばいいんじゃないか?」
「せやな。この人数相手に仕掛けて来るカースなんてまず居ないやろうし、皆で行動すればええと思うで」
「そうね。襲われても奪われるものなんてないけれど、皆消費しているでしょうし、一度揃って戻るのはありだと思うわ」
更に余談。
今回のイベント中、『皇帝の明るき庭』と『愚帝の暗き庭』ではPKをする事で素材を奪い取ることが出来る。
が、欺瞞の蝗呪の素材はメッセージに添付する形で送られるため、一度実体化させるまではPKされても奪われることはない。
この人数相手にPKを仕掛けるプレイヤーなんていな……ほぼ、居ないだろうが、対処するのも面倒なので、揃って行動した方が疲れなくていいだろう。
「おっす。タル、最後の邪眼凄かったぞ。ザリア、ナイス看破だった」
「あら、ブラクロ」
「ありがとう。そっちも雑魚の処理ありがとうね」
と、ここでブラクロが近づいてきた。
後ろには見慣れぬプレイヤーが二人。
まあ、PTメンバーだろう。
「で、どうしたの? 急に近づいてきて」
「いや、大した話じゃないんだが、なんか嫌な予感がするから、俺たちはそろそろこの場を離れようと思ってな」
「嫌な……」
「予感?」
「ああ、特に何かがある訳じゃない、本当に漠然とした物なんだけどな。と言う訳でじゃあな。あと二日、お互いに頑張ろうぜー」
そうしてブラクロたちは去っていった。
ブラクロの勘が信用できるかと言えば、正直言って怪しいのだが……まあでも、何時までも此処に留まっていても仕方がないか。
そう思い、私もザリアもこの場を去ろうとした。
「ゲニャアアアアアァァァァッ!!」
「「「!?」」」
そして、聞こえて来た破接の幻惑蟲呪の叫び声に、移動は全力での逃走に変化した。
視界を邪魔するゲージ類もないので、実に丁度いい。
背後に3体くらいの破接の幻惑蟲呪と多数の取り巻きカースが見えて、プレイヤーを襲っている姿も見えたが、私は何も見えていない、聞いていないと言う事で、とっとと逃げた。
とりあえず欺瞞の蝗呪と破接の幻惑蟲呪の格付けは終わったと思う。




