380:3rdナイトメア7thデイT-9
本日二話目です
『おっしゃああぁぁ! 行くぜええぇぇ!!』
『先行し過ぎだ! ったく……』
『CNP』第三回公式イベント『呪われた戦場の悪夢』終了まで後4時間。
現在の拠点保有数は赤2、白5、黒5。
残り時間の都合上、これからの攻撃が最後の攻撃であり、此処で取られれば取り返すのは非常に難しいだろう。
『さて、付いてきてもらうぞ』
『言われなくても分かっているでチュよ』
そんな中で、白陣営も黒陣営も赤陣営が保有している拠点に対する行動は牽制で留め、本命は白黒陣営の砦を奪う事に傾いている。
これは赤陣営が8名集まっている川上の砦と、地形的に大軍を出せない上にアイムさんが徹底的に守っている赤の本営を奪うよりは、白陣営なら黒陣営の砦を、黒陣営なら白陣営の砦を奪う方が簡単だと判断したと言う事である。
『えーと、此処をこうして、これをこうして……』
『チュウチュウチュー』
『……』
また、ここにきて、ようやく私の仕掛けた策による両陣営のリソース不足が本格的に響いてきてくれた。
満腹度不足によって出てこれなくなっているプレイヤーも居るし、装備品や消耗品が足りなくて死に戻り前提の行動を取っているプレイヤーも多くなっている。
ここまでやれば、あるいはここまでやって、後は第三陣営らしく戦いをかき乱すように立ち回り、全員が死力を尽くせば、赤陣営の勝利が見えるだろう。
「じゃ、行ってきますね。タルさん」
「気を付けてね。クカタチ」
「勿論です」
はい、と言うわけで、北西の砦……黒陣営の方へはブラクロとマントデアの二人が。
北東の砦……白陣営の方へはスクナとザリチュが。
川上の砦の防衛はレライエと相棒のネズミが。
赤の本営の防衛はI'mBoxが。
川の中流、今回のイベントマップの中央にある砦には私とクカタチが向かい、五つの砦の占拠を目指す。
なお、奪取に成功次第、キングに着任する事で、奪取の難易度は上げさせてもらう。
「9……10……よし」
私とクカタチの班はクカタチがまず先行した。
中央砦はクカタチを警戒して、川の中に大量の罠を仕掛けると共に、水中で活動できるプレイヤーも多数居る。
だが罠の位置はザリチュのゴーレムの働きによって位置を割り出し、解除してもバレない物は解除済み。
プレイヤーの方も、黒陣営の攻撃と、ここまでの赤陣営の休憩で西側に傾いている。
「フイイィィッシュウウゥゥ!」
「「「!?」」」
「「「ク、クカタチだああぁぁ!!」」」
そこへクカタチが奇襲を仕掛ける。
それと同時に……
「pmal『暗闇の邪眼・2』」
「「「!?」」」
「タルの……」
中央砦を私の呪詛支配圏の内側に入れて呪詛濃度を24に上げ、私の邪眼術……『呪法・破壊星』『呪法・方違詠唱』『呪法・感染蔓』を乗せた『暗闇の邪眼・2』を20の目で中央砦に居るプレイヤーへと放つ。
ほぼ黒の青紫色の光が私の目から発せられ、ターゲットにされたプレイヤーの全身が灼熱の黒雲に覆われて焼き尽くされる。
「ぎゃあああぁぁぁっ!?」
「逃げろ! タルの攻撃だ!」
「熱ああぁぁ!?」
そして、ターゲットにされたプレイヤーから20本の蔓が生じ、伸びて、近くに居たプレイヤーを悲鳴と共に黒雲の中へ納めていく。
威力の都合上、倒せるプレイヤーは限られているが、生き残っても暗闇の状態異常によってマトモに活動する事は不可能になるだろう。
「ガブリガブガブ!」
「このスペックで敵味方識別とかふざけ……」
「あばあぁ!?」
なお、その蔓がクカタチへと伸びて行く事はない。
蔓はクカタチなど存在しないように広がっていき、砦に居たクカタチ以外のプレイヤーだけを襲っていく。
これはクカタチを『呪法・感染蔓』の対象外に出来るように設定したわけではない。
この攻撃開始から12分ほど前に、赤陣営の面々を対象に目五つでの『呪法・感染蔓』付きの『気絶の邪眼・1』を使う事で、『呪法・感染蔓』の仕様通りに対象外になっているだけである。
上手くいくか少々不安だった面はあるが、上手くいって何よりである。
「クカタチ。私も砦に入ったわ」
「分かりましたー!」
「タ、タルだああぁぁ!?」
「『毒の邪眼・2』」
砦への侵入に成功。
とりあえず近くに居たプレイヤーたちに『呪法・増幅剣』付きの『毒の邪眼・2』を撃ち込んで、重症化ラインを超えた毒を与えておく。
どうやら、目三つ分の『毒の邪眼・2』であれば、毒を回復してどうにかしようとは思わないらしい。
「さて……」
此処で一度全体の状況を確認。
まず中央砦にいるプレイヤーの数は案外少ない。
どうやら白陣営は川下の砦に戦力を集めて……いや、私が来ることを予想して、呪詛濃度24の環境で戦えないプレイヤーは川下に集め、戦えるプレイヤーをこちらへ集めていた感じか。
ブラクロ、マントデア組は順調。
スクナ、ザリチュ組も多少の苦戦を強いられているようだが、大丈夫そうか。
レライエとアイムさんも自分の仕事を頑張ってくれている。
特にレライエは全方位に矢を放っていて、かなり忙しそうだ。
ザリアたち要注意プレイヤーは……動き始めた。
中央砦に向かって来ている。
「急いで戦場を整えないといけないわね。citpyts『出血の邪眼・1』」
「やっ……」
「はい、着火」
毒の重症化によって動けなくなっている白陣営プレイヤーへ、12の目による『呪法・破壊星』付きの『出血の邪眼・1』を発動。
これを2回繰り返して、2回目が入った直後に毒のダメージによって出血が発動。
1,200を超える出血のダメージによってプレイヤーは爆散、応急修理されていた砦の扉だけでなく、砦の城壁の一部と、その陰に隠れていたプレイヤーを吹き飛ばす。
「さあクカタチ。蹂躙するわよ」
「アイアイサー!」
「負けるかアアァァ!」
「ザリア隊長たちが来るまで持ちこたえるぞ!」
私とクカタチは一度合流。
お互いに問題がない事を確認した上で、砦の中に居たプレイヤーへと襲い掛かった。