379:3rdナイトメア7thデイT-8
本日一話目です
「殺せぇ……いっそ殺せぇ……」
「鬼! 悪魔! タルウィ!!」
「ぐぬぬぬぬ、ぐぬぬぬぬぬぬ、ぐぬぬぬぬ……」
さて、少々唐突な話になるが、今回のイベントで最も嫌われる行動とは何だろうか?
一方的な蹂躙? 毒を混ぜるなどの暗躍? 火計を仕掛けるなどの策謀? いつまでも姿を見せない潜伏と心理戦? 遥か彼方からの狙撃? いいや、違う。
これらは嫌われるが、最もではない。
今回のイベントで最も嫌われるのは……
「『淀縛の邪眼・1』」
「あばっー!」
「貴様に人の血は流れていないのか!」
「遅延行為は止めろ! 繰り返す遅延行為は止めろ!!」
後一撃で倒せるような状態にしておきながら放置しておくことである。
具体的に言えば、スタック値90前後の干渉力低下によって碌に身動きが取れなくなったプレイヤーを放置して、死に戻りも攻撃も撤退も許さないとかである。
まあ、誰だって嫌だろう。
罵倒しか出来ない状況に追いやられて、放置されるなんて。
「あははははっ! 負け犬の遠吠えが聞こえてくるわねぇ!!」
「カース! カース! カス!」
「一矢報いてやる! 全員声が枯れるまで口撃するんだ!!」
「特殊状況だからなのか、意外と実入りはいいから安心しろ!」
「痴女! 変態! 未知狂い!!」
なお、ポイント取得の観点から言えば、私にとってはゲロマズの戦術である。
状態異常を与えるだけ与えて放置しているのだから当然なのだが。
しかし、時間稼ぎを考えた場合には、これ以上に良い戦略はない。
なにせ干渉力低下は重症化しなければ、強力かつ長時間の拘束には当たらず、魅了や睡眠と違って何度でもかけられるからだ。
「バーカ、バーカ、バアアァァカァ!」
「雑草でも食ってろ!」
「お前なんてディスコのミラーボールだ!」
「もうちょっと罵倒の語彙を増やしなさいよ……」
「ドS! サディスト! 拷問官!!」
「ありがとうございます! その蔑むような視線ありがとうございます!!」
「ウホオオオォォォ! 即落ち2コマアアアァァ!!」
なんか、こっちにやってくる黒陣営の方向性がおかしくなってきている気がする。
ゴーレムの目を介してみた限り、スクナが対処している白陣営側は普通なようだし、黒陣営にそう言うのが集まっていると言う事だろうか?
いや、他の戦場を見た限り、おかしいのは此処だけか。
となると、私のところにそう言うのが集まってきてしまっているのか。
うーん、未知じゃなくて理解できない既知なのよねぇ、こう言うのは……。
「なんか変な事になってきているでチュね……」
「そうね。あ、そろそろ処分お願い」
「分かっているでチュよ」
なお、干渉力低下で相手の動きを鈍らせて、攻撃の手を緩めると言っても限界はあるので、定期的にザリチュに出てもらって、切り伏せている。
切り伏せる際に時々聞こえてくる奇声の類は気にしないでおくとしよう。
「ぶっちゃけ、気持ち悪いのが何人か居るでチュね……」
「ザリチュに切られる瞬間、明らかに気持ちよさそうにしているのがいるものね……」
ザリチュによる処理が終わったところで、再び足止めしていく。
まあ、そういう性的嗜好の人間は一部だけだ。
大半は普通のプレイヤーなので、一度死なせてすらもらえない環境を味わったら、自分のポイントを稼ぐためにも、自分の陣営を勝利させるためにも、他の戦線に流れていく。
現状の砦の所有が赤:白:黒=2:5:5なのもあって、この流れが変わる事はないだろう。
なにせ、赤陣営が所有している砦を奪うよりは、他の陣営が所有している砦の方が奪い易いのは明らかなのだから。
「んー……まあ、何とかはなるか」
「上手く節約すれば何とかなるんじゃないでチュか?」
私は今後の展開を考えつつ、自分に罹っている状態異常を見る。
私は前の『化身』のコストが回復しきる前に次の『化身』を使って、化身ゴーレムを制作した。
その結果として、私の最大HPは現在、最大値の60%ほどしかなく、そこから最大HP低下は回復していない。
「まさかの仕様だったわよねぇ」
「妥当と言えば妥当でチュけどね」
そう、『化身』のコストとして付与された状態異常は、化身ゴーレムが存在している限り回復しない。
そしてこの効果は、今出ている化身ゴーレムのコストであるかは関係ないのである。
しかも、コストの計算はきっちり本来のHPでやられている。
なので、今の私は『化身』のコストが二重にのしかかっているのに近い状態になっているわけである。
「とりあえずイベント終了後以降はきちんと状態異常が治ってから使うようにしないといけないわね」
「最悪、状態異常が治らない限りは、何も出来ないまま待つしかない状態になりそうでチュからねぇ」
ま、この話はこれくらいにしておこう。
今はイベントだ。
「さて、そろそろ時間ね」
「では、ザリチュは準備しておくでチュよ」
「ええ、お願いね」
ザリチュの化身ゴーレムは私の傍に居るが、各地のゴーレムが準備を始める。
私はクカタチたちと合流し、この後についての最終打ち合わせと、それに合わせた準備もしておく。
「さあ、目にものを見せてやりましょうか」
「だなっ」
「さて、今度はきちんと砦を取らなければな」
「楽しくなってきたー」
「目にもの……もう、何度も見せられていると思うがな」
「……」
「チュー」
「チュウチュウ、頑張るでチュよー」
では、反攻開始だ。




