372:3rdナイトメア7thデイT-1
本話よりイベント終了までタル視点となります
本日二話目となります
「9名? 俺たちは7人しか居ないだろ」
「ざりちゅも居るでチュよ」
「加えても8人だろ」
私の演説が終わると共に、私たちは裏口から地上に出た。
その直後に運営からあったサプライズアナウンスについては……気にしないでおこう。
とりあえず今はブラクロの質問に答えるとしよう。
「ザリチュを加えているのもそうだけど、レライエの懐に居る子も加えているだけよ。嘘は吐いていないわ」
「チュ!?」
「……。これを頭数に加えているのか……。まあ、構わないが」
赤陣営のプレイヤーは7人。
これは正しい。
だが、プレイヤーではないが、自分の意思で行動できる存在はザリチュとレライエのテイムモンスターで2体居る。
それを合わせれば9名だ。
拠点の制圧には直接関われないが、大事な仲間であることに変わりはないので、何も問題はないだろう。
「白と黒のキングを今の時点で仕留めたのは? 本気で勝ちを狙うなら、終了直前に仕留める方が良かっただろ」
「いいえ、キングを仕留められるのは今のが最後のタイミングよ」
6人で山を下りつつ、続けてマントデアの質問に答える。
「私がライトローズさんとエギアズ・1だったら、キングでいるのは今日の朝、自分の陣営のプレイヤーに指示を出すまでよ。それが終わったら、問題のないタイミングで一度死んで、キングではないようにしておくわ」
「と言うと?」
「キングのデメリットは7日目だと大きすぎるのよ。それこそさっきマントデアが言ったような一発逆転を許してしまう。他のプレイヤーならいざ知らず、プロプレイヤーなら、こういう事故の芽は摘める内に摘んでおくもの。だったら、私がポイントとしていただいておいた方が、美味しいわ」
「なるほどな」
ちなみに私がやったのは、寝ている二人の寝室に大量の眼球ゴーレムを忍び込ませ、『呪法・感染蔓』と『呪法・貫通槍』を乗せた『出血の邪眼・1』を放ち、多段ヒットによって出血を大量に溜め、演説終了と共に爆破と言う行為である。
本人と本人の周囲のプレイヤーを仕留め、それぞれの本営を半壊させる程度には効果があった。
「川上の砦が派手に燃えてますねー」
「さっきタルが何かやっていたからな」
なお、川上の砦には『呪法・感染蔓』と『呪法・破壊星』を乗せた『灼熱の邪眼・2』を撃ち込んだ。
こちらは一人に多段ヒットさせるのではなく、砦中のプレイヤーに蔓延するように撃ち込んでいる。
その結果として、砦内に置かれていた可燃物に燃え移ったのか、結構派手に燃えている。
「さて、お喋りはここまで。まずは準備運動と行きましょうか。その後は事前の予定通りに」
「「「おうっ」」」
そうこうしている内に、私たちは何処か怯えた表情のプレイヤーたちの姿を眼下に捉えられる場所に着いた。
ここは赤陣営の拠点に繋がる洞窟の掘削場所であり、昼夜問わず掘削作業が進められていた場所である。
「さあ、抗いなさい」
「う、うあああぁぁぁ!」
「やってやらああぁぁ!」
「舐めんじゃねぇ!!」
結論から言えば、準備運動にしかならなかった。
私に至ってはちょっとフレイルを振った程度であり、邪眼術は撃ってすらいない。
まあ、復活するための拠点が近くに無いなら、こんな物だろう。
「じゃあ、行くよー。レライエ」
「……。言われなくても」
「チュー」
では、分散だ。
まず、クカタチとレライエが川上の砦へと向かっていく。
水中が得意なクカタチと、長射程の遠距離攻撃を持つレライエの組み合わせなら、川上の砦の奪取、維持だけでなく、左右の砦の援護も出来るだろう。
「よし俺たちも行くか」
「そうだな。では、どちらがより多くの相手を切れるかの勝負と行こう」
「いいねぇ。でも今回は生き残り優先だろ?」
「全員斬り倒せば、生き残れるだろう?」
「違いない」
北西の砦、黒の本営に近い側へはブラクロとスクナが向かう。
まあ、全員斬り倒せば生き残れると言うのは間違ってはいないか。
ただ競うだけでなく、上手く協力して欲しくもある。
「アイムは元の拠点の防衛だったか」
「ええ、キングである私が生きている限りあそこは取られないけど、取られないのは拠点であって食料と資材ではないもの。アイムには上手くやってもらいましょう」
赤陣営の本営と呼ぶべき砦はアイムさんが守っている。
一度倒される前に使っていた罠以外にも色々と張っているようなので、あちらに侵入したプレイヤーは手厚い歓迎を受ける事になるだろう。
「さ、私たちも行くわよ。マントデア、ザリチュ」
「早くたるうぃとざりちゅを乗せるでチュよ」
「おうっ、いやぁ、正に悪役って感じの雰囲気だな」
最後、私、マントデア、ザリチュの3人は北東の砦、白の本営に近い側へと向かう。
ほぼ間違いなくザリアたちにストラスさん、カーキファング、ドージ、『光華団』の面々と言った白陣営の精鋭が集まっている事だろう。
だからこそ面白いわけだが。
「じゃ、飛ばすぞ」
私とザリチュを乗せたマントデアが駆け出す。
小岩を蹴り飛ばし、木々をなぎ倒し、雷光を背中で迸らせながら駆けていく。
そして……走る勢いを乗せつつ腕を突き出して、私たちを大空へと撃ち出した。
「全ネズミゴーレムに命令でチュ。死ぬまで敵の喉笛を噛み千切りにかかれ」
「ふふふ、etoditna『毒の邪眼・2』」
各地のネズミゴーレムたちが暴れ出す。
『呪法・感染蔓』と『呪法・破壊星』が乗った『毒の邪眼・2』が撃ち込まれて深緑色の蔓が砦の中で暴れ回る。
私の『呪圏・薬壊れ毒と化す』と呪詛濃度20の領域が砦の中へ伸びて覆い尽くす。
「がっ、げっ……」
「なんだ……これは……」
「さあ、何人が無事かしらね?」
「チュッチュッチュー」
「はぁはぁ、タル! 早速ね!!」
そして私たちが毒が蔓延する砦の城壁の上に着地すると同時に、砦の中から現れたザリアが私に切りかかってきた。