350:3rdナイトメア3rdデイ-1
ザリア視点です
「ライトローズさんが?」
「はい、申し訳ありませんが、一緒に来ていただけませんか? ポイント面での損はさせませんので」
イベント三日目。
今日も前線で暴れようと思っていた私の前に『光華団』のメンバーであるアカバベナと言う女性が現れた。
と言うわけで、ロックオたちが前線に行くのを見送った私は白の本営へと移動、『光華団』の団長であり、白の本営でキングに選ばれたライトローズさんと会うことになった。
「突然の呼び立てごめんなさいね。ザリアさん」
「いえ、それで用件は?」
場所は白の本営の最深部。
部屋の中に居るのはライトローズさん、第二回イベントでタルと組んだライトリカブトさん、検証班のストラスさん、他に何人か『光華団』と検証班と思しきプレイヤーが居る。
「単刀直入に言えば、貴方に赤の陣営、タルの捜索をお願いしたいと思っています」
「……。私がタルのリアフレだからですか」
「その通りよ。あまり誉められた手段でない事は理解していますが、タルをこれ以上放置する事は危険だと判断しました」
「なるほど」
タルを放置できない、と言うのは私も同意する。
タルが表に出てこない以上は、裏で何かをしていて、それは現在進行形で行われている可能性が高い。
だからタルを倒す事で止めたいと言うのは、当然の話だろう。
「正直な意見を言わせてもらいます」
「どうぞ」
「リアフレであってもタルの思考を読むのは無理です。ましてや何処に隠れているかなんて分かるわけがないです」
「そうよね。まあ、ぶっちゃけると、こちらとしても藁にもすがる思いと言う奴なの。なので、上手くいかなくても大丈夫よ」
「なるほど」
失敗しても構わない、か。
まあ、これは当然の話だろう。
『光華団』と検証班なら、相応の規模の捜索隊を出して、今回のイベントのマップを隈なく探るくらいは出来るはず。
それなのに未だタルの居場所が掴めないとなると……。
「……山の中に隠された拠点がある。とかですかね」
「ザリアさんもそういう結論に至りますよね」
私の言葉にストラスさんが答える。
彼女は確か検証班の中でもタル専属と言う立ち位置だったはずなので、羽衣ではなくタルの事ならば私よりも詳しいかもしれない。
いや、羽衣との付き合いだってここ三ヶ月だけだから、そんなに詳しいわけじゃないけど。
「ザリアさんもと言う事は検証班でも?」
「はい。クカタチやレライエの寝床や補給を考えると、山の中、地下に赤陣営の砦があるのではないかと言う結論になっています。他の場所は全て調べ終わっていると言うのもありますが」
話を戻してタルの居場所について。
やはり第一候補は北の山の中。
此処が未だに調べられていないのは、地形そのものが物を隠すのに適している事もそうだが、白と黒の陣営の中間地点であること、昨日まではレライエが居て陣営問わず襲われていたこと、未だに大量の罠が仕掛けられている事などが理由として挙げられる。
昨日の午前中に、私が川の上流部分に当たる場所でクカタチと遭遇しているのも、山の中に拠点がある傍証と言えるだろうか。
「分かりました。それでは山の中に赤陣営の隠し砦があると推定して、探索してみたいと思います。それで探索に当たって、これまでに白陣営で得た情報を知りたいのですが……」
「ありがとうザリアさん。助かるわ。情報についてはストラスさんとアカバベナに聞いて。それと戦力として、ライトリカブトも貴方に同行させるわ」
「ありがとうございます」
まあ、探すだけ探してみるとしよう。
キングであるライトローズさんの頼みを引き受ける形での捜索なら、どう転んでもポイント的には美味しくなるようになっている。
と言うわけで、これまでに集めた情報の確認の為に、私、ストラスさん、アカバベナさん、ライトリカブトさんの四人で別の部屋に移る。
そして情報を確認した。
「I'mBox?」
で、昨日レライエ討伐直後に喰らった地雷を仕掛けたであろうプレイヤーの名前を知った。
「はい、I'mBoxさん、通称アイムさんが昨日の地雷の犯人と思われます。と言うのも、あの地雷は検証班での検証作業の末に開発された物であり、所有者は『箱重なる倉庫』の管理人である彼女以外にはあり得ないからです。そして彼女は移動能力に乏しいプレイヤーです。そんなプレイヤーがあの山の中に居たと言う事は……」
「なるほど。七人目の赤陣営と言う事ね」
「そうなります」
ストラスさんによれば、アイムさんは検証班所属のプレイヤーであり、私有ダンジョン周りの検証……特にダンジョンの構造を弄る辺りを専門にやっているらしい。
見た目は完全にただの宝箱で、中にアイムさん本人が入っており、外に出る事は殆ど出来ないとの事。
ただ、自分だけでは殆ど身動きが取れない代わりなのか、他人には見えない手や目を箱の外に出して、周囲に罠を仕掛ける事が出来るようだ。
となると、あの地雷は予めあの場に仕掛けられていたのではなく、踏む直前に仕掛けられた可能性もあるわけか。
「やっぱり北の山が怪しいわね。大量の罠による防衛が行われていたら、地下への入り口とかがあっても見逃しそうだし」
「では……」
「ええ、北の山に行きましょう」
「分かりました」
「頑張らせていただきます」
「よいご報告をお待ちしています」
と言うわけで私、ストラスさん、ライトリカブトさんの三人で北の山へと向かう事になった。
それと同時に、両陣営の上の方で話し合いが行われたらしく、北の山に潜んでいるであろう赤陣営を討伐するまで、北の山の中を非戦闘区域に指定して、山の中では赤陣営との戦いを最優先事項にする取り決めが交わされた。
さて、出来るだけ早く見つかればいいのだが、どうなるだろうか?
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