349:3rdナイトメア2ndデイT-1
タル視点です
「ふあっ……二日目ね」
『でチュねぇ。あ、頼まれていたことは万事滞りなくでチュよ』
「それはいい事ね」
さて、イベント二日目であるが、まずは今更ながらにザリチュの渇砂操作術『鼠』によって生み出されるネズミ型ゴーレムの仕様について。
このネズミ型ゴーレムはザリチュによる遠隔操作だけでなく、食料を与える事である程度の自立行動も可能なゴーレムである。
だが、最大の特徴は体の中が空洞になっていて、そこへ様々な物を納めておける事だろう。
そう、『眼球』による眼球ゴーレム、熱拍の幼樹呪の心材の粉末、『ダマーヴァンド』の飢渇芋、炎視の目玉呪の毒腺、毒炎の望遠鏡、『虹瞳の不老不死呪』の呪詛薬・『堕即』、サイズ上の問題さえなければ、だいたいの物は入れておけるのだ。
「これで、食料の消費が加速するわ」
『いやぁ、エグイでチュねぇ』
この機能とネズミ型ゴーレムの機動力と隠密性を生かす事で、私はイベントマップ中に眼球ゴーレムを設置して、戦場全域を把握できるようにした。
それこそ、最前線から各陣営の本営の作戦室、あるいは倉庫までだ。
把握できないのは、各個人のインベントリと注目に値しないと感じたプレイヤーの動向くらいだろう。
で、これが一日目。
『何がエグイって、まずバレる事がないと言う点でチュよね』
「あら、注意深く観察すれば分かるかもしれないわよ? 白い小麦粉に別の白い粉が混ざっているわけだし」
そして一日目の深夜から二日目の朝までの間に、私の指示を受けたザリチュが各砦の倉庫に忍ばせたゴーレムを操る形で動いた。
『ダマーヴァンド』の飢渇芋と言う、食べれば食べるほどに満腹度が減る芋の粉末を、小麦粉などの食料に混ぜたのだ。
これで満腹度の回復には、通常の倍程度の食料が必要になる事だろう。
「噂の方は?」
『そっちは不自然に思われない事を優先しているから、難しいでチュね』
「まあ、上手くいかなくても問題はない話だから、問題はないわ」
さて、他にもやっている事はある。
ザリチュはゴーレムを操作する事によって出来る各種小細工を現在進行形で展開すると共に、私たちが居る赤陣営の本営の壁を腕ゴーレムによって削って砂にし、各種ゴーレムの増産を進めている。
私も私で、ザリチュのゴーレム増産に詠唱キーを述べると言う形で協力すると共に、わざわざイベント中にまで持ち込んだとある物品の加工を進めている。
たぶん、今夜あたりには完成するだろう。
「と、ザリアが二戦目を始めるわね。プレイヤーの数も十分。仕掛けましょうか」
『分かったでチュ』
私は腕ゴーレムの操作を止めると、一部の眼球ゴーレムの視界に集中。
その場に居るプレイヤーのおおよその数を把握すると共に、夜の間に上空に漂わせてもらった呪詛を眼球ゴーレムの視界を介する形で制御、私の頭上から上空までと、上空から適当なプレイヤーの頭上にまで呪詛濃度10の空間を伸ばす。
それから、呪詛の星と呪詛の種を生み出すと呪詛濃度10の空間を通る形で射出。
「ytilitref」
そう、今回のイベントでは、空間の呪詛支配が非常にやりやすくなっている。
私の呪詛支配領域圏外でも眼球ゴーレムの視界に入っていれば問題なく呪詛濃度を操り、呪詛の星と種を重ねたものを動かしたり、ほんの一瞬だけプレイヤーの体内の呪詛濃度を少し上げる事が出来る程度には。
だからこういう事も出来る。
「『飢渇の邪眼・1』!」
ザリアたちの戦闘を見ていた眼球ゴーレムの内、13体の目から無色透明の光が放たれ、呪詛の星と種が丁度重なったプレイヤーに『飢渇の邪眼・1』が発動する。
そして、感染源となったプレイヤーから無色透明の蔓が伸びていき、同じ戦場にいる他のプレイヤーたちへと感染が広がっていく。
満腹度が減り、乾燥の状態異常が付与されていく。
だがザリアたちが私の攻撃に気づくことはない。
『飢渇の邪眼・1』によって生じる感染蔓の蔓の色は無色透明であり、知らなければ空気が一瞬歪んだようにしか見えないからだ。
「っう。やっぱり反動がきついわね」
『まあ、コスト2倍でチュからねぇ。装備品の耐性だって幾らかは抜かれるでチュよ』
勿論、こちらも相応のリスクは負っている。
呪詛の星と種の射出を見られれば、私の居場所が知られる可能性もあるし、眼球ゴーレムを介した邪眼術はコストが倍になるなどのデメリットがある。
だから私は事前に淹れておいた紅茶を飲んで、乾燥の状態異常の回復に努める。
『で、どれぐらいやるでチュか?』
「出来れば感染蔓のクールタイムが明ける度に仕掛けたいところね。白と黒陣営の消耗は出来るだけ早めておきたいわ」
『勝つためにでチュか』
「ええそうよ。運営的には赤陣営はボーナスボスのつもりだろうけど、だからと言って敵陣に特攻して、暴れて、最後は狩られるなんて当たり前の展開、私はしないわ。そんな既知はつまらないもの。全員から敵と認識されて、逆に叩き潰す。実現できるかはともかくとして、私の目標はそれよ」
さて、感染蔓のクールタイムが明けるまでは加工作業に戻るとしよう。
これが完成すれば、ザリチュのさらなる強化に繋がるので、出来るだけ急ぎたい。
急ぎたいが、ここで手を抜いては台なしでもある。
気を付けなければ。
「ふふふ、楽しくなってきたわ」
『ぶっちゃけ、現時点でも最大の脅威認定をされている気がするでチュけどねぇ』
その後、クカタチとレライエの二人が倒れたと言うアナウンスが入ってきた。
クカタチはまあ健闘したと言えるだろう。
流石に相手が回避型タンクとしてマナブを起用した上で、電撃系を中心とした範囲呪術を連打されると言うメタ構成をされたら、逃げる他はなく、その逃げると言う行為にも罠が張られていたのではどうしようもない。
レライエについては……『ダマーヴァンド』の子毒ネズミをテイムした上に、灼熱の魔眼とでも言うべき呪術を使わせているのには驚いた。
しかも、あのネズミ、レライエの『不老不死』の呪いを一部だけど分けられている感じもあったし、ただのテイムではなさそうだ。
それと、事前に渡したアレは結局最後まで使わなかったのだが、復活後に使うつもりなのだろうか?
まあ、インパクトを考えたら、私が使った方が有効であるし、悪い事ではないか。
「まだまだよ。だってまだ各陣営の上層部には余裕があるもの」
では、小細工を続けるとしよう。
12/08誤字訂正




