生き残り
タユからイリア行きの船が出るのは、今日の11時である。
既にオージュは到着していた。
「まだかな…リーベルト
そろそろ船でちゃうよ…」
時間を気にしながら、呟いていた。
「お〜い!
オージュ〜」
オージュが声のする方へ振り返ると、そこにはリーベルトだけではなく、見たことのある顔が二人いた。
「なんかさぁ、こいつらも一緒に行きたいってさぁ」
「お前ら二人だけじゃ、殺されにいくよーなもんだろ」
「フィーアレンス行けるんでしょ?
わたしもいくいく〜」
そこにはクアールとユリカの姿があった。
「二人とも…
嬉しいよ」
そうして集まった四人は、イリアへ出発した。
「ってかよぉ、フィーア持ってねぇのオレだけじゃん!」
リーベルトが言った。
「だな、お前が1番最弱ってことだ」
「んなっ!」
「まぁまぁ、仲良くいこうよ」
オージュがなだめる。
「でも、そういえばそうなんだよね。
ここには、3っつのフィーアがある…
風、火、緑…
これだけのフィーアを持ってるってことは、それだけ狙われるってことにもなるよね…」
オージュが言った。
「そうじゃな…
そうしてお前達は死んでいくんじゃろうなぁ」
4人は、驚いて声の主を探した。
すると隣の座席に老人が座っているのを見つけた。
「こら、じじい…
今なんつった?」
クアールが言う。
「なんせ…
お前達は弱い…
フィーアが泣いておるわ…」
「なに!?
ふざけるなよ!じじい!」
「ちょ…
やめろって!」
リーベルトが叫んだ瞬間、その老人の姿は消えていた。
クアールは、振り上げた拳の行き場を無くした。
するとユリカが悲鳴をあげた。
なんと、立ち上がったクアールの席に、老人が座っていたのだ。
「な…
なに」
クアールが驚きで立ちすくんでいる。
「お前達は…
弱い…」
老人は、お茶をすすりながら言った。
「じゃあ…
あなたは…
天地研究隊の生き残りなのですか!?」
オージュが叫んだ。
「さよう…
お前達、強くなりたいとは思わんか?」
「思う!
じいちゃん、オレ強くなりたいっす!」
リーベルトが言った。
「リ、リーベルト…」
オージュが苦笑いする。
「そうか、お前はフィーアを持っていないようじゃな」
「じ、じゃあ、強くなる方法があるんですか!?」
オージュが聞いた。
「お前達のやるきしだいじゃな…」
「ふん…
こんな老いぼれが…
馬鹿らしい…」
クアールが言った。
「お願いします!
その方法を教えてください!」
オージュが言う。
「そうか…
ならイリアに着いてからじゃな、
楽しみにしていなさい」
そういうと老人はその場を去って行った。
夜―
オージュとリーベルトは、船内にある仮眠室にいた。
「なぁ、ちょっとまてよ?あのじいちゃんが天地研究隊だったってことは…
今いくつだよ!」
リーベルトがオージュに話し掛ける。
「若くて…
120歳くらいかな?」
「ま、まじかよ…
でも、すごいじいちゃんなんだろ?」
「うん、
とにかく、明日イリアについたらだね」
そうして二人は眠りについた。
再び訪れたイリアは、前回となんら変わりなく、賑やかな姿を残していた。
ただ、オージュの心の中には、ゲルリアという男―。
その存在がこの国の裏に潜んでいると思うと、なにか胸騒ぎのようなものを感じるのであった。
「で、あのじいちゃんは?」
すでに船から降り立ち、港にでた4人は、あの老人を待っていた。
「強くなる方法って…
なんだっていうのよ、
別に私は強くなんかなりたくないっていうのに」
ユリカが愚痴をこぼす。
「いまさら何を言っている?
お前だってフィーアを持っているんだ。
すでにこのストーリーの登場人物になってしまっているんだぞ?
覚悟を決めるんだな」
クアールが言った。
「そうじゃぞ?
フィーアに選ばれたんじゃよ、お主らは」
気付くと、既にあの老人がベンチに座っていた。
「なんなんだ、じじい!
普通に現れろ!ったく…」
「娘よ、お主は既に、フィーアに助けられておる身じゃろ?」
「な、なんでそのこと知ってるのよ!?」
「お主のフィーアが教えてくれんじゃ。
よいか?
フィーアを扱う者は、フィーアと心を通わすことが1番じゃ。
それなしでは、フィーアレンスにたどり着くことは不可能」
そういうとオージュの目の前に歩み寄った。
「オージュ、
お主がこの者達を束ねるのじゃ。
イーリオンがそうであったように、それが必然というものじゃ」
「は、はぁ」
オージュが戸惑う。
「安心せい、
お主にはイーリオンの血が流れておる。
なにをせずとも、
自然と人がついてくるであろう…
さて…
ついてきなさい」
そういうと、老人はイリアの街の方へとゆっくりと歩いていく。
そのあとを4人は同じ歩幅でついていく。
どれほど時間が流れただろうか。
すでにイリアの賑やかな街は遠く、老人を含めた5人は、森の中を歩いていた。
「はぁ…
ちょ、ちょっと!
どこまで行くのよ!」
ユリカが老人に声を上げる。
「まだじゃ、もう少し辛抱せい」
そう言うと黙々と歩を進める。
「はぁ…はぁ…
おじいさん、一つ…
聞いてもいいですか?」
オージュが声をかける。
「ん?
なんじゃ?」
「あ…あの…
おじいさんの名前を知りたいなぁと」
「リムア…
だろ?じじい」
クアールが言う。
「そうじゃ…
いかにも、わしの名前はリムア」
「現在…
100年前の戦いで生死が確認されていない者…
それは土のフィーアの主人、リムアという男だけ…
だよな?」
クアールが、リムアを睨みつける。
「さよう…」
振り返りもせず、リムアは淡々としている。
「土のフィーア…
ジラーハが使っていたフィーアだよね?」
オージュが言う。
「そうだ…
だが…
ジラーハは、土のフィーアの10%も使いこなせていなかっただろうな…
このリムアというじじいの、足元にも及ばない程度だ。
土のフィーアには、ある武器が同時に使われていたらしい。」
「武器…?」
オージュが聞き返す。
「あぁ…
ジラーハの使っていた、リテウスと言う剣…
あれは、その武器を目標に作られたものらしい…」
「クアールと言ったか…?
お主、よく調べておるなぁ…」
リムアが言う。
「当然だ…
なめるな…」
「良い根性をしておるな…
このリムアにそのような暴言を…
身の程を知れ!」
そういうと、リムアは空を舞い、クアールの背中に一蹴り入れた。
「くぶっ…
じじい…」
クアールは意識を失い、その場に倒れ込んだ。
「クアール!」
オージュの声にも、反応はない。
「ふぅ…
さて、着いたぞ。
今日はここで寝るとしよう…」
そういうとリムアは、手頃な岩に座り込んで、目を閉じた。
「え…
ここで寝るの?」
リーベルトが落胆する。
「ジョーダンじゃないわ!
いい加減我慢できない!
私ニニアに帰る!」
ユリカが言う。
「でもさ…
こんな森の深くに来たら…
一人で引き返すのは無理だよ…」
オージュがなだめる。
「ふんっ!
ホントあんたは頼りにならないわね」
「悪かったね、頼りなくてぇ〜。
とにかく、クアールも目覚めないから、今日は寝よう?」
そう言うと3人は、それぞれ寝場所を探し、深い眠りについたのだった。
「やっと寝よったか…
しかし…
よくここまでついてきたもんじゃ…
ふっ…
明日が楽しみじゃな…」




