295. 全然隠れてないっ
跳ねながら18番19番20番屋台に向かう。
すでに年若そうなエルフさん達が沢山集まり、遊びに興じている。
私達が20番屋台に近付くと、若い男女が景品を眺めていた。
「まあ、可愛らしいわ!」
「子が着用すると、このように可愛らしくなるのか」
若いご夫婦かな?
私のうさちゃんロンパースを見て嬉しそうに微笑んだ。
「良し。子のために私が取ってこよう」
「はい。楽しみにしておりますわ」
おおうっ。女性は妊婦さんなんだね。
私は釣り小屋近くのこたつテーブルをお勧めする。
「おねしゃん、どじょー」
「ありがとう存じます。まあ、座面が温かいわ」
「お気遣い感謝いたします。では、いざ」
「応援しております」
「ああ。見ていてくれ」
うんうん。微笑ましい。
動物さんシリーズのロンパースが当たるといいねえ。
担当者に一回三百エンですと言われ、金貨(十万エン)を出すお兄さん。
お金持ちい!約三百三十三回もチャレンジするの?
今は人が少ないからいいけれど、人が多くなってきたら交代してねと言うと、もちろんですと承知してくれた。
磁石がついた釣り糸を、流れるプールの中に投入するお兄さん。
糸の先の磁石をくっつけるべくシャブシャブすると、玩具の魚が口がくっついた。
「何が当たったのだろう」
「賞品は『シルクのリボン』です!」
「おお、手触りが良いな」
お兄さんが笑顔でお姉さんにリボンを渡す。
受け取ったお姉さんは、本当に手触りが良いのねとリボンを触っていた。
「さあ、混み合わないうちに次をどうぞ!」
「そ、そうだ。では」
何度か挑戦し、とうとう狙っていた動物さんシリーズロンパースがヒットする。
「魚が二つついた。これはどうしたら良い?」
「二つともどうぞ」
「ありがたい。当たったよ。コアラさん水色?とはどんな動物だろうか?」
「まあ、可愛い。貴方のお洋服をお父様がご用意くださいましたよ」
お姉さんがコアラさんロンパースを広げ、お腹に向ける。
「もう一つは…レエスのショール?なんと美しい!」
「本当に美しいわ。手触りも良くて模様も細やかで素敵。お包みにも使えますわね」
二人が見つめ、微笑み合う。とても幸せそう♪
「他の服も狙ってみるか」
「ふふっ。私、あの子が着ていた服も欲しいですわ」
「ああ、可愛かったものな」
ご夫婦は私が着ていたうさちゃんロンパース狙いらしい。
景品は無くなることがないから、楽しんでね!
あとは担当者に任せて、私達はクリスマスツリーの広場に向かうことにする。
またまた鳳蝶丸がジャンプさせてくれたので、楽しく広場に到着した。
「あっ!イバヤたん」
「ここで、薔薇を咲かせてるのか?」
鳳蝶丸が吹き出しそうになりながら、クリスマスツリーの下を見る。
そこには本物のイバヤちゃん達が美しい薔薇を咲かせていた。その中に一輪だけしれっと青薔薇の[ブルー・ラ・レーヌ]が!
するとテイルが現れて鳳蝶丸の肩に乗った。
「気付いた人に、あの薔薇をプレゼントするそうでちゅよ」
「わあっ!だえ、みちゅてゆ?」
誰が見つけるのかな?楽しみねえ。ワクワク♪
イバヤちゃん達も楽しそうにサワサワしていた。
「それから主様。エメルさんが噴水を作ってほしいそうでちゅよ」
「よーたい、でっちゅっ!」
了解です!
我が家の眷属ちゃんエリアにある噴水と同じ物を設置します。
転倒防止も兼ね、結界を張って私達と眷属ちゃん達以外は入れないにする。
魔石から水が溢れ出すと、噴水の水からエメルが現れた。
「はあ。やっぱり主様のお水は美味しいわねえ」
「主様のお手を煩わせるのはどうかと思いますよ?」
フワリと小鳥スザクが現れる。
「美しい噴水が飾られたんだからいいじゃない。そんなことより貴方も役に立ったらいかが?」
「もちろんですとも。では僭越ながら、私めから主様に贈り物をいたしましょう」
ピルルルルルル♪
クリスマスツリーの天辺の星にスザクが止まり、愛らしく囀り始める。
「わあ!たわいい」
するとリッカが姿を現し、クリスマスツリーの上を縦横無尽に走り出す。
リッカの走った跡には真っ白で美しい雪が積もっていた。
「わあっ!ホワイト、チュイ……ソユシュ、ティッシュ!」
よくよく聴くと、スザクの囀りはクリスマスソング。
「多分、レーヴァが覚えさせたんだろう」
「みんにゃ、たわいいねえ」
眷属ちゃん皆可愛いねえ。
やがて囀りが終わり、スザクが空中へ消える。
いつの間にかリッカもテイルもエメルも消え、イバヤちゃん達だけがサワサワ揺れていた。
「何とも素晴らしい。美しい調べでした」
振り向くと王様や側近、騎士達がいて、一緒にスザクのクリスマスソングを楽しんでいたようだった。
「ゆき様は素晴らしい精霊様に囲まれていらっしゃるのですね」
「あいっ。みんにゃ、しゅてち。たわいい、たっといい」
そうなの。皆素敵で可愛くて、格好良いんだよ。
全員上位精霊では無いけれど、皆、皆、大好きな仲間達なんだ!
イバヤちゃん達がフルフルッと薔薇を揺らす。
鳳蝶丸も優しい表情で私を見ていた。
「シャパン、よゆ、ちえい、見て」
「暗くなってから[サパン ドゥ ディヴェール(クリスマスツリー)]が綺麗になる。時間があるなら見物して行ってくれ」
「ぜひ、そうさせていただきます」
王様は夜までいてくれるらしい。
嬉しくなってピョンピョン跳ね(屈伸運動)たら、王妃様達に囲まれた。
「可愛らしいわ」
「動物かしら?子が着ると可愛いのね」
遊戯小屋の景品だと教えると、王妃様達が王様に体を向ける。
さあ、陛下。参りますわよ。
次に子が生まれた時はあのお洋服を着せますわ。
ぜひお取りくださいまし。
「ハハハ、わかったよ。では早速見に行ってみようか」
引きずられるように連れていかれる王様。
わあ、モッテモテだね!景品、頑張ってね!
「あ、モッタ、だんちょ!」
「ゆき殿」
モッカ団長は最初王様の側にいたらしいんだけれど、妃と過ごすゆえ遠慮せよと言われ身を引いたところらしい。
「陛下にお気遣いいただきました」
ちょっぴり苦笑いをしている。
「何か食べないのか?」
「もちろん購入しますよ。微かにカレーの香りがしたので探しておりました」
ミールナイトの屋台と違ってお店で焼いたり揚げたりしていないため、あまり匂いが漂わない。
シチューはコンロにかけているから香るけれどね。
「カレーはない。それはカレーパンだな。かなり美味いぞ」
「あちよ」
あっちのお店がカレーパン屋さんだよ。
「カレーパン…。魅惑的な名ですね。早速購入しましょう」
「ゆち、食べたい」
「お嬢も食べるか?」
「では私が」
こたつテーブルを確保していると、モッカ団長が大量のカレーパンを買って来る。
「飲み物も購入して参ります」
「俺達の分はいい。旦那の分だけ買ってくれ」
「わかりました」
テーブルいっぱいのカレーパン。
モッカ団長が飲み物を買って戻ってくる。ホットレモネードにしたんだって。
「本当はお酒にしたかったんですが、流石に自重しました」
でも三日間のうち、プライベートで来ます。
その時はお酒をいただきますよ!と張り切っている。
「俺は塩唐揚げと熱燗だな。鶏もも焼き、だし巻き卵でもいい」
「そ、その組み合わせ、覚えておきます」
ゴクリとのどを鳴らすモッカ団長。
プライベートで来た時は、色々試してみますと満面の笑みを浮かべた。
まあ、今はカレーパンですね!
早速ビーフカレーパンに齧り付く。
「うん、とてもとても美味しいです。カレーライスも好きですが、カレーパンも最高ですね。ホットレモネードも合いますし。これにして良かった」
じっくりゆっくり味わいつつ、あっと言う間に一個を食べきる。
「はあ、幸せです。ゆき殿もカレーパンをどうぞ」
「あにあと!」
じゃあ、私もいただくね!
カレーパンに手を伸ばすと、鳳蝶丸に止められてしまう。
「中は熱いし、齧りついたらムニッと出るぞ」
パンを小さくちぎり、ポークカレーをタップリつけて口の中に運んでくれた。
でも私は大きなカレーパンが持ちたい!
【幼児の気持ち】に抗えず手を伸ばすと、ストローマグを持たされた。
「お嬢はこれな」
「ちあうぅ」
「美味いぞ」
ストローが口元に来たので、条件反射でチューッと吸う。
私が以前再構築した、めっちゃ美味しいリンゴジュースだった。
「おいちい」
「そうだろう?」
すぐにカレーパンが口に入る。
モグモグして飲み込み大きなパンへ手を伸ばすと、またちぎったカレーパン。モグモグしてまた手を伸ばすとリンゴジュース。
クッ…。カレーパンを掴みたくなるタイミングに、鳳蝶丸から食べさせられる…。
まるで蓋ができないわんこそば!
「タエー、パンンンー」
ふえふえと泣き出す私。
「そうか、そうか。カレーパンな。大きなの食べられるか?」
「んんんー。あえ?」
あれ?
カレーパンを半分食べたところでもうお腹いっぱい。
全部欲しいとは思わなくなる。
「いなない」
「ごちそうさまな」
「あい。どちしょう、しゃま、でちた」
私の残りを食べる鳳蝶丸。
モッカ団長は、そんな私達を優しい笑顔で見つめていた。
「ああ、なんと愛らしいのでしょう。私も早く身を固めないと」
「自分の子は可愛いと聞くぞ。お嬢は格別だがな」
「フフフ。従者などではなく本当に家族なんですねえ」
「あいっ。鳳蝶まゆ、みんにゃ、大しゅち!」
鳳蝶丸も皆も大好きな家族です!
自慢げにフンスフンス!していたら、鳳蝶丸に抱きしめられた。
ミスティルが瞬時に飛んで来たのかと思ったくらい、頬をスリスリされる。
鳳蝶丸にギュッと抱きしめられて嬉しいな。
ほっぺがムニッてなって、お口タコさんだけれどとっても幸せ♪
鳳蝶丸とじゃれあっているうちに薄暗くなって来た。
「冷えるからコートに替えよう」
「うんっ」
モッカ団長はまだ食べ歩きをすると言うことだったので、私達は一旦テントに戻り洋服のお着替えをすることにする。
鳳蝶丸チョイス&私の希望で、白い毛糸のセーターとピンク色の裏起毛モコモコタイツ、裏起毛モコモコうさぎさんブーツ。毛糸のうさぎさん帽、サンタさん風コート。
寒くないようにと全体的にモッコモコです。
すっごく歩きにくいので、ヨチヨチ、テチテチが加速しております。
「大分暗くなったな。ランタンをつけよう」
「あいあいっ」
マジックバッグに見せかけたモコモコ白うさちゃんバッグから大量のランタンを出し、浮遊(変動)をかける。鳳蝶丸操作で光が灯り、フワリと浮かび上がった。
おおっ、まあっ、凄い!と歓声が上がる。初めて見る人はびっくりするよね。
僕のランタンも浮かびますか?お母様!と、どこかから子供の声が聞こえる。
ごめんね。浮かばないよ。
特に混乱もなく19時となった。
チラシに『19時ソルスティス ディヴェール(クリスマス)特別イベント[サパン ドゥ ディヴェール(クリスマスツリー)点灯式]』と書いたからか、ほとんどの人がツリーの近くに集まっている。
ミスティル達や他の皆さんも屋台を一旦閉めて、広場に集まっていた。
「これから暗くなる」
「暗闇の中で動くと危険だぜ!皆その場にいてくれ」
ミルニルと氷華の解説のあと、会場が暗くなる。
鳳蝶丸がタブレットを操作すると、点灯イベントが始まった。
昨日と演出は同じだけれど、音楽が違う!
前回は壮大な感じの音楽で、今日は明るく楽しい感じの曲に変わっていた。
「昨日の曲は、お嬢のためだけに作った特別メドレーというヤツだ。ミスティルがお嬢のために、演奏と録音をしていたぞ」
今日のも素敵だけれど、昨日の選曲は忘れられないくらい感動したよ。
ありがとう、ミスティル。それに飾りつけをしてくれた皆も。
音楽とイルミネーションを初めて見る人々は目を潤ませてツリーを眺めていた。
音楽が終わると、ツリーにもオブジェにも光が灯る。
キラキラと輝くソルスティスマルシェ会場。
音楽と演出全てが終わると、一斉に拍手が起こった。
「生きているうちに、こんな素晴らしい景色が見られるとは。ゆき様には深く感謝いたします」
「美しい…言葉になりませんわ」
「美味しくて、楽しくて、美しくて、素晴らしい。ありがとう存じます!」
王様、王妃様、王子様達が私にお辞儀をする。
「たのち、たた?」
「ええ、とても」
楽しかった?と聞いたらとても楽しかったと言う。
私はその言葉にとても満足した。
「あちた、一般、とーたい」
「ここだけの話ですが、楽しみ足りないのでお忍びで参ります」
明日からは一般公開だよ、と言うと、お忍び宣言をする王様。
う、うん。私達は拒まないから、お城の人に許されたら遊びに来てね!
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これからもどうぞよろしくお願いします。




