密着取材
◇
夏休みも終わり、ルーフェリア魔導女学院へと通う日々が始まった。
夏休み明けは早々に実力テスト!
魔導学の実技試験はできる魔法とできない魔法の差が激しかったけど、何もできなかったころと比べるとずいぶん高い点数を取れるようになった。
特に、配点が大きい水魔法ができるようになったのがデカイわ(アクァークのおかげね!)。
水魔法の実技だけは学年トップの成績で、周囲からの見る目が変わったのを感じるわ。
身体能力強化魔法の成績アップも評価が高かった(こちらはノギンメイデスのおかげ)。
大規模戦闘では個人個人の戦闘力を強化することは戦闘の効率を大きくあげるため、高く評価されているの。
オナラ魔法は……知らないわ。
なんのことかしら?
(ヒヅキちゃんは『オナラ魔法は大きく括れば風魔法に分類されるわ。風魔法の実技で使ってみれば? ……プクッ!』と教えてくれた。断じて使ってなるものか!)
座学では言語学のテストが、ヤハナクレムの『多言語理解』でラク~にほぼ満点を取れてしまった。スキルで点数取れちゃうのってものすごい背徳感だけど、クセになっちゃう♥️
言語学に費やさなければならなかった勉強時間をほかの科目の勉強に充てることもできた。
ノハナは座学の成績で学年トップだったし、メルサは総合戦闘力と体力測定でいつもと変わらず好成績をおさめた。
リコは、家庭魔法科の料理部門でダントツだったわ!
私たちは各々自分なりに自分の成績に満足し、帰りの足取りも軽い。
校門に向かって、4人で仲良く校庭を歩いていく。何気ない日常のワンシーンがどうしようもなく愛しくて、かけがえのない宝物だ。
ひとしきり試験の反省を終えたのち、メルサがふと思いついたように声をかけてきた。
「そういえばサヤ、最近は王城にけっこう出入りしてるんだって?」
「あ、うん。そーだよ」
「はや! スゴい、さすがはサヤちゃん!」
「王城の出入りが許可されるのは、とても名誉なことなのデス!」
メルサの言うとおり、最近では時間に余裕のあるときは王城に寄るようにしていた。
(認めたくはないけれども)プリンケッツのおかげで、王国とヴァルムンクとで交流が始まりつつあった。
関係を深めていくなかで、相互に言語を理解することはやっぱり必要不可欠。互いの言語を理解するための辞書を急ピッチで作成する必要があった。
そうしたなかで、言語の神・ヤハナクレムの力を借りられることは大助かりだった。
王国の外交官や文部審議官がヤハナクレムに質問をして、答えを書きこむだけでドンドン辞書の作成が進んでいく。
これには女王さまも大変喜んでくれたみたい!
長年争いあってきた仇敵が味方になるんだもの。せっかくできた友好の足がかりを、無くしたくないものね。
たまたまの結果であるとはいえ、ヴァルムンクと友好関係を結ぶきっかけとなったことが自分でも誇らしい。
「それじゃ私、今日も王城に寄っていくね。また明日!」
「ミュウ~」
「おぅ、じゃあな! ネネミュウも!」
「サヤちゃん、バイバ~イ♪」
「また明日、なのデス!」
私はみんなにお別れを告げると、足早に迎えの馬車に乗り、王城へと向かってもらった。
テストが終わって、また辞書作りの作業を手伝う約束になってるからね!
(どうやってウゴウゴウガウガで会話になってるのか、いまだによく分からないケド)
◇◇◇
「うわ、真っ暗!」
王城の玄関から外に出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
夢中になって辞書作りを手伝っていたら遅くなってしまったわ。
私はヤハナクレムを召喚してるだけだけど、辞書作りの現場に立ち会うのは意外と楽しい。
言葉の思わぬ由来を知ったり、聞いたこともない単語を学んだり……。魔法力をアップさせるのに欠かせないステータス、『知性』が向上していくのを感じるわ。
それに、召喚獣を召喚した状態を維持するのは、それだけで『召喚』スキルを鍛える非常によいトレーニングになるって、ヒヅキちゃんは言ってた。
(ネネミュウはこちらがお願いしなくても、勝手にずっといるけどね)
これは、スーパーサ○ヤ人でいることを当たり前の状態にする訓練に通ずるところがあると思う。やっぱ孫○空って偉大だわぁ。
「エッホ、エッホ」
私は走って城門を出て、城下町のなかへと入っていく。迎えの馬車のなかで、爺やが待ってるからね。
遅くなったからといって爺やが心配したり、イラついたりするということはないけれど、せっかく待ってくれてるのだから急ぐというのが礼儀というもの。
エルローズ家に忠誠を誓ってくれてる執事さんたちにも礼儀を払うというのが一流の貴族というものだわ、フフン♪
走りながらそんな風にひとりで悦に入ってたら、突然通りがかりの女性に声をかけられた。
ひとりでフフンしてたからめっちゃ恥ずかしい。
「あなたがサヤ=エルローズさんね? お待ちしてましたわ!」
「えっ!? どちらさま!!?」
恥ずかしさを紛らわそうとつい声が大きくなってしまった。
いけないいけない、冷静にならないと。
私は走っていた足をとめ、背筋を伸ばした。
「ええと、どちらさまでしょうか?」
「私の名前はプレティ=チューパー。国営新聞『クレシェンド』の記者をしてるわ。よろしくね!」
「え? 新聞記者さんが、いったい私になんの用ですか?」
「もちろん、用はアリアリよ! あなたは国民的英雄・ファスマ=エルローズ氏の妹。最近メキメキと実力をつけて頭角を表し、先日の大型モンスター討伐で瞬く間にISRR・Cランクに昇格。今は王国じゅうの人々が、あなたの動向に注目しているわ!」
大型モンスター……ワイバーンキングのことね。
ヴァーナさんの手助けがあったとはいえ、Aランクのモンスターを仕留めたのはかなりのインパクトがあったみたい。
最速でDランクからCランクへと昇格してしまったわ。ちょっと目立ちすぎちゃったかしら、オホホホ。
「そんなぁ、たまたまですよ~」
「たまたまで倒せるほどAランクモンスターは甘くないわね。並みの冒険者では剣で傷ひとつ付けられないことも珍しくないわ」
「そういうものかしら……。それで、私に用って何でしょう?」
「フフッ、それが本題ね。ズバリ、あなたに密着取材させてほしいの!」
「えっ! 密着取材??」
「そう、密着取材よ! 国民のニュー・ヒロインであるあなたの活躍を、徹底的に取材させてほしいの!」
「えぇ~!!」
密着取材って……。あの、片時も離れずに記者が付きそって、タレントさんの素顔や内面をドキュメントするってヤツ?
タレントさんだなんて照れるなぁ、エヘヘ。
でも、この人に24時間密着されちゃうってこと?
私はそれとなく、チューパーさんの容姿を頭のてっぺんから爪先まで観察してみた。
体のラインがクッキリと浮きでる薄手のシャツ。胸元は大きくひらき、豊満な胸の谷間を惜しげもなく晒している。
タイトなミニスカートからはスラリと長い脚が伸び、丈の高いハイヒールが美しい脚のラインを際立たせているわ。
優雅にウェーブのかかった金髪に、華やかなお顔つき。
そして何より、蕾のようにポッテリとふくらむ、瑞々しい口唇!
「うぅむ!」
私は思わずオジサンみたいなうなり声をあげてしまった。
なんとセクシー。はっきり言って、エロい。リアル峰不○子……?
大人の魅力たっぷりな彼女。こんな人と24時間いっしょにいて、新たな自分の一面に目覚めてしまわないかとっても心配。
「それじゃあ、具体的な取材開始の日にちが決まったらまた連絡するわね♪」
「えっ。私はまだ取材を受けると決めたわけじゃ……」
「お・願・い・ね? フッ」
「はわわわ……!」
彼女はグッと顔を近づけてきて、耳元に息を吹きかけられると、思わず私は腰くだけになってしまった。
なんとも悩ましげな、息混じりの声。もし私が男の人で、耳元でこんな声で囁かれたりしたら、マグマが噴火しちゃうわ!!
「それじゃまたね? 若きニュー・ヒロインさん」
「は、はいぃ……」
彼女は手を振ってウインクすると、カツカツとハイヒールを鳴らして去っていってしまった。
いったい今度は、どんなことになってしまうと言うのかしら……。




