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夢見る蛇の都 その23

 「「黄金の種子」はあげるわ!!その代わり、わたしとシュナンの事は、ほっといてっ!!」


全身を震わせて叫ぶ、メデューサ。

そんな彼女の様子を、周りに立つシュナン少年や、他の旅の仲間たちは、困惑と悲しみの表情で、見つめています。

しかし、一方の当事者である、魔術師レプカールが操る、巨大なロボット魔神兵はといえば、メデューサの言葉や態度に、一切動じる様子は無く、高い土台に支えられた、ラピータ宮殿の門前に広がる、石造りのスペースの上で、シュナン一行と対峙しており、その巨体は彼らの前に、威圧するみたいにそびえ立っています。

そして、そんな魔神兵の頭部内で、多数の計器に囲まれつつ操縦席に座る、魔術師レプカールは、そこに据えられたモニター越しに、眼下の床上に立つメデューサらの姿を、冷徹な目で見下ろしており、その顔には余裕の表情を浮かべています。

更に彼は、魔神兵内部の操縦席から、ロボットの巨体に外付けにされた、音声装置を操作して、眼下のメデューサに向かって、声を発します。


「そうはいかん。我らの目的は、お前を通じて、「夢幻宮」内のメデューサ族の秘宝を、全て手に入れる事だからな。それを使って、世界を制覇する為にー。「黄金の種子」が出来るのは、人々を飢えから、完全に救う事だけだ。まぁ、それも、ちょっと怪しいものだと、わしは思うがな。そう簡単に行くとは思えん。とにかくお前には、これからずっと、わしらの為に、働いてもらうことになる。宝を手に入れる、鍵としての、役割を果たすのだー」


メデューサは、レプカールのその言葉を聞いて、更に怒りをつのらせます。


「誰が、あんたらの為に、働いたりするもんですかー。シュナンをさんざん苦しめて、利用してきた、あんたらなんかにー」


メデューサの怒りと共に、彼女の生きた蛇でできた髪が、ゾワリと逆立ちます。

しかし魔術師レプカールは、メデューサのその姿を、魔神兵の内部から、モニターを通じて見ると、口角を歪めてほくそ笑みます。


「石化の魔眼を使う気か、メデューサ。無駄だ、やめておけ。お前の魔眼が直接、肉眼で見なければ発動しない事は、実証済みだ。言の葉の杖を使って、お前を見ていたシュナンが、石にはならなかったようにな。わしも、魔神兵のモニター越しに、お前を見ている。お前の魔眼は、通用せんぞ」


発声器から聞こえる、レプカールのくぐもった声は、もちろん、メデューサの耳にも届いていましたが、彼女は、そんな事にはお構いなしに、目の前にそびえる魔神兵の巨体を、赤い目でにらみ上げています。

しかし、そんな彼女に対して、ペガサスの少女レダが、背後から声をかけます。


「そこまでよ、メデューサ。ここは、わたしとボボンゴに任せなさい」


レダに声をかけられ、魔神兵を睨み上げるのを、思わずやめるメデューサ。

肩越しに後ろを振り返ると、背後に立つレダの顔を、うなだれた蛇の髪の隙間から、訝しげに見つめます。


「レダ・・・」


すると、何を思ったか、レダは、メデューサの首根っこを、片手で引っ掴み、その小さな身体を、グイッと後ろに引くと、まるで振り回すようにして、側にいるシュナン少年の胸の中へと、ギュッと押し付けます。

バランスを崩して、シュナンの胸にしがみつく、メデューサ。

メデューサを、腕の中に抱きしめた形になった、シュナン少年は、戸惑いの表情で、レダの方を見つめます。


「レダ、どうしてー」


レダは、そんなシュナンを、涼しい顔で見返すと、肩をすくめて言いました。


「あんな奴らでも、一応、人間なんだから、メデューサに殺させちゃダメよ。きっと、心の傷になるわ。シュナンも師匠を殺すなんて、本当は嫌だろうし、ここは異種族である、わたしとボボンゴに任せて」


巨人ボボンゴも、メデューサを抱きしめているシュナン少年の肩に、自分の大きな手を載せると、いつも通りの、どもった声で言いました。


「シュナン、下がってろ。そしてメデューサ、守れ」


ボボンゴはそう言うと、シュナンとメデューサをかばうように前に出て、緑色の大きな身体を波打つように揺らしながら、正面にそびえ立つ魔神兵の巨体に向かって、ゆっくりと近づいていきます。

ペガサスの少女レダも剣の柄に手をやりながら、赤毛のポニーテールを風になびかせ、ボボンゴの後に続きます。

一方、片手に杖を持ったまま、メデューサを腕の中で抱きかかえるシャナン少年は、自分の代わりに魔神兵と戦うために、前に進み出た、二人の仲間の背中を、戸惑い混じりの視線で見送ります。

そんな彼に対して、手に持つ師匠の杖が、声を発して忠告します。


「ここは、レダの言う通りにしよう。とりあえず二人に、戦いを任せるのだ。あの二人なら、勝てるかもしれんしな。それにシュナン、お前は視力が回復してから間もない。目が見える状態に慣れるまで、無理はするな」


師匠の杖の助言を聞いたシュナンは、どうするか迷っているみたいでしたが、やがてメデューサを抱きしめたままの姿勢で前を向き、自分の代わりに戦いに臨まんとする、二人の仲間の背中に声をかけます。


「ありがとう・・・レダ・・・ボボンゴ。本当に・・・。君たちは、最高の友達だ」


思わず、感謝の言葉をつぶやく、シュナン少年。

しかし、そんな彼に対し、赤髪の少女レダは、後ろを振り返りもせず、片手を肩口のあたりで、ひらひらと振ると、ボボンゴと共に、魔神兵の方へと、さっさと歩みを進めます。


「ふーん、「友達」ねぇ。はい、はい、よ~く、わかりましたー」


そのレダの、そっけない態度を、少し変に思ったシュナン少年は、メデューサの小さな身体を、胸にかき抱きながら、不思議そうに首をひねります。


「レダ・・・?」


そんなシュナン少年に対して、メデューサは、彼の腕の中で、ボソリとつぶやきます。


「シュナンの馬鹿・・・鈍感」


レダの不機嫌な様子に、ちょっと不安を覚えながらも、シュナン少年は、メデューサを抱きかかえて護りながら、後方に下がり、前方で魔神兵と向き合う、レダとボボンゴの姿を、じっと見つめます。

そんなシュナン少年の元に、少し離れた場所から、吟遊詩人デイスが、駆け寄って来ました。

その手の中に、「黄金の種子」の入った麻袋を、抱えています。

彼は、メデューサが魔神兵の顔に投げつけた、「黄金の種子」の詰まった麻袋が、宮殿前の地面に転がったのを見ると、すぐさまそれを拾い上げ、両手で大事に持っていたのです。

吟遊詩人デイスは、シュナンの腕の中に守られたメデューサの方に近づくと、彼女にそっと、手に持つ、「黄金の種子」が詰まった麻袋を、差し出します。

それから、彼にしては珍しい、諭すような口調で、メデューサに声をかけます。


「一時の感情に、囚われてはいけませんぜ、メデューサさん。この種子を手に入れるために、今まで、みんなが、どんなに歯を食いしばって、苦労したかを、忘れちゃ駄目ですぜ」


デイスの言葉を聞いたメデューサは、「黄金の種子」の詰まった麻袋を、彼から受け取ると、シュナンの腕の中で恥ずかしそうにうなずき、蛇の髪で覆われたその顔を、静かに垂れました。

一方、彼ら三人をかばうように、ラピータ宮殿の門前からは少し離れた場所で、魔神兵と対峙するレダとボボンゴは、いよいよ目の前にそびえ立つ、巨大な機械仕掛けの怪物に、戦いを挑もうとしていました。

魔神兵の前に並び立ち、互いに目配せする、レダとボボンゴ。

歴戦の勇士である二人は、目の前にそびえ立つ敵が、容易ならざる相手である事は、もちろん判っていました。


「やっぱり、最後は、こうなったわね、ボボンゴ。もし無事に、故郷に帰れたら、今度は、もっと仲良くしましょうね」


レダはそう言うと、隣に立つボボンゴに、軽くウインクをします。


「承知した、レダ。おまえと、旅できて、良かった」


レダの言葉にうなずき、その顔に不敵な笑みを浮かべる、巨人ボボンゴ。

シュナンとメデューサの、剣と盾である彼らは、何としても、この難敵を、二人で協力して、倒すつもりでいました。

そして、そんな二人と、ラピータ宮殿を支える高い土台の上で対峙する、魔神兵を操縦するレプカールは、モニター越しに、彼らを見下ろしながら、余裕の表情で笑います。


「ペガサス族の剣士に、巨人族の長か。まぁ、肩慣らしには、ちょうど、良いかもしれんな。シュナンや言の葉の杖に、あまり手の内は、見せたくないのだが、仕方あるまい」


ラピータ宮殿を支える高い土台の上で、魔術師レプカールが操縦する魔神兵と向かい合う、レダとボボンゴ。

レダはペガサスの剣を抜き放ち、ボボンゴは肩をいからせて身構えており、それぞれ臨戦態勢を整えて、レプカールの乗る巨大な魔神兵と、対峙しています。

そして、そんな仲間たちの戦いに挑む姿を、シュナンにメデューサ、そして吟遊詩人デイスは、少し離れたラピータ宮殿の出入り口に近い場所から、固唾を呑んで見守っていました。

また、ラピータ宮殿の周囲に広がる、深い堀の中にひしめく、ペルセウス王率いる西の都の軍勢も、宮殿を支える高い土台をぐるりと包囲しながら、一斉に上を見上げ、今にも両者が激突しようとしている、宮殿前の様子を、全員で注視していました。

こうして、天上の神々をも捲きこむ事となる、ラピータ宮殿前の長く激しい戦いは、衆人環視の中、まずはレプカールが操る魔神兵に対して、ペガサスの少女レダと、巨人ボボンゴのコンビが挑みかかる形で、その幕を開けたのでした。


[続く]

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