先が見えない旅II
目的地に到着した頃には、昼を大幅に過ぎていた。彼女はあまり食欲が無さそうであったが、こういう時こそ腹ごしらえしないとダメだと思い近くのうどん屋さんに入ることにした。
食欲が無くても麺類であれば食べられるんじゃないかと考えたからだ。
駅の北口を降りると目の前にはゾウのはな子像があり、信号を渡ると商店街が広がっていた。真っ直ぐ進んでいくと甘味処とお食事が楽しめるお店があった。そこでうどんを2杯頼むことにした。うどんは、醤油ベースの出汁に鶏とネギが乗ったものであった。いつもは食べないような味わいだった。
お店自体は小田原がよくスイーツを食べに寄っていたらしく、迷うことなく辿り着いた。
この街を通ると施設までは遠回りになるのだが、思い出の街ということもあり、一目見たかったのだという。俺はもう少し街を見て回って明日向かうのでも良いのではないかと提案したが、彼女は決意が揺らいでしまうからとすぐに向かうことにした。
しかし、1件だけどうしても寄りたいとのことで、歩いて15分位先にある文房具店に立ち寄ることにした。隣にはホテルがあり目立たない建物であった。小さめのビルの2階にそのお店はあった。店内もとても小さく、入口から入り、右側にレジがあり、右側の真ん中に棚とテーブルが置いてあり、丁度人1人通れるくらいの広さで店内を1周できるようになっていた。
商品は可愛らしい文房具がメインであった。昔懐かしいような文房具であったり、見たことのない絵柄が入ったメモ帳、ハンコ等が置いてあった。他にも腕時計やポーチ、鞄など小さなお店に所狭しと文房具がディスプレイしていた。
小田原は店内をさらっと見て、本のしおりを買うようだった。銀色のやわらかい鉄のような物できており、細長く、先に眼鏡のマークがついているものだった。彼女は文芸部だけあって、普段からよく小説を読んでおり新しいしおりが欲しいと話していたことを思い出した。お店には長居はせず、購入後、すぐにお店を出た。
お父さんが入っている施設はここからまた電車に乗り、1時間程度の場所にあるらしくまた電車を乗り継いで目的地へと足を進めた。
道中、特に会話はしなかった。お互い何を話していいか分からなかったし、目的地が近づくにつれ緊張していた。
お互い緊張をほぐす為か本を読んでいた。彼女は時折メガネの形のしおりを本に挟み、景色を眺めていた。
電車が進むにつれ、ビルが所狭しと建てられているコンクリート作りの景色から、木が生い茂るいつも見ている風景に変わっていった。
時には野生動物の姿も見えた。普段何も感じないが、とても懐かしい気持ちになった。少しホームシックになっていたのかもしれない。
「着いたね。降りよっか。」
気付くと電車の動きは止まっていた。席に座っていた人達も気付けば荷下ろしを始めていた。
「そうだね。」
俺は自分のボストンバックと彼女のキャリーバックを順番に荷台から降ろした。
「ありがとう。」
俺たちは先を急ぐ人達を見送り、ゆっくりと電車から降りた。




