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63.ひたすら狩る

『良かったのですか?

 あの方達にアイテムを全て渡してしまって』


 パーティメンバー用の音声通信越しに市松から問いかけ。


「十時の方向。

 三体追加!」

『十時ってどっちだ!?』

『右よ!』

「ごめん、左」


 そう言った方が雰囲気出るかなって。

 とりあえず三体落とすよ。

 頑張って仕留めて。


「で、アイテムの話だっけ」


 前線が混乱してるっぽいけどまだ平気だろう。


『ええ、そうですが……』

『この状況で! 普通に会話を進めないで!』

「じゃ、そいつら倒して休憩にしよっか」


 零七組のクランホームを出て森へ入りそろそろ二時間。休むには丁度良い頃合い。


 ◆


「ほい。今日はミルクティー。

 シロはミルク」


 全員へティーカップを渡してから、私の横にミルクの入った皿を置く。


「よし」


 うんうん。

 待てを言わなくても待てる様になってきた。

 偉いぞ。


 頭をわしゃわしゃとすると、飲むのを邪魔されたと思ったのか露骨に首を振って嫌がるシロ。

 悲しい。


「では、説明します」

「はい」

「まずレンナさん達零七組。

 彼女達の狙いは私達にとってはあまり好ましくないと思ったわけ」

「それは?」

「彼女達は賞金首を倒そうとするプレイヤーを支援する事で利益を上げようとしている。

 これは多分本当だと思う」

「なら味方じゃないか」

「厳密には違う。

 彼女達からすれば、突出したプレイヤーが存在するのは好ましくないわけ。

 極論、私達は零七組の敵対組織だね」

「どうして?

 最前線を走るプレイヤーはそれだけ落とすお金も多いと思うわ」

「市場規模って言ったらいいかな。

 需要の問題。

 他より強く、先に。その為には投資が必要。

 肝心なのは、投資をすれば届く。そう思える層をいかに厚くするか。

 彼女達にとって最も都合の良い状況は全員が横並びでこぞってそこから抜け出そうとしている場面。

 先頭が見えるからこそ財布の紐は緩くなるだろうから。

 その為に、いまキノエネ辺りにいるプレイヤーに廉価で武器をばら撒くよ。きっと。

 私達が渡す素材を使って」

「そう思うのでしたら、どうしてあの方達との取引に応じたのですか?」

「私達にとってもメリットがあるから。

 ここで悠長に一つのクエストにつきっきりになっている場合じゃない。

 だから、彼女達と取引をする事で生じるデメリットは必要経費と割り切るべき。

 そう思ったの」

「あー……ひょっとして、アタシが悪いか」

「おお! 良くそこに気付いた。偉い!

 ただ、そのお陰で零七組と交流を持てたから結果オーライ。

 でも、彼女達の思惑通りに動くつもりはさらさらない。

 だから、ちょっとギアを上げてこの依頼を速攻で終わらせるよ!」

「だから素材を全部渡したの?」

「そ。

 私達は貴方達に惜しみない協力をしている。だから、そっちも相応の結果を見せろ。

 そう言うプレッシャーをかけたつもり」


 上手く行かないかもしれない。

 でも、ま、その時はその時。


 私達には余裕がある。

 ここでこのゲームを降りても良いと思えるだけの余裕が。

 一生遊んで、と言うわけにはいかないけれど、学生の身分にしては信じがたい程の大金が。

 だから、精神的に優位に立てるのだ。

 誰に対しても。


 その日、高濃縮魔力の実を30個。魔力の実を1,200個入手する。

 翌日、私達は魔力の実が生る樹木の生えるポイントを見つけ、高濃縮魔力の実300個相当の素材を手に入れた。


 ◆


 〈とかげ座のステリオが撃破されました〉

 〈懸賞金4000万は24人が入手しました〉


 ◆


 タイガーエイプを狩り始め四日目。

 昨日見つけたポイントの近辺で狩りを続ける。

 この作業が、今日終わることを願い……。





『ヨシノ、足らないぞ!』

「待って。十二時方向……五。落とすよ! 向かって」

『りょーかい!』

『行きます』

「クロちゃん、三時方向追加二。

 シロとそっちへ」

『わかったわ』

『ワン!』


 私は視認したタイガーエイプへ銃口を向け、樹上から地に落としていく。

 下で待ち構えるのは、獰猛な狩人共。

 迫る敵を全て叩き落とし、銃に魔力を込めならが新手を警戒。


「転送陣、起動、陰、並びに承接、陽」


 魔法陣を足元へ起動させ、奥の木へと自身を移動させる。


『……レア1! ノーマル7』


 クロちゃんからの報告。


『こちらはレアが2。ノーマル16ですわ』


 ……という事は……。


「……終わった……?」

『ええ! 終わったわ!!』

『おお! やっとかぁ!』

『やりましたわ!!』

「おわった!!」


 まるまる三日間、森の中でタイガーエイプを狩り続け、なんとか千の高濃縮魔力の実を用意するだけの素材が揃ったのだ。


「よっし! 帰ろう! 超特急で!!」


 いやー、思ったより早く終わった。

 みんなテンション高かったもんな。


 ◆


 急ぎカノエトラへと戻った私達はその足で零七組のクランホームへ。


「こんにちは!」

「いらっしゃい。昨日預かった魔力の実は合成終わったわよ」

「ありがとうございます!」

「リオネル、こっちへいらっしゃい」

「うん」


 レンナさんに呼ばれ、ホームの奥からNPCの少年がやって来る。


「高濃縮魔力の実、240個です」

「はーい」


 前回素材を買い取ってもらった代金をそのまま全部返す形で購入。


「それで、素材の追加ね?」

「はい! 1200個。これで、完了です!!」


 そう言いながら、仮想ウインドウにドロップアイテムを全て表示させる。

 それを見て、顔を引き攣らせるレンナさん。


「明日、引き取りに来ますので!」

「貴女、私を過労死させたいかしら?」

「まさかー」


 オークションには彼女たちが作ったであろう廉価な武器が出品され始めている。

 あまりのんびりしているとここへも直ぐに大量のプレイヤーが押し寄せるだろう。


 その前に、この依頼を終わらせ次の街へ向かう。

 私は密かにそういう計画を立てていた。

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