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61.銃器は邪道

 零七組のクランホーム。

 そこは倉庫というよりは、空っぽになった廃工場と言った感じか。

 広く殺風景な室内。壁紙も塗装もなくレンガがむき出しの壁。

 その壁際に雑多に置かれた工具や箱。

 奥には、比較的きれいな機械が置かれている。


 中心にポツンと置かれたローテーブルとソファと椅子。


「クランのメンバーが揃うのは、もう少し遅い時間なの。

 1階なら、好きに見ていいわ」


 と言われても見るべきところなんて無さそう。

 階段があり、二階部分にキャットウォーク状の通路がついている。


「上は何があるんですか?」

「メンバーのプライベートルーム。

 基本的にログインくらいにしか使わないけど」


 へー。個室か。要るかな?

 私と市松は工房の奥の機材を眺めに行く。


「生産職の集まりとのことですが、皆さん何をつくってますの?」

「バラバラね。私は錬金術士で主に消費アイテムを。

 他は、鍛冶、木工、裁縫、彫金」

「このアンティークミシンは裁縫用ですの?」

「ええ」

「美しいですわね」

「動いているところも美しいわよ。

 今度、見に来たらどう?」

「それは、是非、拝見させていただきたいですわ」

「じゃ、話しておくわ」


 そう言ってレンナさんはウインクをする。


「あ、一人来たわね」


 彼女が仮想ウインドウを開く。

 それと同時にガタンと扉を開く大きな音が倉庫内に反響する。

 それと同時に叫び声。


「レンナー!

 採掘行くぞ!

 ん……客か?」


 キャットウォークの上から私達を見下ろしていたのは、大きなハンマーを肩に担いだ……女の子。小学生くらい?


「騒がしいわね。行かないわよ?」

「いや、何がなんでも行くぞ。

 もう石がない」

「その前に下りてらっしゃいな。

 紹介するわ」

「おうとも」


 彼女はガンガンとキャットウォークを走り下りてくる。





「一緒にヒッペを倒したクロちゃんとその仲間たち」

「クロアゲハです」

「ヨシノです」

「市松と申します」

「カエデっす」

「俺は鍛冶屋のカシ・ユウって言うんだ」


 女の子が白い歯を見せ笑いながらそう名乗った直後、カエデがビクンと背筋を伸ばす。


「カシユウ…………カシュウ……加州……加州清光……ひよっとして刀鍛冶ですか!?」


 その名にカエデが反応する。


「アハハハ。気付くの早いな。由来はそこ。まあ、刀に限らず武器全般を取り扱うけど」

「おお! でしたら是非某に刀を打っていただきたく!」


 口調!

 おかしな事になってるよ!?


「うーん……まだ最前線で売り物になる刀を作れるほどスキルレベル上がってないけどさ。

 因みにどんな刀が欲しいんだい?」

「二尺八寸」

「和泉守兼定かな?」

「はい!!」


 何このシンパシー。気持ち悪っ。

 何でサイズを言っただけで名前を当てられるの? ドルオタ?


「よし! 任された!

 いずれは、名を天下に上げる刀を打って見せよう!」

「有難き幸せ!!」


 うわぁ。

 全然わからん。

 力強くグータッチを交わす二人に冷めた目線を送るが全然気付かれない悲しみ。


「他のみんなは何を使ってるんだ?」

「わたくしは、メイスを」

「おお!

 鈍器。いいよな。鈍器。

 殴る。

 単純な様でいて奥が深い。

 ほんの少しヘッドの重さが違うだけで振り心地もダメージも全然変わる。

 だけれど、やる事は相手を打ちのめすのみ。その単純にして明快な暴力が人を惹きつける。それは人が獣である証だろう。

 そっちは?」

「私は、小剣を」

「良いな。

 小剣。

 刺突に特化した剣技はまるで芸術だ。

 斬るための武器と違い、繊細に扱わなければ折れてしまう弱々しい刀身とは裏腹に放たれる一撃は必殺にして致命。

 儚さと美しさを兼ね備えた武器だ。

 お前は?」

「私は魔導小銃です!」

「チッ、銃かよ。

 維新軍め」


 何で私だけ舌打ち!?

 泣くよ?


「銃器は専門外」


 露骨にテンションが下がったな。


「一つお伺いしてもよろしいです?」

「なにかしら?」

「先程カシ・ユウさんは」

「ユウでいいぞ」

「……ユウさんはカエデさんに刀を作るとおっしゃいましたが、それはどうやって渡すのですか?

 オークションでは確実性がありませんわよね?」


 言われてみれば確かに。

 プレイヤー間の直接取引は出来ない筈。


「そうね。

 プレイヤー間の売買行為は禁止事項」


 私達は一斉に頷く。


「でもね、プレイヤーとNPC、NPCとプレイヤーの売買行為は可能なのよ」


 レンナさんの言葉に腕組みをしたユウさんが大きく頷く。

 だが、私達には彼女の言わんとしていることがわからない。


「一度、店に売るということですか?」

「それだと、買い手を指名する事は出来ないわ」


 レンナさんは首横に振って否定し、説明を続ける。


「店の前に男の子がいたでしょう?

 リオネルっていう子なんだけれど、あの子、クランで雇っているのよ」

「NPCを雇ってる?」

「そ。売り子としてね」

「そんな手があったのですね」

「金を持ち逃げされたりするけどな。

 あいつで三人目だ」


 なるほど。

 そういう方法があるのね。間接的にNPCを使う。

 けれどノーリスクではないという訳か。


「つまり、直接素材を買い取る事も出来るわけですね?」

「そうなるわ」

「貴女達の作ったアイテムを買い取る事も?」

「ええ。もちろん。何か欲しいものが?」

「MPポーションが欲しいです」

「残念在庫切れ。

 一昨日の火事、知ってるでしょう?」

「はい」

「あれで倉庫の素材が全部パー」

「どこのどいつの仕業か知らねーが、とんでもねー事をしてくれたもんだよ」


 ふむ。

 拠点という規模での破壊行為は他者の足を止めると言う点では絶大。

 だけれど、それで買う恨みはいかほどか。


「それじゃ……簡単な武器を一つ」

「なんだ?」

「ハリセン」

「使わないわよ!?」

「スリッパじゃ駄目かい?」

「何で的確な代用品!?」


 クロちゃん、ノリノリ。

 なんか、ごめん。

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