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50.シロのクラスチェンジ

「ショット!」


 放たれた光弾がアイアンラットを撃ち抜く。

 ラストアタックを奪われた形になった前線の三人から非難めいた視線を向けられた。解せぬ。


 〈レベルアップ〉

 〈召喚獣シロが白狼の心得を入手しました〉

 〈召喚獣シロのクラスチェンジが可能です〉


 よし!

 来た!


「シロ!」


 私は前線へ走りながらワンコを呼ぶ。


「ワン!」


 舌を出しながら走って来たワンコは、私の前でちょこんとおすわり。

 よしよし。

 しゃがんで頭を撫でる。


「どうした?」


 カエデ達も追いついて来た。


「クラスチェンジだよ!」


 三人を見上げながら、仮想ウインドウを開きシロのクラスチェンジ先を表示する。



 【銀狼】シルバーウルフ 召喚モンスター

 機動力に長け、戦闘や索敵など様々な場面で活躍する中型モンスター。

 ホワイトウルフより敏捷性に長けた個体。

 クラスチェンジ条件:

 白狼の心得



 【黒狼】ブラックファング 召喚モンスター

 機動力に長け、戦闘や索敵など様々な場面で活躍する中型モンスター。

 ホワイトウルフより獰猛性が増した個体。

 クラスチェンジ条件:

 白狼の心得



 ふむ。

 特殊は無しで二択か。


 姿も変わるのかな?

 シルバーウルフを選択。

 すると、目の前のシロの姿が一回り大きくなり、幼さが消え精悍な狼の顔へと変わる。凛々しい。

 その毛並みは、光を反射しキラキラと銀色に輝く。


 一度、キャンセル。


 次いでブラックファング。

 やはり一回り大きくなり、空いた口から覗く大きな牙が肉食獣であることを如実に表している。

 毛並みは真っ黒だ。


 再びキャンセル。


 どうしよう。


 目の前のシロを見つめながら考える。


「よし。止めた」

「「え!?」」


 カエデとクロちゃんが驚きの声を上げる。


「クラスチェンジしないの?」

「うん」


 別に必ずしなければいけない訳でもない。

 このままでも良いのだ。


「どうして?」

「だって、銀と黒だと、シロじゃなくなっちゃうし」

「そんな理由なの?」


 それに、なんか可愛くない。

 いや、可愛さを求める事自体間違っているのだろうけれど、既にシロはこのパーティにおいて癒し担当の地位を確立している。

 であるならば、強さを求めるのは違う召喚獣でも良いだろう。

 いつか、魔石を手に入れたその時で。


「色が銀でも黒でもシロはシロじゃない」

「シロは白いからシロなんだよ。

 黒くなったシロをシロって呼んでもなんか違うじゃん。

 そしたらクロって改名するけど、それだとクロちゃんと被るよ?」

「改名しなくても良いじゃない」

「まあまあ。

 飼い主がそう決めたんなら良いんじゃないか。

 な、シロ」


 カエデがシロを抱え上げ話しかける。


「まあ、進化済みの召喚獣を連れていたら目立つでしょうし、そういった意味でもこのままでも良いかもしれませんね」


 あ、そっか。

 そう言う懸念もあるね。


「とりあえず、クラスチェンジで姿形が変わる事がわかったから次はそれを見越した名前をつけるよ」


 当たり障りの無い名前を。

 犬ならポチとか。


 ◆


 ヒノトウシへ向かう途中、反対から走り来る集団とすれ違った。

 向こうはこちらの事など眼中にない様子だったけれど、先頭を走る男の顔に見覚えがあった。


 視力強化のお陰か、真っ先に気付いた私はクロちゃんと共にさりげなくカエデの背に隠れその一団をやり過ごす。


「……釣れたかな?」

「そのようね。

 でも、彼一人だったわね。

 もう解散したのかしら」


 先頭を走っていたのは以前クロちゃんと揉めていた短髪のリーダー。

 だけれどあの時いたもう一人、スキンヘッドの姿は無かった。


「何だい?

 ありゃ」

「私の元パーティメンバー。

 先頭を走ってた男は、あれでそれなりに強いわ。

 多分、カエデさんよりも」

「何!?」


 へー。

 剣を抜く仕草は全然そんな風には見えなかったけれど、ゲームに於ける強さってそれだけでは決まらないからなぁ。


「それは聞き捨てならないな」

「いや、聞き捨てなよ。

 単純な強さで言うなら、この中で私が一番だよ?」


 と、当然の言葉を口にしたのだけれど三人が言葉では言い表せない様な表情で私を睨む。


 ……あのさ、君らなんて私が本気になれば影を踏む事さえ出来ずに葬られるのだよ?

 遠距離から狙撃され、近付こうものならば強制的に転移させられ。


 ふう。

 これだから素人は困る。


「貴女の射撃なんて百発撃とうが全て私の盾が弾きますけれど?」

「百発撃たれようが、その都度回復してその背骨をへし折って差し上げますわ?」

「この刀に斬れぬものなどない。

 口惜しいのは、死人にはそれを喧伝する事が最早叶わぬ事か」


 三人から順に反論を頂戴する。

 ……私、とんでもない人達のリーダーになってるかもしれぬ。

 取り敢えず、みんな自分が最強だと疑わない事はよくわかった。

 この先最強議論は地雷だな。


 私が最強なのは動かしようがないのだけれど、それは私だけがわかってれば良い。


 四人それぞれに笑みを浮かべながらヒノトウシへとたどり着く。


 なお、ギスギスした四人を先導したのはシロ。

 流石の癒し担当。

 尻尾をフリフリさせる姿に絶対クラスチェンジなんてするものかと誓う。

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