47.現実感のない現実
ほっとんど眠れなかった。
だって、いきなり五千万も渡された訳だよ?
重いって。
普通に等分で良いじゃん。
訳わかんない。
何?
死ぬの?
てか、どうすれば良いの?
私が全部もらっても良いの?
でも、そんな事したらきっと気まずい。
だって、この先教室で顔を合わせる訳だし。
なんて事をグルグルグルグルと考え、寝たのは多分、明け方。
とりあえず、祝勝会だよね。
昼前に起きて、そう言う結論を出した。
「そう言う事だから!」
『はいはい。
じゃ、弓道場回って西七辻さんにも声かけておくよ』
「ありがたき!」
『いいんちょは?』
「あれ? 部活やってたっけ?」
『部活じゃなくて、生徒会だよ。
なんで学校には来てないかな?』
「じゃ、私から電話しておく。
集合は2時で良い?」
『あー……3時くらいの方が助かるな』
「じゃ、それで!」
『了解』
紅葉はOKっと。
西七辻さんは、彼女に任せるとして後は風雪さんね。
私は風雪学級委員長へ電話をかける。
この前誘って以来、二度目だな。
「もしもし?」
『そろそろ連絡あるんじゃないかと思ってました』
「へ?」
『あれ? ネット見てないのですか?』
「ネット?」
『大荒れですよ。
五千万をゲットした四人組の話』
「へー」
後で見ておこう。
「それより、風雪さん。
この後、時間あります?」
◆
仮想空間では連日行動を共にしていた四人が、改めて現実で顔を合わせる。
ほんの半月前まではただのクラスメイトでしかなかった、それも、あまり親しくはない四人。
「昨日はお疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
「なんか、変な感じだな」
「……それで、どこへ行くんです……か?」
「とりあえず、祝勝会です!
向こうで騒ぐのも良いけれど、せっかくなのでこっちで美味しい物でも食べましょう!」
だって!
それが出来るだけの大金をてにいれたのたから。
私達は年齢に似つかわしくない、ホテルのスイーツバイキングへと向かう。
支払いは全て私。
なぜならば、グアンナの賞金のほんの一部を現金化し持ってきたのだから。
ホテルのスイーツは超キラキラしてた。
写真を撮って撮って撮りまくったけれど、それをSNSに上げてしまうと違和感と怪しさが滲み出まくるので今日の事は四人だけの秘密。
そして、秘密ついでに私はすっかり満足した三人にこの先のことを相談する。
「……実は、クランを作りたいなと思ってます。
出来れば、この四人で。
どうかな?」
「クラン?」
「……部活みたいなものだよ」
「ふーん。
良いんじゃないか?」
うん。
君ならそう言うと思ってたよ。幼馴染。
「わたくしも良い考えだと思いますわ」
「ありがとう!」
お嬢様もゲット!
残るは一人。
「風雪さんは?」
「……目的は何ですか?」
「もちろん、アスクレピオス!」
それはRE:Uにおける、最高額の賞金首。
その額、五十億。
「その時は、例えどれだけ貢献できていなくても山分けを要求するかもしれませんよ?」
「むしろ、そうして欲しい!」
そんな大金、一人で抱えられないもの!
その百分の一で眠れぬ夜を過ごした身としてこれ以上の重圧は御免被るのである。
大金は欲しい。
だけれど、余計な心労を背負い込みたくはないのだ!
「わかりました。
この先、迷惑をかけると思いますけれど、よろしくお願いします」
「わーい!
じゃ、決まり!」
クランの結成。
「名前は決まってるのですか?」
「うん。
『ファスティ』はどうかな?」
暦を表すラテン語。
偶然にも名前に四季を持つ四人なのだ。
「良いんじゃないか?」
すぐさま同意する紅葉。
そろそろローストビーフのお代わりを取りに行きたくて仕方ないらしい。
なので、さっさと結論を出して欲しいのだろう。
「季節、ですか。
なるほど。
よろしいのではないでしょうか?」
「ええ。……ピッタリだと、思います」
「よし!
決まり!
ではこれからもよろしくお願いします!」
こうして、初めは偶然顔を合わせた四人が改めて大きな目標を掲げ一つとなる。
その先にある、栄光を目指し!
一部完




