46.懸賞金の分配
<ポーン>
<懸賞首グアンナの討伐に成功しました>
<メニューから報酬受取方法を選択して下さい>
システムアナウンスと共に、グアンナの体が粒子と化し消えていく。
「やった……やったー!!!」
私は両腕を突き上げ走り出す。
カエデとクロちゃんの元へ。
二人が同時に振り返り、その笑顔が一瞬で凍り付いた。
「おま、何だ? それ!」
「いや、ちょ、来ないで!」
「うるせー!」
構わず二人へ飛びついた。
おっぱい丸出しで、先端にモザイクが付いているくらい気にすんな!
「いや、おかしいでしょ!?
何で脱いでるのよ!」
「何だ? これ、モザイクが感染る!?」
「はっはー! 勝ったんだよ!」
嫌がる二人の首に両手を回し頬を寄せる。
「ヨシノさん。嬉しいのはわかりますが……」
市松が白いシーツを差し出す。
「ありがと!」
私はそれを受け取り雑に体に巻いて結ぶ。
「お前、ホント何してんだ?」
呆れ顔のカエデ。
私はその額を指差す。
頭に巻かれた黒い鉢巻。
「ん? これ?」
彼女が頭からそのアクセサリーを外し手に持つ。
「それ。これ」
と、そのアクセサリーを指差した後、自分の胸の前で手を横に動かしそこに巻かれていた事を伝える。
「え゛!?
これ、まさかそこに巻いてたやつ?」
「イエス!」
「え゛。じゃ、アタシ、ブラジャー巻いて戦ってた訳?」
「いや、鉢巻だけど」
何でそんな嫌そうな顔するんだよ。
てか、汚い物を持つみたいに摘むな。
「ぷっ」
クロちゃんが口元を抑え、吹き出した。
「ぷっくっくっくっくっ。頭に、ブラを巻いて……」
「何だよう。私の機転だぞ?
ショーツ被るよりマシだろう?」
「そりゃそうだけどさぁ?」
「うーん。
ヨシノさん、ずっとそのアクセサリーを装備してましたよね?」
「してたよ。
初めて外した」
「げー」
カエデが心底嫌そうな顔をしながら、顔の前まで持ち上げる。
いや、匂いとか無いからね?
「わたくし、以前試した時はアクセサリー装備だとここへ転移出来ませんでしたの」
「あー。そう言えば」
「どうしてでしょう?」
「はぁ……はぁ……使い方が、間違っているからじゃないかしら。
頭に巻く鉢巻をブラに、ぷっ……ふっふっうっ……いや、お腹痛い」
笑いすぎだろうよ……。
「使い方……。
アクセサリーって、推奨部位以外に装備すると効果が発揮されないのでしたよね?
そうしたら……それを利用すればもう少し早くクリア出来たかも知れませんね」
「どう言う事?」
「適正な箇所に装備しなければ、装備品として見なされない。
ならば、例えば鎧を頭に被るとかも大丈夫だったかも知れませんわ」
「ぷっ……鎧を……頭にっ……もう……無理っ」
「ま、まあ、そうだとしてもヨシノが瞬間移動を覚えたこのタイミングがベストだったんじゃねーかな。
市松は、よくいきなりであれが出来たな」
「私も驚いたよ」
「あれくらいは当然ですわ!」
「シロも、よく頑張りました」
「ワン!」
やっと一緒にボスを倒すことが出来たね。
ワンコを抱き上げ顔をすり寄せる。
「ヨシノさん。
そろそろ報酬を分けましょう」
「クロちゃん。お腹平気?」
「大分落ち着い……ぶふっ!」
澄ました顔をしてるので、体に巻いたシーツをバッと広げてみた。
それだけで崩れ落ちるクロちゃん。
「すごい破壊力」
「変質者かよ」
変質者だね。
カエデから鉢巻を返してもらい、胸へ巻く。
「いや、それに戻す意味がわからない」
「まあまあ。
流石に明日からは服を着るよう」
「……是非、そうして」
お腹を抑えながらクロちゃんが呟く。
私とは目を合わせようとしない……。
「んじゃ、お待ちかねの報酬!」
さっきから私の前に浮かんでいる仮想ウインドウ。
◆
グアンナ討伐 成功
懸賞金:50,000,000G
参加メンバー:4
懸賞金の分配方法を選択して下さい
>均等に分ける(12,500,000G)
>受取人を指名する(50,000,000G)
◆
「みんな、ウインドウ出てる?」
「おう」
「ええ」
「はい」
「じゃ、山分けで!」
私は迷いなく『均等に分ける』を選択する。
画面が、集計中と言う表示に切り替わり、そして、集計完了へと変わる。
「……えっ!?」
私は仮想ウインドウの表示を見て、思わず声を上げ三人の顔を順に見つめる。
仮想ウインドウに表示された集計結果。
受取人:ヨシノ(得票率75%)
私は均等を選んだ。
それで75%、四分の三の票が私に。
つまり、他の三人は私に分配を任せた訳だ。
シャリンという音と共に私の所持金が一気に増える。
ええっ!?
「何で?」
「私は、貢献度合によって得られる金額が変わって良いと思う」
「わたくしもです」
「でも、一回私が受け取っちゃうと、みんなに分配する時にポイントに変換されちゃうよ?」
「ここで辞めるつもりなら問題だけれど、そうじゃないからGもポイントも大きくは違わないわ」
「うー……。
じゃ私からみんなに1250万ポイント渡せば良いね?」
それで丸く収まる。
なのに、市松は納得しない様子。
「あら。
そんなつまらない使い方をするのですか?」
「ええっ?」
逆に面白い使い方って何よ?
「それで納得するなら、最初から分配を選んでますわよ?」
「そう言う事。
有意義な使い方を考えなさい。
リーダー」
「ま、結論は今すぐ出さなくても良いし。
とりあえず、帰ろうぜ。
流石にヘトヘトだ」
「でも、もう街まで戻る時間は無さそうね」
「と言うか、ここからどうやって帰るのでしょう?」
いつの間にか制限時間は一時間を切っている。そして、言われて見れば帰り道が無い。
まさか、一方通行?
いや、こういう時は。
「シロ!
帰り道、どっち!?」
問いかけに、可愛く首を傾げるワンコ。
「なんでだよー」
「そんな無茶振りされても困るよなぁ。シロ」
「ワン」
しばらく歩いたけれど帰り道は見つからず。
結局、そのまま全員フィールドでログアウトした。




