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44.いざ!

 騎士、侍、僧侶。

 三人の護衛するのは、白き獣を引き連れた姫。


「て感じじゃない?」

「え? 姫? 半裸なのに?」

「この服はバカには見えないのだよ!」

「バカにしか見えないの間違えじゃなくて?」


 ぐぬぬ。

 クロちゃんの冷たい視線が痛い。



 そう言えば、グアンナ討伐に成功し懸賞金を手に入れればこの四人の関係はそれまでなんだ。

 いや、それを考えるのは後にしよう。


「お姫様。寝所へ到着ですわ」


 先頭を進んでいた市松が、笑顔で振り返る。


「こんな殺風景な寝所は嫌だなぁ。せめて、柔らかいベッドが欲しい」


 ここにあるのは冷たく硬い台座。


「温かいお風呂も欲しいですわね」

「ついでに食堂」

「一体何の話なのよ。

 はい」


 クロちゃんが用意したアイテムを取り出し、私へと差し出す。

 パンと瓶詰めのワインが入ったバスケット。


「夢のマイホームだよ」

「なら私はコタツが欲しいわ」

「それは、自堕落への……」

「何よ!?」

「こたつ。良いですわね」

「ほら!」


 我が意を得たりとばかりにドヤ顔のクロちゃん。


「わたくし、こたつと言うものに生まれてこの方、入ったことがございませんの」

「「「え!?」」」


 さすがはお嬢様……。


「憧れですわ」


 いやいやいや。

 そんなので良ければ冬に我が家に招待するよ。

 逆に恥ずかしくなるような部屋だけど。


 ちょっと和んだところで、改めて三人を見回す。


「準備は良い?」

「ああ」

「ええ」

「当然よ」

「じゃ、行くよ」


 失敗したらごめんね。

 そう、心で先に謝る。


「シロ、また、すぐに呼び出すからね。

 帰還陣・起動」


 魔法陣の中で消えていくシロの頭を撫で、私は台座の前へ立つ。


「縮地陣・起動・陰」


 新たに手に入れた陣魔法の術を唱える。

 私の背後に現れる魔法陣。

 それを確認し、台座へと触れる。





 景色が切り替わる。

 それと同時に私は平伏し、持っていたバスケットを頭の前へと差し出すように置いた。

 この場所へ送還される私達は生贄。

 敵意を表してはならない。

 クロちゃん達が少ない試行の中で得た事実。

 こうしている間は、攻撃されることはない。


 もちろん、それはこちらも同じなのだけれど。


 頭を下げながら、地面に置かれたバスケットを凝視する。

 それをグアンナが持ち上げた瞬間。


「……縮地陣・承接・陽」


 頭を伏せたまま、小さな声で術を唱える。

 魔法陣の出現場所は、私の背後。


「GURUAAAAAA!!」


 魔法を行使した事によって、私を敵とみなしたグアンナが唸り声を上げた。

 頭を上げると、今まさに私の頭上へと振り下ろされんとする斧。

 回避は……間に合わない。

 瞬時にそう理解した直後、振り下ろされた斧を受け止める盾。

 そして、グアンナへと襲いかかる刀。


「成功ですわ!」


 縮地陣。

 入り口である陰、出口である陽をつなぐ魔法。

 陰の魔法陣に触れたものは瞬時に陽の魔法陣へと転移する。

 瞬間移動を可能とする術。

 だけれど、魔法陣を出現させている間は継続してMPを消費するし、魔法陣は自分の近くにしか展開できない。

 なので街から街へというような長距離の移動は無理だろう。

 この術の発展形が、生贄の台座にある仕掛けなのだと思う。

 その陣を通り、三人が転移してきたことを確認して私は術を解き、背後へと下がる。


「召喚陣・起動、行け! シロ」

「ワン!」


 場所を入れ替わる様に私の前に現れたシロがカエデ、クロちゃんに続きグアンナへと飛び掛かっていく。


「市松!」

「はい」


 そのお尻を見送り私はアイテムボックから【壊れた銃】を二つ取り出し、一つを市松の方へと放り投げる。


「「リペア」」


 それを受け取った市松と私の声が重なり、ヒノトウシで買ったミニエーと初期装備のマスケット、二丁の銃が同時に修復されていく。


「ヨシノさん!」

「サンキュ!」


 市松が修復の完了したマスケットを放って寄越す。

 直したミニエー改2を仕舞いながら、銀色に輝くその銃をキャッチ。


 マスケット・シルバー。

 なんか、パワーアップしてる!


 その市松は既にメイスを手に飛び出していた。


「チャージ」


 MPポーションを使い自身のMPを回復させながら銃口をグアンナへと向ける。

 牛頭の獣人。

 巨大な斧を振り回すそいつと対するのはフル装備のクロちゃんとカエデ。

 細い木ならば容易く折れてしまいそうな横薙ぎの一撃をクロちゃんの盾が受け止める。

 その隙に、カエデが攻めへ回る。

 そちらへ意識が向いた瞬間、市松のメイスが脇腹へと食い込む。

 怒りを顔に滲ませながら、斧を振り上げた手首へシロが噛み付きを食らわせる。

 その邪魔者を引き剥がそうと右手を伸ばそうとするその瞬間、私の銃口から放たれた光弾が牛の鼻先で炸裂。

 間髪おかずにクロちゃんのエストックの切っ先が伸び、それに再びの刀とメイスが続く。


 時折味方へ補助魔法を送りながら、私は一人離れた所で引き金を引く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新に感謝! [一言] 殺ったか!?(フラグ)(*´∀`*)
[一言] 仲間の召喚かぁ 失念してたな 召喚士の召喚する者はモンスターっていう固定観念だな
[一言] バカにしか見えないとは言い得て妙ですな
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