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41.みんなそろそろ飽きてきた

 八日目。



 ◇


 西より降り立った天の牡牛。

 かつては厄災を打ち払った神であり英雄。

 だが、この地に在りては墜ちた悪鬼。

 その名はグアンナ。


 この地は大いに枯れ飢えた。



 天の牡牛は神殿を作らせて生贄を求める。

 捧げられるは父。

 捧げられるは妹。


 次は我が子か我が母か。



 東より現れた魔術師。

 それは厄災を打ち払う戦士であり英雄。

 だが、彼の地に於いては追われた罪人。

 それは禁忌とされた陣を手繰る術師。


 その力を大いに敬い願った。



 旅人は生贄に紛れて神殿へと赴く。

 操るは陣。

 操るは空。


 天の牡牛を彼方へと飛ばし旅人もまた消えた。


 ◇


 修復した壁画から見つかった詩は四片。

 それをつなげる浮かび上がった物語。


 だが、遺跡をくまなく探したけれどこれ以上の物語は見つからず。


「意味がわからない……というのが正直な感想ね」

「『陣を手繰る術師』。これが鍵でしょうか?」

「うーん。スキルか、クラス? でも……」

「ええ。私の知る限り、その様なクラスは無いわ。

 唯一、魔法陣が関連するものは召喚士じゃないかしら?」

「超パワーアップした召喚士と召喚獣で蹂躙?」


 それこそ、一人で五体も六体も呼び出すような。


「その可能性は否定できないわね」

「てことは、アタシら役立たずかい?」

「事実、役立たずじゃない?」

「……せめて武器さえ使えればなぁ」


 カエデとクロちゃんは今日三回グアンナに挑み、いずれも三分持たずに追い返されている。

 このゲーム、基本的に戦闘における強さは装備品に依存している。

 だから、裸でボスに挑むと言う前提ではなく、なんらかのギミックがあると言うのがクロちゃんの意見。

 それを探しながら、敵の攻撃パターンを見極めるのが二人の役割。


「私は防具が欲しいわ」


 その言葉自体に深い意味は無いのだけれど、皆一斉に、クロちゃんを見て一瞬押し黙る。


「何で黙るのよ!?」

「いや、つい」

「まぁ、何ていうの?」

「私は! 気にしてないって言ってるでしょ!?」


 その割には鎧で多少盛っていたよね?


「武器は修理すれば良いかも知れないけど」

「防具まで含めてフルセット一式の修理は無理だよ」


 技術的には可能だけれど、修理スキルには一定の時間が必要。

 その時間を敵が待ってくれるとは思えない。


「例えば、優先順位を決めたらどうかしら。

 まずは私の盾」

「いや、アタシの刀だろう」

「どうして? 盾があれば、その分攻撃を引きつけ時間を稼ぐことが出来るのよ?」

「いや、攻撃は最大の防御。他に何も出来ないくらいに攻め立てれば良い」

「わたくしのメイスを優先させていただければ回復魔法が使えます。

 その方が、有効ではないでしょうか?」


 何? この譲り役のいない『どうぞどうぞ』は。


「うーん。今日はここまでにして後は自由行動にしようか。

 2時間ちょいしかないけど」


 その2時間で根詰めても良い考えは浮かびそうにない。

 カエデとクロちゃんは対グアンナの検証で三回死に戻ってる上に、そこに行くまではシーツ一枚で後ろからついてきているだけなので実質何もしていない。


「どうしたの?」

「アタシは平気だけど?」

「私が平気じゃない。

 何だよー。みんなポンポンとクラスチェンジしちゃって」


 レベル20を超えていないのは私だけ。

 なんか悔しい。


「それに、修理を多用するなら鉱石必要だし」


 装備品は修理に武器より多くのポイントが必要っぽい。

 一式となればかなり。

 それを三人分。……私を含めると四人分。……三人分でいいか。

 それでも、鉱石採取に精を出さないといけない。

 でも、わざわざ四人でやるほどじゃないよね。


「なら、私はヒノトウシへ買い物へ行こうかしら」

「あら、それならばわたくしもお供してもよろしくて?」

「んー、アタシもそっち行こうかな」


 ……ん?


「ヨシノはそれで良いか?」

「良い……けど?」


 ……良いけど。

 本当に一人になるとは思わなんだ。

 いや、ワンコが居る。


「往復だとちょっと時間が足りなそうだから、再合流は明日にしましょう」

「りょ。

 それまでにクラスチェンジしてやる!

 首を洗って待ってろ!!」

「いや、セリフおかしい」


 それぐらいの勢いなんだよ!


 ◆


「まあ、元はと言えば私の我儘にみんな付き合ってくれている訳だし?

 クラスの所為で一人成長が遅いのは事実だし?

 採掘スキル持っているのは私だけだから、私が石を掘りながらスライムで経験値稼ぎするのが最高効率なのよ。

 わかってる。

 わかってるけどさぁ?

 それにしたってみんな薄情だと思わない?」

「ワン?」


 なんで首を傾げるんだよ。

 私は口を尖らせながら洞窟の採掘ポイントへ


 時間は有る様で無い。

 残り時間は帰り道を考慮すると三十分程。

 ここで制限時間を迎えてしまうと明日のログインから一時間はステータス異常だ。


 ……それでも良いか?

 明日は昼の日。

 通りを歩く分には敵は少ない。

 なら、一時間のステータス異常の間に再びここへ向かえばその方が時間を有効に使える。


「そうしよっか」

「ワン?」


 警戒を始めたシロが振り返り首を傾げる。

 強制ログアウトの前にシロを戻しておかないとね。


 採掘ポイントを叩きながらそう決意する。

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