38.クラスチェンジですって
七日目。
「これでどうでしょうか?」
「素晴らしい!」
市松がスキルを使ってシーツを簡単な衣装に仕立て上げた。
それを纏いご満悦のカエデ。
鏡の前で裾を持って一回転。
今回飛び込むのはカエデ一人。
残りの三人は護衛。
多分、途中でスライムが現れるのと私は帰り道をマッピングしないといけないから。
「じゃ、早速行くわよ」
◆
先頭を行くクロちゃん。
その足元にはシロ。
次いで私。
それからお姫様カエデ。
最後方は市松。
そんな陣形で進んでいく。
「クロちゃん、ストップ!」
シロが警戒の為に足を止めた事に気付かぬクロちゃんを呼び止める。
振り返った彼女へ銃口を向ける。
狙いはその背後で松明の明かりを反射して揺らめく銀色のスライム。
暗がりの中で、シロが気付かなかったら見過ごして逃げられて居ただろう。
逃げるなよ。
そう祈りながら銃を構え、素早く引き金を引く。
二連結の銃弾が標的を一撃で射抜いた事はレベルアップのインフォで答えとなった。
一つ上がってレベル十三。
それを聞き流しながら、目を凝らす。
シロが警戒を解いていない。
まだ居る。
……居た!
壁に張り付く様に動く液体金属。
引き金を引き、同時に走る。
奥に逃げたら死角になる。
その前にもう一発。
銃弾を受け、逃走を始めたスライムへ連続して銃弾を叩き込んでいく。
<レベルアップ>
ふう。
なんとか逃さずに済んだみたい。
シロが伏せていた耳を上げたの確認し、その頭を一度撫でてからみんなの元へと戻る。
「……どしたの?」
カエデが仮想ウインドウを開いた姿勢で固まっており、その横でクロちゃんと市松が目を丸くしていた。
「レベルが20になったんだ」
「おめでと」
私は14。
ほとんど行動を共にしているのにこの差は、シロの分だね。
「そしたらさ、クラスチェンジ可能って」
「クラスチェンジ? へー」
「なんとチェンジ先が三つから選べる」
「どうせ、武士かサムライでしょ?」
興奮気味に話すカエデが、私の一言で口を尖らせる。
「いや……決めつけるなよ。
一応リーダーの意見も聞きたい」
「よし、聞こうか。
何が選べるんだい?」
「今は、武芸者。
クラスチェンジ先は、忍者」
「ニンジャ」
「陰陽師」
「オンミョウジ」
「侍」
「それじゃん」
実質一択でしょ?
それ。
「侍で良いのか!?」
「嫌なの?」
「いや、むしろ侍以外は考えられない!」
ほら。
「なら、悩んでないで決めちゃえば良いじゃん」
「あの、パーティとしての方針とかはよろしいのですか?」
「方針?
……楽しくやろう! 以上!
なので、自分のやりたい道を好きに選べば良いよ。
このまま行けば、次はクロちゃんでしょ?」
「ん、そうね」
「で、次は市松」
「はい」
「二人とも好きなクラスチェンジ先を選べばいいんだ。
どうせ私は最後なんだしー」
「ヨシノ、ひょっとして……」
「拗ねてる?」
「拗ねてないさ! 全然。
私はシロとのんびりいくから全然悔しくないもん。な、シロ?」
「ワン?」
「何で首を傾げるんだよぉ!
君は私の味方で居ろよぉ!」
とは言え、悔しがっても仕方ない。
シロのほっぺを存分に引っ張り堪能し気を取り直す。
ふにふにふにふにふに。
「よし! 行くよ!」
「今の何?」
「癒し!」
◆
クロちゃんと市松が穴の底で分裂したスライムを潰している。
飛びかかってくる塊を剣で両断し、盾で弾き飛ばすクロちゃん。
鈍器は相性良くないだろうけど、ダメージを与えているかどうかなんてお構いなしとばかりにメイスをスライムに叩きつける市松。
「西七辻さんって、あんなワイルドな人だったんだな」
それを見ながらカエデが呟く。
君、人の事言える?
「それを言ったらいいんちょがここにいる事自体、驚きなんだけど」
我がクラスの優等生トップ2。
タイプはまるっきり違うけど。
「そろそろかな」
前と同じ様にスライムが一箇所に集まりだした。
「喰らえ!」
ひとまとまりになったところへ放つ9連結の光弾。
流石に反動で大きく銃口が跳ね上がる。
「……一撃って」
「カエデでも耐えられないと思うよ」
「避けれそうだけど」
「……君が避けたら後ろのシロに当たるよ?」
「うっそ!?
え、シロを囮にする訳?
アタシが避けたらどうするつもりなの?」
「避けないでしょ?」
「避けぬ……」
「勝った」
「負けた。シロに」
でもクロちゃんなら直撃しても防ぎそうなんだねよ。盾で。
ま、敵じゃないから良いか。
「さ、下に行こう。
カエデは仕事が待ってるよ」
「え、またアタシ?」
「だって、今日何もしてないじゃん?」
「見て。
この格好」
「ん。布一枚とは思えない素敵なドレスですね。
で?」
「これじゃ、土いじりはちょっと出来ないなぁ。
裸足だし」
「私より露出が少ないのにその理屈は通らない」
「そうだった」
結局、じゃんけんで穴掘り役を決める事になって市松になったけれど。




