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28.スナイパー、潜む

「私達も行くよ」


 シロを地面に下ろし、歩き出す。

 新しい銃、ミニエーの感覚に慣れる為に少し試し撃ち。

 それと、やりたい事もある。


 スキル屋で【消音】と【木登り】のスキルを買って森へ。

 やばいなぁ。

 お金に羽根が生えたみたいに消えていく。

 回復アイテムはこっちの街でも相変わらず売り切れなので無茶は出来ない。




「君の気配察知はどれくらいの範囲なんだい?」


 シロに問いかけるが当然返事はない。

 体感で、三十メートルくらいかな?


「きっと君のスキルより、私の射程の方が長いよね」


 出来れば逆が良いのだけれど、まあ仕方ない。


 街のすぐ近くの森。

 そこへ入り、枝振りの立派な木を一つ選びスキルを使い登り、シロを抱え銃を構える。


 私は森の中に紛れたスナイパー 。

 一方的に敵を葬る悪魔。


 ま、別ゲームでやられた事をやり返して見ようってだけなんだけど。



 遥か先で標的が狙撃の餌食となり消滅したのを確認。

 射程が伸びるという事は、初速と威力が上がっている。

 このままの方向で銃と言う武器種が強化されていくと考えるならば、より遠距離に特化して行くとも言える。

 それは、近接を主たる攻撃手段とする仲間、カエデとシロ、即ち仲間集団からの孤立。

 突き詰めると、別行動。私単独が最適解。

 そうなり兼ねない?


 それは、それで……。


 私は今、一つの爆弾を抱えている。

 昨日会った五千万の賞金首。

 想定外の市松の登場でカエデに打ち明ける機会を逃してしまった。

 今日、アナウンスのあった賞金首。

 それには二百人規模で挑んでいた。

 私とカエデ二人で勝てるだろうか。

 勝てるならば問題ない。

 でも、勝てなかったら?

 次の手段は当然『仲間』を増やすこと。

 それで勝てればまだ良い。

 報酬が減りこそすれ、手に入るのだから。

 問題は負けた時。

 その場合、その『仲間』にも賞金首の情報が漏れる。

 最悪は、私達との共闘でわざと負けを選び、出し抜かれる事。

 そう考えると、『仲間』なんてそうそう増やせないし、この情報を打ち明けるなんて持っての外だ。

 だからと言って、無かったことにして忘れてしまうには余りに大きな金額。


 どうしようね。

 シロの頭を撫でながら考える。


 仲間と言えば市松の事もある。

 彼女自身、そこまでお金に執着はないだろうし、何より最後に見せた悔しそうな顔が忘れられない。

 今、私が持っている情報は彼女の無念を晴らすのにうってつけだろう。

 ヒーラーと言う私達に欠けていて、絶対に必要なピースでもある。

 そう考えると、彼女は引き込んでしまっても良さそう……。


 ……そんな打算を抜きにしても、同じクラスなんだし仲良くはなりたいよね。


 木の上で、気配を殺し、音を消し。

 思考を重ねるけれど、結論は出ず。


 ……帰ろうかな。

 そう思った矢先、人が来た。


 一、二、三、四人。

 NPCの集団……では無いよね。

 私がそう見えてるだけで。

 ここで、向こうからはNPCに見えるであろう私がいきなり木の上から現れたら。

 攻撃はされないだろうけど、話しかけてくるかも。

 そうしたら、面倒かな。

 ……やり過ごそう。

 このままじっとしてれば居なくなるでしょ。

 そう思い、木の上で息を殺しているとなんとその四人が、私の真下で立ち止まる。


 えぇ……。


 なんか、会話が始まってしまったみたい。

 早くどっか行ってよ。


 NPC風のプレイヤーさん達。

 ……あれ?

 四人のうち、一人。

 その人の顔がはっきりと見える事に私は気付いた。


 他の三人と違う。

 白い鎧を纏った黒髪の女性。


 待て。

 て言う事は、知り合い?

 リアル連絡先知ってるのは小中の友人と高校のクラスメイト(緊急連絡網)。

 ……誰だ?


 そして、なにやら揉め出したっぽい雰囲気をひしひしと感じる。


 ……見つからなければ平気よね?

 このままでは何で揉めているのかも分からず、あの知り合いかもしれない人の正体も分からないのだから。

 私は仮想ウインドウを操作し、このゲームを始めて以来変更した事のないコンタクト制限の設定を解除するのだった。

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