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27.癒し担当

 武器屋へ向かう途中に、唐揚げを売る出店の横を通り過ぎた。

 下を見る。

 ワンコが物欲しそうな顔をしている。


「後でね」


 今日はまだ終わってないし。

 甘やかさないのだ。

 尻尾を下げたワンコを引き連れ武器屋へ。


 早速メニューを開いてお目当を探す。

 銃は二種類。



 【魔導小銃】マスケット 50,000

 魔力を光弾に変換し撃ち出す魔導機械兵器。

 最大装填数:6

 基本装填時間:30秒

 有効射程50m



 【魔導小銃】ミニエー 150,000

 魔力を光弾に変換し撃ち出す魔導機械兵器。

 マスケットより命中精度が向上している。

 最大装填数:8

 基本装填時間:20秒

 有効射程75m




 いや、高い!

 マスケットは壊れた銃と同型だから買うならミニエーだけれど。

 しかし、買う以外の選択肢は無いのだ。

 カエデの刀の方が高かったか。


「……なるほど」

「ん?」

「わたくしに対して負け惜しみを言っていた方々の気持ちが少しわかりましたわ。

 どうやって稼いだのです?」

「んー……炭鉱夫?」

「鉱石ですか」

「丸二日穴掘りしてたよ」

「丸!?」


 その洞窟の場所を教えようかと一瞬思ったけれど、目印を口にするのが憚られたのでまた今度。


「ちょっと試し撃ちに行こう。良い?」

「ええ」


 と言う訳で、フィールドで三十分ほど試し撃ち。


「やっぱり、勝手が違うな」

「お上手ですね」

「いやー、半分外れてるし」


 ちょっと練習が必要だな。


「どうしようかな。

 一回、ログアウトしようか……」

「あ、わたくしの事はどうぞ気にせず。

 しばらくこの辺でレベル上げに励もうかと思いますので」

「ん、そっか。

 回復魔法あるといいね。やっぱり」

「そうですわよね?」

「うん」


 私も欲しいけど、スキル屋では売ってないしなぁ。


 ◆


 一人で大丈夫と言う市松と別れログアウト。

 あ、シロにご飯買い忘れた。

 怒ってるかな。

 今日、後でもう一回ログインしよう。

 そう決意してから、私はFPSゲームへとログインし、新たな銃の練習をするのだった。


 ◆


「あれ? まだ居るね」


 シロに餌を与える為にログイン。どうやらまだ市松もログイン中の様だ。


『ただいま』


 と一言挨拶でメッセージを送っておく。


「シロ行こう」


 若干不機嫌そうなワンコを引き連れ宿屋を出る。

 そして真っ直ぐに唐揚げの屋台へ。

 商品を受け取るなり尻尾を振って飛びついてくる現金なワンコを宥めながら、座れるところを探す。


「これ柳だね」


 街の中心に生えた大きな木。

 その下のベンチに腰を下ろし、ワンコへ唐揚げを与える。


『おかえりなさい。

 どうしました?』


 市松から返事。


『シロと遊びに戻ってきた。

 今、ヒノトウシの中心部』

『参ります』


 あら。


「市松も来るって」


 唐揚げを一つ食べ、次を待っているシロにそう声を掛けながらもう一つ与える。


「そろそろ私も真剣に服を考えないとな。

 そう言えば、シロも服着る?」


 お揃いで。

 いや、流石にそれは痛いか。


「お待たせしました」

「待ってないよ」


 現れた市松に唐揚げを一つ差し出す。

 少し考えてから、手掴みでそれを受け取る市松。


「ありがとうございます」


 お嬢様が手掴みでお食事なんてはしたなかったか。


「楊枝か串を貰っておけば良かったね。ごめん」

「いいえ。お気になさらずに」


 そう言って笑顔で唐揚げを口に運ぶ市松。


「どうだった?」

「二つほどレベルを上げて参りましたが、まだまだです」

「あのさ、私、それほどゲーム詳しくないんだけど」


 そう前置きした上で市松へ問う。


「普通、ヒーラーって後ろで控えるものじゃない?」


 なんで殴りに行くの?

 鈍器で。


「ダメージを受けても回復できる、かつ自分でもダメージを与えられる人が一番強いと思いますの」

「なるほど」

「そう言うヨシノさんはどうしてサモナーを?」

「一人で色々出来そうだと思って。

 今のところ、主に癒し担当しかいないけど」


 癒し担当のワンコを抱え上げ、膝に乗せる。

 もう、唐揚げはないよ。


「でも、シロさんもきっと強くなりますよね」

「なりますか? シロさん」


 頬を引っ張る。

 よく伸びる。


 こうしているとこの子はこのままでいいような気がしてきてしまう。

 巧妙な罠だな!?


<ポーン>

<Remnants of Eden : Unlimitedにご参加いただいている全プレイヤー様へご連絡いたします>


 突然のシステム音声。

 それは、市松にも届いたのだろう。

 彼女は身を強張らせあらぬ方向へ視線を向けている。


<ただいま、バウンティナンバー35 ヒッペが討伐されました>

<二百二名の参加者様には懸賞金が送られます>

<おめでとうございます>


 私はメニューを開き確認。

 八十八の懸賞首の中でただ一つ、ヒッペの項目がグレーアウトしていた。

 懸賞金、二千五百万G。

 全体で見れば安い方の部類だけれど……。


「……あの集団は……きっと、この為に集まっていたのですね……」


 市松が横で呟く。

 とても……悔しそうに。

 血が出そうな程に下唇を噛む彼女。


 大きく息を吐き、気持ちを落ち着けてから彼女は立ち上がる。


「……わたくし、そろそろ制限時間ですので」


 そう、一言言って立ち去っていく。

 その顔は笑顔を取り繕っていたのだけれど、滲み出る悔しさは隠しようがなかった。

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