25.名家のお嬢様が現れた
「でも、どうして二人が?」
私はカエデと市松の顔を順に見ながら疑問を口にする、
「部活終わりに顔合わせてさ」
「差し出がましいかと思いましたが、わたくしからお誘いいたしましたの」
「いやー。びっくりした。
西七辻さんがいきなり『カエデ』さん?って」
「うふふふふ」
へー。
市松が口元を隠し上品に笑う。
「今日はこの前の友達も?」
彼女は彼女でフレンドと居たはず。
そうなら今日は三人以上となるが。
「あの方は、目的を達成されたようなので」
「え?」
「彼女は、臆病な狩人だったのです。
私はそれを先導する、いわば猟犬。
そう。その子の様に。
獲物を仕留めた狩人は、そのまま桃源郷へ」
「ごめん。
全然意味がわからない」
「あらー?」
と、カエデの言葉に小首を傾げる市松。
いや、わかるだろ。
「懸賞金を手に入れ、現実へ戻った。
そう言うこと?」
賞金首を見つけたのは私だけではないと言うこと。
今はNPCにしか見えない他のプレイヤー全員が敵なのだ。
改めて思い知らされる。
だけれど、市松はもう一度首を傾げる。
「違いますわ?」
違うんかい!
「……もうちょっと具体的に教えて」
「友人には恋い焦がれる殿方がおりました。
その殿方がどうやらこのゲームをやるらしい。自分はゲームはからっきしなので、アドバイスをくれないだろうかと持ちかけられたのです」
「ほうほう」
「それでそれで」
「わたくしには色恋の進言など、とても出来はしないのですが、ゲームなら少々自信がありまして。
ですので、まず彼女と一緒にゲームを遊び、それから、その殿方を含め三人で。
程よく距離が詰まった様に見えたので、後は二人の方が良いと思いましたの。
それが、昨日の事ですわ」
「やっぱ同じ趣味か」
「あれ? その言い方。まさか……アタシの他に好きな人でも出来た?」
「何で私がカエデを好きな前提なの?」
「照れんでよかよ?」
何で博多弁?
「あらあら。わたくし、ここでもお邪魔虫ですか?」
「いえいえ。大歓迎だよ」
多分、回復出来るだろうし。
人手も……正直、欲しかったところ。
「それは、ありがとうございます。
ですけど、初めこそ友人の為に時間を使いましたが、わたくし、このゲームに真剣に向き合うつもりです。
もし、お二方と姿勢を違えている様であれば別行動とした方がよろしいかと思っておりますの」
「私も本気で稼ぎたいとは思ってるけど」
「聞いて良い?」
「何でしょう? カエデさん」
「西……市松の家は、ぶっちゃけここで稼ぐ必要がないくらいお金持ちだろ?」
それは、私も思った。
カエデの問いに市松はニヤリと笑う。
……それは、学校では見た事の無い笑顔だった。例えるなら、捕食者。
「わたくし、結構負けず嫌いですの」
「それは、なんとなくわかる」
へー。
「今までもこういったゲームを嗜んで参りました。
自分で言うのもおこがましいのですが、それこそ……廃人と言われる程度には」
え?
「他の方より抜きん出ようとするならば、手段を選ばなかったこともございます」
やや伏し目がちに話す市松。
「ですが、そうやって勝ってもわたくしを認めようとしない輩も少なからずおりました」
「何したんですか?」
「全力で勝ちに行ったまでです。
その結果を持って、『札束で殴る』などと揶揄され。
確かに、資本は投入いたしましたが、それもルールの上では相手方も同じでしょう?」
と、お金持ちお嬢様の課金宣言。
「それは、もちろんそうだ」
カエデが力強く同意する。
いやぁ……同じリングの上とはいえ覆し様のない現実というものを見せつけられたらそんな負け惜しみの一つも言いたくなるよね。きっと。
「ですので、そういった要素のないこのゲームでこそ私の力が証明できると、そう思っておりまして」
そう言いながら拳を握りしめる市松。
メッチャ煽られたんだろうな……。
「一緒にそいつを見返してやろう!」
そういいながらカエデが右手を差し出す。
「ええ! 是非!!」
それに応じる市松。
……いやいや、カエデよ。見返す相手とか君、知らないじゃん。
「改めまして。
ヨシノとシロ。
よろしく」
カエデに慣い私も市松と握手を交わす。
「それじゃ、次の街へ向け出発!」
「「おー」」
さて、どうなるかな。




