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12.いざ!洞窟へ

 ここを通った人が何か思惑を持っていたとしたら。

 それは、とりもなおさず秘匿したいという事だろう。

 自分の足跡を。ならば、その先にあるものは余程の価値があるのだろう。


 だが、そんな事は全くお構いなしなのは前を行くカエデ。

 身の丈ほどに伸びた草を、刀を鎌代わりにして刈り取り、道を作りながら進んでいく。

 腕を振る度に、刈られた葉や茎が飛び散りそのまま、風に吹かれるように粒子と化し消えていく。


 ちょっと、楽しそう。

 と言うか、実際楽しいんだろうな。


 やがて、シロが小さく吠え、カエデが草刈りの手を止める。


「ここに入っていったみたいだね」


 崩れた山肌の下から大きな岩が顔を覗かせ、そこに人一人通れるかどうかの隙間が有った。

 遠くからは、草に覆われ全く見えなかっただろう。


「ヨシノ、先行って」

「え、何で?」

「アタシはヨシノがここを通り抜けるのを見守るよ」

「良いけど」


 先導とばかりにシロが洞窟の中へと入って行った。

 私はそれを追いかけ、匍匐前進の格好で隙間を通って行く。

 服を着てたら泥だらけになってたかも。

 裸族万歳!


 まあ、こんな山道裸足で歩いてこれてるのだから現実の感覚とは全然違うのはわかりきっているけど。


 狭い入り口を潜り抜けるとすぐに立てる程の高さのある洞窟。

 陽の光は全く入っていないはずなのに、少し薄暗い程度で中の様子がわかる。

 私に続いてカエデも中へ入って来た。


「見える?」

「駄目」


 買っててよかった松明。

 メニューを操作し取り出した松明をカエデに渡す。

 三十センチ強の金属棒。持ち手があり、先端がラッパ状になっている。


「なにこれ?」

「松明。スイッチがついてると思う」

「これ? おお!」


 カエデの驚嘆と同時に明かりが洞窟内を照らす。


「私が前行くよ」

「良いけど、何で?」

「通路なら、銃で攻撃した方が良いかなって。

 接近して来たら交代」

「成る程。了解」


 という事で、銃を手に洞窟を進んで行く。

 先導するのはもちろんシロ。




 洞窟と言う事で警戒はしていたけれど、敵は全く現れなかった。

 でも、足元が凸凹していて気をつけなければ足を取られてしまう。

 薄暗いこともあり、自然歩みは遅くなる。


 前を行くシロが足を止め、姿勢を低くした。

 警戒……?

 私も足を止め、シロの視線の先を注視する。


「どうした?」

「分からん」


 暗闇の中に敵がいる?

 私の目で捉える事の出来ないそれを、シロは感知しているのだろうか?


 銃口を闇に向け、目を凝らす。

 何も居ない。

 だけれど、シロは確かに何かを……。

 片膝をつき、視線を下げる。

 一体、シロは何を警戒してるのだ?

 私の見つめる先で、洞窟の壁が歪んだ。

 居る!

 ゆっくりと動く透明の物体。

 その表面がわずかに光を反射する。


「スライム的な?」

「スライム的な」


 シロがいなければ気付かなかったかも知れない。

 私が向けた銃口はとてもゆっくりと動くモンスターを確実に捉える。

 引き金を引くと同時に、ポシュっという乾いた音。

 銃口からまっすぐに放たれた光弾は、無色透明な物体を貫き飛散させた。


「一発!?」

「#当たれば死ぬ」

「何でハッシュタグ?」


 なんとなく。

 警戒を解いたシロの頭を一撫でし立ち上がる。


「チャージ」


 いま撃った分の弾をMPで補充する。

 全弾撃ちきってからでは遅い。

 次の敵が来る前に準備は済ませておこう。


 ちなみに、チャージが完了する前に弾を撃つとチャージはキャンセルされMPは無駄になる。

 なので、戦闘中はタイミングが難しい。

 MPも決して無限にあるわけでは無いし。


 私を先導するように歩くシロの丸まった尻尾がフリフリと動く。



 ◆


「分かれ道だ」


 ここまで真っ直ぐに伸びてきた洞窟が左と右、二手に分かれた。


「どっち行く?」

「右」

「左」


 私とカエデはそれぞれ別の方向を指差す。


「じゃんけんかな?」

「いや、多数決だな」

「え?」


 二人で多数決?

 ニヤリと笑い、カエデが自分が行くと言った左を指差す。

 既にシロがそちらへと進んでいた。


「シロはアタシの意見に賛成だってさ」

「なんでだよー!」


 飼い主に従ってよ!

 憤りながら、飼い犬に従い後を着いて行く。




「分かれ道、再び」

「上」

「下」


 シロは?


「下?」

「よし! 偉い! シロ!」


 ちゃんと飼い主の言うことを聞いた!





 結論から言うと、シロは別に私達の意見を聞いて道を選んでいたわけでなく、彼の行きたい方へと勝手に歩いていたのだろう。


 左に、右に、そして下に。



 何度かスライムを倒し、明らかにレアっぽい銀色のスライムに逃げられ。

 そうやって、私達は洞窟の奥へ奥へと進んでいった。



「高っか……」


 狭い通路から急に開けた場所に出た。

 私の呟き通り、上下貫く竪穴が開いていて壁に沿って辛うじて人一人通れそうな通路の様な段差がある。


 シロは一切迷いなく下へと進んでいく。


「これ、落ちたら死ぬかな?」


 下を覗き込むが、底が見えない。


「大丈夫なんじゃない?」

「じゃ、試して見てよ」

「今度やってみよう」


 本気?


「じゃ、私、下で受け止めてあげるよ」


 多分、潰されて死ぬと思うけど。


「親か……グシャ!って」

「開始五分で惨劇!」

「てか、アンタがヒロインはないわ」

「いいじゃん。ヒロイン。

 シロに乗って山の中を走り回ってさ」

「いや、シロ、私の」


 それに、カエデが乗ったら間違いなく潰れる。

 そもそも、山犬じゃなくてワンコだし。

 いや、狼だよ。


 そんなどうでも良い話をしながら私たちは縦穴を下って行く。

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― 新着の感想 ―
[一言] 胸に鉢巻き巻いた状態で匍匐前進とな ある意味危険な行為じゃないw?
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