11.幼馴染がドン引きしてた
ワンコとカエデが並んで走る。
私は少し離れてそれを追いかける。
「ワン」
走りながらシロが短く吠える。
すかさず刀を抜くカエデ。
直後、道の脇の物陰からモンスターが飛び出して来て、そのままカエデの刀に跳ね返される。
シロが体当たりして噛み付き、カエデの追撃。
私は足を止め新手が来ないか周囲を警戒する。
反撃する間も与えずカエデの連撃によってモンスターは粒子と化した。
そして、私のアイテムボックスに未鑑定のアイテムが一つ増える。
このエリアは山道の横手、青々と生い茂った草木の中から不意に飛び出してくるモンスターが多い。
だけれど、それを先回りする様にシロが敵を見つけ、カエデに知らせる。
そして、カエデの刀がそれを次々と斬り伏せて行く。
そんな戦い方で、山道をジョギングよりは早いペースで走っていた。
目に見える数値には無いけれど、スタミナの様なパラメータが設定されているらしく道中何度か休憩は必要だったけれど。
疲労はないけれど、極端に体が重くなる。
そんな感覚。
私とカエデがどんなにバテていても、シロだけは疲れ知らずなのかとても元気だったけれど。
そんな感じで、一時間近く山道を走りカエデはレベルが3に、私とシロはレベルが2に上がった。
「多分、この辺だと思う」
アナログな紙の地図を見ながら辺りを見回す。
地図上に現在地が示されないなんて、なんて不便なんだろう。
「何も無いな。間違ってんじゃない? もっと先とか」
「でも、曲がって曲がって曲がってだから、大体合ってる筈」
君の後ろを走りながら、私は必死に地図を確認してたんだよ?
気付いてないだろ? 猪突猛進ガールめ。
辺りは鬱蒼と生い茂った木々で薄暗く、舗装もされてない山道の両サイドには背の高さほどもある草がまるで壁のよう。
「おーい!」
突然大声を上げるカエデ。
「鍛冶屋さーん!」
その声が山の中に木霊する。
返事が無いか、耳に手を当て目をつむる彼女。
そもそも、旦那さんは鉱石を掘りに出掛けたという話だった。
ところがどうだ?
この景色。
緑一色の景色は、私の思い描く炭鉱のイメージとあまりにもかけ離れている。
「見込み違いだったかなぁ?」
いつも行っていると言う廃鉱山。
そちらが正解?
今日のログイン時間は残り五時間。
街に戻るのに一時間かかるし、そこから廃鉱山までの往復で二時間は要すると見ておいた方が良いだろう。
向こうへ行くなら今決断するしか無い。
「よし。廃鉱山へ行こう」
「そうなの?」
「そっちのほうが可能性が高いと見る。時間は有限だし」
「わかった。じゃ、休み無しで街まで戻ろう」
「いや、それは無理」
「根性根性」
「無理無理」
疲労で足が止まるのはシステムの制限だから根性でどうにかなるものではない。
「シロ! 街まで競争だ」
いや、絶対シロのほうが早いって。
「行くぞ!」
「……シロ? 行くよ?」
私達から少し離れウロウロとしていたシロは呼びかけに答えず、更に奥へと歩いていく。
『名前を呼んですぐに来ないと言うことは、あなたをリーダーとして認めていない証拠です』
と、犬の躾サイトに書いてあった。
……まじかぁ。
「シロぉ?」
私は少し優し目の声を出しながらシロの方へと近寄っていく。
だが、それを無視し走り出すワンコ。
泣くよ?
首輪とリード買わなきゃ。そう、心に決める。
「待って」
「ワン!」
十メートルほど走って止まり、振り返るシロ。
「ほら、戻るよ」
「ワフ」
追いつき、しゃがんで目線をあわせながら話しかける。
頭を撫で、ほっぺを引っ張るとよく伸びる。ほんと、よく伸びる。
「……ん? どうしたの?」
モキュモキュされながらも、私ではない方を見つめるシロ。
気になりその視線の先を追うように振り返る。
あるのは草が隙間なく生い茂った天然の壁。
「シロ、串焼きを食べに行こう」
カエデもやってくるが、それでもシロは動かない。
何かあるの?
笹の様な植物が生い茂った道端を凝視するシロ。
……ん?
何か、違和感があった。
少し……隙間?
「ワン!」
そこへ近づく私へシロが正解だと言わんばかりに嬉しそうな声を上げた。
いや、でも人が通れるほどの隙間では無い……。
「あ!」
茂みをかき分け中を見ると、そこに草を踏み倒しながら何かが分け入って行った痕跡が。
入ったところだけ、倒れた草を戻してわからなくしてたのか。
そして、シロはそれに気づいた。
「ヨシノ」
「うん! こっちだ!」
「いや、その言いにくいんだが……草むらから尻が生えてるみたいで酷い絵面だ」
「そういう事、言う!?」
あえて、言う?
「シロはお手柄だな!
後で串焼き買ってあげよう。二本!」
「ワン!!」
勝手に餌付けすんなって! もう!




