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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
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其の九 朝の二幕

<>(^・.・^)<お久しぶりでございます


<>(^・.・^)<再び頑張ります、活動報告にもいろいろ書く予定です

 突然の訪問があり、奏と少し深めの話し合いをした、その次の日。


「くぁ………」


 眠い息を噛み殺しながら掛布団を除け、取り敢えず畳む。

 後で天気予報を見て、それで干すか干さないか決めよう。

 寝巻に貰った服を脱ぎ、奏に貰った運動着に着替える。

 ………やっぱ貰ってばっかりなんだよなぁ。

 確かビズかシンミ辺りが、〈妖技場〉での戦勝は多少お金になると言っていた。

 出場したいと思ったのも、少しでも綿貫家に還元できれば、と考えていた部分が大きい。


『いやいやいや、ちょっと楽観的すぎません?』

「………お前、また喋れるのか」


 奏救出作戦のあの日に喋った(?)ぬいぐるみ群、もとい座敷童のシラが話し出した。

 あの日から数日が経ったけれど、結局あれからは一言も口にしないまま、日にあたりすぎない部屋の隅で可愛らしい姿を晒していた。

 個人的にコイツはなんなのか非常に気になるし、妖怪の存在があるとはいえ、奏の購入したぬいぐるみが実は妖怪だった、なんてことも、綿貫家のセキュリティからして考えにくい。

 そもそも奏がこのことを知っているのかどうかすら、タイミングが無くて聞けていない。

 今度聞いてみたうえで、御用達のぬいぐるみ販売店にも行ってみるか。


「で、今度はなんだ? また何か有難いことを言ってくれるのか?」

『またまたー、本当は嬉しかったからってー、そうやって照れ隠しちゃってー』

「あ?」


 なんだこいつ。


『まぁまぁ、お姉さんのお話を聞いたらどうです? いいからいいから』

「それは構わないが………」

『? どうしたんです辺りを見回したりして。探しても私の姿は見えませんよ?』

「いや、だってお前、『お姉さん』て………」

『私ですよッ! 話の流れ的に決まってるじゃないですか!?』

「そう言われても、姿が見えないうえに声も男女どっちともつかないのだから、仕方ないと思うが」


 ぬいぐるみ群の構成員も、ゾウ、キリン、ネコ、イヌ、リス、ウサギ、トリ等々、実にバラエティ多様で、これといった傾向はみられない。

 じっと近づき一つを取って眺めていると、ふと本人に聞いてみればよいのではないか、と思い立った。


「ところでお前の身体ってどれだ?」

『話聞いてます? コミュニケーション下手くそ日本選手権妖怪部門一位ですか?』

「あ”?」


 面倒くさいな。


『それはそれとして、ですね。〈妖技場〉に出場するのは大いに結構だと思います。奏ちゃんを守るためにあなたがそう決断したのなら、なおのこと』

「そりゃどうも。あの日痛感したんだよ、少しでも強くなるべきだ、てな」

『えぇ、えぇ。〈妖技場〉にはあなたの会ったことのない強敵が多く居ることでしょう。あなたは須らく彼等彼女らと交わり、自らの糧とすべきです、ですが』

「ですが?」


 一瞬だけしん、と静まり返る。

 今日は風が無いな。


『それだけで生計の足しになるかは微妙でしょう。第一あなたが番付でどの位置に来るかすらわかりません。契約内容によっては雀の涙となることも考えられましょう』

「それはまぁ、そうだな。その辺りはシンミやトイに聞いてみるつもりだ」

『そうですか。無策でないのなら私から言うことはありません。ここから応援していますよ』


 言って、部屋の中から気配が消えた。

 性格上、懸念要素はあいつに言われるまでもなく考えていたが、やはり他人目に見ても先行きは不透明か。

 あの後奏は、トロならきっと一番になれる、と言ってくれたが、俺としては一番の戦士になるつもりはない。

 奏の一番の盾になれれば、それで十分だ。


「ところでシラ、お前二つの喋り方のどっちが素なんだ?」


 これと言って返事はなく、俺は脱いだ寝間着を脇に抱えて部屋を出た。


 [***]


「さて、あいつに時間を取られた分手早くしないとな」


 洗面所で軽く顔を洗った後、キッチンに立つ。

 万が一体毛が入り込まないよう長袖の服を着、頭をきちんと頭巾で覆う。

 家の中の長袖はつい先日まではちょうどよく快適に過ごせたものだが、今日は少し暑いな。

 春が少しづつ過ぎ去ってゆくのを感じつつ、冷蔵庫を開ける。


「昨日の仕込みは、と………」


 昨日の夜の間に仕込んでおいた出汁を取り出し、溶いた卵の中に加えてさらに溶く。

 初めてだったが、香りに限って言えば、昨日の夜に適切かつ妥当に考えた材料がうまく機能していそうだった。

 美味いといいな。


 それからしばらく調理を進め、軽めのサラダを用意して昨日の残りのコーンポタージュを温めていたころ。


「………」

「お、おはよう」

「んむ………」


 無言のままパジャマに身を包んだ奏がリビングのドアから現れ、ソファに沈み込んだ。

 奏がクッションを枕に横になっているソファの体面にはテレビが据え付けられていて、そこに映されたニュース番組の表示からすると、今日は普通に平日。

 時刻は………


「おーい奏、そろそろ起きたほうがいいんじゃないか? 学校に行く支度は出来てるのか?」

「むぇ」

「どっちだ………?」


 ダメだ、このままでは起きそうにない。

 先日もこのようなことがあったが、二人で話し合った朝食当番が休みの日、どうにも奏はキレが悪くなるらしい。

 心を開いてくれているのは良いのだけど、学校に遅れるのはまずいよな。


「ほら奏、朝ご飯が出来たからテーブルに運ぶぞ。米はよそっていいか?」

「!」


 ご飯、のフレーズが出た時、奏の上半身がむくりと起き上がり、ダイニングテーブルの方を向いた。

 眠そうな顔のままソファから立ち上がって、スリッパをぺたぺた鳴らしながらダイニングテーブルの定位置に着いた。

 普段は面倒見がよいだけに、眠い時は基本的に傍若無人、それが奏だった。


「しょうがないな………ほら、今ポタージュよそうから、サラダとかだし巻き卵とかも運んでくれ」

「むぃ~」


 今朝の献立はどれも単純だが、昨日二人で作った晩御飯の残りが主。

 朝からキッチンに立ったのは、どちらかというと奏のお弁当が主だった。


「にしてもいいのか奏?」

「むぇ?」

「ほら、お弁当の件。大して料理上手でもない俺に任せちゃって」


 実際の所、かなり不安ではある。

 なにしろ奏は綿貫家の社長令嬢、舌の肥え具合はおそらく俺の想像を超えてくる。

 それに本気を出せば、お雇い料理人に追加業務として話を付けるのも可能だろう。

 だのに。


「俺としては全く負担じゃないし、俺が朝ご飯当番の日だけでいい、って言ってたのも、昨日話し合った時に聞いたけど」

「トロがいーの」

「そうか? それは嬉しいな。これからもお弁当が必要なら言ってくれ、毎朝だって作るよ」


 そう言われては弱い。

 ………あれ? この言動増々ヒモっぽくないか?


「うん………あ」

「うん?」

「こんどの土曜日、おべんと欲しい」

「土曜日?」


 土曜日。

 部活動か何かか?


「文化祭の、準備があるの」

「ははぁ、なるほど」


 そうか、高校の文化祭だと平日に限らず土日も集まって何かやるのか。

 経験が無いとはいえ、この返答はいかにも娘に対する不器用な父親の様だった。


「くるよね?」

「言うまでもないな」

「ふひぇ」


 ………奏の調子が戻るにはまだまだかかりそうだ。

<>(^・.・^)<これからそれなりの頻度で更新出来たらなぁと思っております


<>(^・.・^)<ご意見、ご感想お待ちしております

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