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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
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其の二 ゼル伝とか騎士王伝説とかのアレ

 シンミの訓練が一段落したので、何はともあれ一服する。

 彼女が淹れるお茶はとても美味で、巫女服の美(少?)女がお盆に湯呑を二つ載せて運ぶ光景は、絵になるような気がしなくもない。

 暖かく湯気を発するそれを、二回ほど息を吹きかけて冷ましてから口に付ける。

 やはり美味い。

 以前頂いたリシャール君のスポーツドリンクが美味かった話をシンミにしたら、何故か奮起してお茶を淹れてくれたのが始まりだ。

 ………………運動の後にはスポーツドリンクのほうが良いのでは、とも思ったが、それは口にしてはいけないのだ。

 まぁ、せっかく頂いているお茶にケチを付けるのはマナー違反だろうことは、俺でも知っている。


「うまい? うまいっ?」

「………………ああ。美味い」

「でしょ〜? だから言ったんじゃんかー、アタシのお茶は美味いぞーってー」

「いや、本当に美味い。想定外のレベルで」

「トロ君の想定内のお味ってどんなんだったのかなー?」

「………………あ、いや、違う、お前は何か誤解をしている。俺が言ったのは、良い意味で、だ」

「ふーん………………まー、そーゆーことにしてやっかなー」


 お茶菓子として出された煎餅を噛りながら、縁側(のような場所)でお茶を啜る。

 並んで座るシンミは俺と同じ向きで外を向き、足をプラプラさせていた。

 非常に長閑な光景だ。

 後一つ――――――いや、一人居れば完璧なんだが。

 居ない人のことを気にしても、仕方がないか。

 ………………と、お茶と煎餅でリラックスしたお陰だろうか、ふと先程の会話を思い出す。

 俺が座禅を組みながら葉を舞わせていたときの、シンミの言葉。


「なぁ、シンミ。お前、あの剣の銘が分かったかも、って言ってたよな」

「おー、覚えてるのかー。意外と記憶力いいんだねぇトロ君はー」


 右手に持っていた湯呑を要求されたので返すと、それを盆に載せてシンミは奥へと入っていった。

 暫くすると再び姿を現し、『こっちに来い』と言わんばかりに手招きをする。

 彼女の顔は大分ニヤケていて、『正体不明の剣』という神秘的なフレーズに興奮しているのが丸わかりだったが。

 話の流れ上、剣の元に連れて行ってもらえるのだと思いつつ立ち上がり、シンミの後に続く。

 中を歩きながら、思うことが一つ。

 この神社、見た目よりも内側の広さが半端ではない。

 百メートル程廊下を歩くだけで、既に部屋の襖を五・六個見つけた。

 最初にここに来たときは俺の妖術と妖怪名を占ってもらったが、その時に色々と歩き回されたことを、未だによく覚えている。

 確かに、あの部屋には色々と豪華そうな物があった為、そのように厳重にするのも分かる、のだが。

 ここまで広くて部屋が沢山あるとなると、ここは神社というよりもむしろ――――――


「さ、ココここー」


 考え事をしている内に件の剣の部屋に着いたようで、シンミが襖を開けてくれた。

 ビズと来た時に見た、あの剣の部屋だ。


「………………おぉ」


 思わず息を呑んだ。

 そこには相変わらず、持ち手の部分が異様に太い、一振りの刀が、まるで聖剣か何かのように刺してあった。

 ………………だが、俺の感覚が正しければ、前よりも纏っている雰囲気が違うような気が………………?


「おー、分かるんだー。やっぱトロ君は選定の剣抜いちゃったりするー?」

「それはどこぞの騎士王さんだろう………………というか、何故気付いた? そんなに俺は分りやすいか?」

「前よりも格段には、ねー」


 そう言いつつ、シンミは俺の九つある尻尾を指す。

 指さされるままについ、と視線をずらすと、そこにあったのは。


「…………………成程」

「ねー」


 九つある尻尾の、その全てがぴんと上を向いている。

 これでは確かに、口に出していなくともわかってしまうだろう。

 なんというか、尻尾は口ほどにものをいう、という感じか。

 普段はあまり意識しないことだが、<白九尾>である俺は感情の機微を尻尾で表してしまうこともあるようだ。

 唖然としていると、シンミが呆れたように言う。


「少し前までは、ここまでわかりやすいわけじゃなかったけどねー。あの奏ちゃんの一件から、心が元気になったんじゃない?」

「そうかもな」


 確かに、前よりも、自分に対して抱いていた不信感が安らいだような………………そんな気がしている。

 それが何処からくるものなのかは、今の俺には分からないが。

 とはいえ、これも何故だかは分からないが、それはそれで心地よいように感じてもいる。

 俺は知らない感覚なのだが、もしかしたらビズや一之助さんのように内面を見るのが得意な人に見てもらったら、この原因がわかるのだろうか。

 と、思案を始めた俺を、シンミがのぞき込む。

 自分でどう思っているかは分からないけれども、シンミはしっかりと美人なので、こういうことをされるといろいろと誤解してしまう人も、中にはいるのではなかろうか。

 俺の意識を引っ張れたシンミは右手を延ばし、祭壇のような場所を人差し指で指す。

 ――――――すごくどうでも良いことだが、人差し指なのに人以外を指すってなんか変な感じしないか?


「まぁまぁ、取り敢えずあそこまで進んでくれちゃってよー」

「あそこ、って――――――あそこか?」

「うん、そこそこー」


 確認した場所は、やはりどう見ても祭壇だ。

 神社の行事で、神主さんか何かがシャンシャンしながら踊るところだ――――――別に神主さんをプロデュースする音ゲームとかそういうことではなく。

 シンミはためらう俺を置いて、どんどん進み、祭壇の向こう側の襖を開け放つ。

 散々階段を下りたのでここは地下室のはずなのだが、どういうことか青空の下の森林が露になる。

 こうなると、本当に聖剣みたいに見えるようになるから不思議だ。

 いや、元々持っているオーラは、確かに聖剣とか言われても納得のレベルなのだが。


「――――――さぁ、若人よ。冒険への一歩を踏み出す資格を其方が有するかどうかは、その剣が見極めてくれるだろう――――――」

「………………」


 シンミはシンミで、テンション上がってるのが一発で分かる浮かれぶりだ。

 確かに、俺もどっちかといえば抜く側より見守る側の方が好きなので、気持ちは分からないでもないこともないこともない――――――要するによくわかる。

 でもまぁ、ここで進まないと、「どうした? 遥かなる旅路の始まりだぞ?」とか言われて強制的にイベント進めないといけなくなるのは明白。

 まぁ、じゃあ行くか。


「………………おぉ」


 一歩踏み出した途端、確かに重圧がすごくなった。

 存在そのものを値踏みしているかのような、出自生い立ちの全てを一から走査されているかのようなプレッシャーを、びりびりと感じる。

 シンミは剣のそばで涼しい顔をしてるので、きっと彼女はこの圧を感じていないのだろう。

 こんなところで未熟を痛感する羽目になるとは思わなかったが、なにくそと足を動かす。

 ナサニエルとの戦いに比べたら、全然楽………………というか進むだけならサルにだってできる。

 そんなことも出来ないのでは我に近づく素質すらない、と判断されているようだ。

 ――――――そんなわけないだろ。


「――――――さぁ今伸ばせその腕、その勇気! 両の手で未来を勝ち取るのだ!」


 シンミがうるさい!

 ちらりと表情をうかがうと、超イキイキしていて、より一層腹が立った。

 畜生、他人事だと思ってからに………………!

 そんな妨害(?)にも負けずに足を動かす。

 実際の距離は十メートルもない程のはずだが、体感的には二十倍近く引き延ばされている感覚だ。

 それでも一歩一歩、前を向いて体を前進させる。

 この剣の名前を知りに来たはずが、もう抜かずには帰れない。


「――――――――――――――――――――――――――――――――――――着いた」


 それから数分、歩き続けた甲斐あって、俺は無事剣の元までたどり着けた。

 近くで見ると、遠目で見ても分かった違和感が色濃く表れた。

 まず、あの時とは持ち手の色が違う。

 持ち手側の端に付いた硬球並みの大きさの球の色なんて、最初は薄い黄緑色だったはずなのだが、何故か今は深い黄緑色と薄い緑の中間のような色になっている。

 加えて、纏っている雰囲気がやはり全然違う。

 質量を持った鉄の塊、そんな風にはとても形容できない物々しさが、確かにその刀にはあった。


「――――――ふッ」


 右手で持ち手部分を持ち、左手で鞘を固く握る。

 そして力を込め、一息に――――――


「――――――おわぁっ!?」


 抜けた、いや、抜けすぎた。

 力を入れすぎたのか、右手に握った刀ごと思い切り後ろに倒れこんだ。

 尻尾の弾力で事なきを得たものの、もし尻尾が無かったら、この場で大惨事が起こっていたことだろう。

 一体どれほど固いのかと想像していたが、拍子抜け、どころじゃない程にびっくりした。

 しかしよくよく考えれば、シンミは「お前に抜けるか」と言っただけであって、「抜(・)け(・)た(・)ら(・)凄(・)い(・)」とは言っていなかった。

 意地悪なことをするものだ、と思ってシンミを見てみると。


「………………え、ウソ。抜けたの、まじで?」


 頬をひくひくさせ、なにか想定外が起こった様子だった。

 が、単純な力なら、俺よりもシンミの方が断然断然(大事なので二回)強いので、俺が抜けてシンミが抜けない、なんてことはないだろう。

 またまた、そんな手には騙されんぞ、という意思を込めてシンミを白けた目で見つめると、慌てたように両手を顔の前で振り始めた。


「い、いやぁ! な、ナンデモナイヨォ!?」

「白々しいぞ」

「あ、あー………………こほん。そうだ、何はともあれ、その刀の名前、教えないとだねー」

「――――――」


 露骨に話題を逸らしたが、まぁ別にいいや。

 そもそもここに来た目的はそのためだ。


「その刀の名は――――――――――――透鳳凰(すきほうおう)。《原子怪異》の一つだね」


 持ち手の球が、怪しく揺らめいた気がした。

<>(^・.・^)<クリスマスイベ感想


(あれ、俺の知ってるサンタさんと違うぞ……?)←サンタ婦長最終再臨絵閲覧後

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