第二十話
「……あれは、現実だったんだよな」
しんと静まり返った部室の沈黙を破るように、守が震えた声で呟いた。
初めて告白してくれた少女が天使に喰われ、消えるのを目の前で見た後、二人は地に根を生やしたかのような足を引きづるように部室まで帰ってきていた。
ちなみにあのとき現れた謎の天使は待ち伏せるつもりか、イスラエルより先に天界に帰っていたらしい。イスラエルがいなくなった後すぐに結界が解かれたことから唯香が推測した。
喰われた少女はどうなるのか……。
なんとなく想像がつくものの、それを否定してくれることを祈って唯香に守は尋ねた。
しかし唯香は暗い顔のままゆっくりと答えた。
「認めたくないけれど……現実よ。結界内で喰われた人間は……結界によってこの世界に“いなかった”ことにされ、何も無かったかのように消えるわ」
「そんな! ふざけんな――」
己の中の感情のまま叫ぼうとし、それをすぐさま押しとどめる。
あの強気な唯香が。常に他人の上に立とうとする唯香が。
悔しさに顔を歪めながら、目に涙を溜めていた。
唯香も自分と同じくらい、いや悪魔と言う立場上それ以上の悔しさがあるはずだ。それでも黙って堪える彼女の目の前で叫ぶなど、できるわけが無かった。
そしてその涙はとある決断を守にさせるのには、充分すぎた。
「双葉さん……。俺決めた」
「決めたって……何を……?」
はじめて見る唯香の女々しい姿に一瞬どきりとしながらも、守は自分の決意を告げた。
「今回みたいなことがもうないよう……俺も双葉さんに協力する。天使の迎撃にさ。……まぁ今回みたいに盾になることくらいしかやれなさそうだけどさ」
最後が自虐気味になってしまったが、気にすることは無いだろう。
目の前の驚いて、そして笑った唯香の顔を見れば、そう思えた。
「……そう。じゃあこれから覚悟してよね、キモ虫!」
「ちょ、その呼び名どうにかならないの!?」
――涙を拭って立ち上がった彼女は、もういつもの彼女に戻っていた。
これでフラないは完結という形で無期限の凍結とさせていただきます。
これまで読んで下さった読者の皆様、こんな不甲斐ない形になってしまい本当に申し訳ありません。
しかし今回で学んだこともあります。もし次の新作を出したときはどうかよろしくお願いします!




