旅の準備
翌朝、私の寝間着を着た女の人はベッドから起き上がった。ショートカットの綺麗な顔で
「ありがとう。この身体、頑張ってキャラメイクしたからロストしたくなかったんだ」
気弱そうな男の子の声で喋ってきた。私はずっと付き添っていたので眠くて
「ごめん、ちょっと寝るね。お母さんいい?」
「うん……私がこの子のお世話をするわ」
私は自分の部屋のベッドで眠ることにした。
起きると、ベッド脇の椅子に女の子が座って寝ていた。メモが置いてあって
「この子の肩を叩いて呼んでください。自動呼び出し機能があります」
書かれた通り肩を叩いてしばらくすると
「ふわっ!!びっくりした!」
やっぱり男の声で驚いて目を開けた。
「大丈夫?」
「う、うん。座ったまま寝てた」
女の子はそう言うと立ち上がり
「あ、空腹だね。何か食べてよ」
気を使ってきた。私は頷いてキッチンの貯蔵庫から干し芋とミルクの瓶を取り出して、食卓で食べ始める。女の子もテーブル越しに座り
「君のお母さんはお仕事に行ったよ」
「うん。教師なの。ナカマさんは何してる人?」
女の子はしばらく黙ると
「……冒険者かなあ。うーん……冒険者ってことにしといて」
「分かった。ナカマさんは何処に冒険に行ってたの?」
「えっと……話したかもしれないけど、ウサギジングウネココさんを追いかけてて、今、配信見たらスナイドの街に居るけど……君も行く?」
私は思わず立ち上がり
「行く!その変な名前の悪霊みたいなのにお父さんが憑依されておかしくなったの!!そいつ!絶対に許さない!」
「そ、そうか……ネココさんのプレイキャラって君のお父さんだったのかあ……」
女の子はよく分からないことを言うと立ち上がり
「ルフィナちゃん……一緒にネココさんを追うので良い?パーティー設定しちゃうよ?」
私は頷きながら、もうお母さんに書き置きを書いていた。「お父さんを探しにいきます。心配しないで待っていて。ルフィナ」そう書くと、今度はリュックサックに干し肉や傷薬や消毒用にお酒や下着やタオルや考えられるだけ詰め込んで旅の準備を始めていく。
女の子は突っ立ったまま、準備する私の様子を見ながら
「ルフィナちゃんやる気になっちゃった……ママにもう一回課金頼むしかないかなあ……でもプレミアムパス高いし……歩きだと遠い……僕らレベル低いし……うわーどうしよお」
ブツブツと何か言っていた。




