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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第一篇 大米合衆国篇〜ブラジル州〜

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第七十一頁 姉弟

一七三二四年四月六日(木)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア 丘の下の病院


 この日、クウヤが退院することが決まった。

 ビゼー、ロッド、ミクリ、アダン(バ)の四人はクウヤを迎えに行った。

 途中でジャックも合流し、五人で病院へ向かった。

 五人が到着した時には、クウヤは準備を終えていた。


「久しぶり、クウヤ。全然来れなくてごめん」


 ロッドが挨拶をした。

 ミクリとロッドはクウヤが喋れるようになった日以来、クウヤとは会っていなかった。


「いや、オレのほうこそごめん」


「う、うん」


 謝罪されると思っていなかったロッドは少し動揺してしまった。


「クウヤ・インディュラ完全復活だな!お前が元気に退院できてなによりだ。んじゃ、俺は行くわ。次の仕事もあるし、俺はもういらねぇだろ。仲間同士で仲良くやってくれ。じゃな〜」


 ジャックは左手をチョコンと上げて五人に背を向けた。


「ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


 ビゼーが初めに感謝を述べて頭を下げた。

 続いてロッドも感謝を述べ、頭を下げる。

 それを見てアダン(バ)はコクリと首を前に倒し、ミクリは綺麗な姿勢でペコリとお辞儀した。


 ジャックは「クウヤ、無理だけはすんなよ〜」と背を向けたまま最後の言葉をかけた。


「はい!」


 とクウヤが返事をすると、ジャックは右手を大きく上げ、二、三回横に振ると病院を出た。


 五人も退院手続きを済ませると病院を出た。

 ホテルに戻る道すがら、会話をする。


ロ:「じゃあ改めて、退院おめでとう!」


ク:「あ、ありがとう」


ア(バ):「もうけがすんなよ!」


ビ:「アダンの言う通りだ。経済的にも大打撃だからな」


ク:「うん。きをつけるよ……」


ビ:「言ったな?」


ク:「う、うん」


ロ:「考え直してくれたってこと?」


ク:「だってこれいじょうおまえたちにめいわくかけられないし……」


ビ:「分かってくれて良かった。そういやお前には言ってなかったけどさ、一昨日、アダンと一緒にミロクさんと会ったんだ」


ク:「え……」


ビ:「会ったっつうか向こうから来たんだけどさ。あの人、何の理由もなく人を殺すような人じゃねぇよ。話してる感じからしてもそこまで悪い人には見えねぇんだ。俺は色んな人と関わってきたから話し方とかでだいたい分かるんだ。その人のひととなりがさ。……ミロクさんの話聞いてみてもいいんじゃねぇか?」


ク:「あ……」


ア(バ):「やさしそうだったぞ。こわかったけど」


ク:「う〜ん……わかった」


ロ・ミ「良かった!」


ビ:「ミロクさん、また決闘があるんだってよ。この前の掲示板にまた告知が出てた。それが終わったら全員で行こう」


ク:「おう」


ロ:「変な気起こしたら、俺たちが全力で止めるからね!君が寝てる間に結構強くなったから」


ク:「だ、だいじょうぶだよ」


 一行は笑った。

 朗らかな雰囲気でこの日はホテルまで帰ったのだった。



一七三二四年四月十三日(木)

大米合衆国・ブラジル州 ブラジリア サンタテレサ・デ・ラ・クルス城


 ミロクは予定されていた決闘にも勝ち、四十連勝を飾ったとのことだ。今回は死人は出なかったらしい。


 決闘終了後数日してクウヤらはミロクの元を再度訪れた。

 クウヤは久方ぶりにアダン(エ)と再会した。

 しかし彼らには挨拶以外の会話はなかった。

 城の前に着き、クウヤは二回戸を叩きゆっくり開けた。


「クウヤ、こういう時は三回叩くんだよ」


 ロッドがマナーを注意する。

 城の中には前回クウヤが会った時と同じ場所にミロクが立っていた。

 クウヤは不機嫌な声色でミロクと会話を始めた。


「おい!ほんとうのことおしえろよ!」


「何のこと?」


 ミロクはとぼけた顔で言った。

 クウヤの怒りメーターが少し上昇した。


「はっ?父ちゃんと母ちゃんのことにきまってんだろ!」


「そのこと?本当のことも何も、あなたの記憶が正しい。それ以上でもそれ以下でもない!」


「んなことオレだって知ってる!きおくちがいがあるかもしれねーからおまえにきいてんだろうが!」


「私から言えることなんて何もない!あなたの記憶が全て正しい。自分を信じなさい!」


「じゃあ、てめえが父ちゃんと母ちゃんをころしたのか?」


「そう言ってるでしょ!何度も同じことを言わせないで!」


 ビゼー、ロッド、ミクリ、アダン(バ)はこの辺りで雲行きが怪しくなったのを感じた。

 いや、もっと前から感じ取ってはいたが、現実を認めたくなかったのだ。


「じゃあてめえがころされてもモンクねぇな?」


「殺す?あなたが?私より弱いのに……強がってるの?」


「だれがよわいんだよ?」


「もう一回言わないと分からないの?脳細胞腐ってるんじゃない?」


「てめえ……ぜったいころす!」


「はぁ……半締めって思ってるより難しいんだよ。私も無駄な殺生はしたくないんだよね」


「しなくていい。かわりにオレが先にやってやる!」


 クウヤはミロクに突撃した。


「——!止めてくれ!ロッド!」


 ビゼーは叫んだ。

 ロッドはすでに攻撃モーションに入っていた。


「棒・女王の札! QUEEN of WANDS!」


「邪魔しないで!」


 ミロクはロッドを睨みつけた。

 物理的な衝撃はなかった。

 恐らく生気をぶつけたのだろう。

 技の発動を無効にし、ロッドは後方に吹っ飛んだ。

 二、三回体の側面を床に打ちつけた。


「うっ……」


 すぐには立ち上がれなかった。


「よそ見、してんじゃねぇー!」


 ミロクがロッドに構っている隙を狙ってクウヤが剣を振り翳す。

 ミロクは素早く右腕を剣化し、クウヤの剣を受け止めた。

 受け止めたままビゼーの方を見て言った。


「今のうちに二階に行きなさい!そこなら安全だから。そこの女の子は外で待たせておいて。酷いものを見せてしまうかもしれないから」


 ミロクはクウヤを弾き飛ばし、攻撃に転じた。

 どう見ても本気は出していない。

 ビゼーらの移動経路を確保しながらクウヤと闘っていた。


「アダン」


 ビゼーはアダン(バ)を呼んだ。


「なんだ?」


「ミクリと一緒に外で待っててくれるか?」


「わかった!いこうぜ、ミクリ」


 ミクリは首を振った。


「私も見る」


「駄目だ!」


 ビゼーが声を荒げた。

 ミクリは萎縮してしまった。


「外にいろ。必ず戻る。クウヤも連れて」


「はい……」


 ミクリはアダン(バ)と共に城の外に出た。


「ロッド!大丈夫か?」


 続いてビゼーは倒れたロッドの元に寄った。


「立てるか?」


「うん……っしょ……さっきのはなんだろう?空気砲を全身で受け止めたみたいな感触だった」


「ただの生気だ」


 アダン(エ)が言った。


「何の変哲もない生気そのものだ。塊状にして投射したのだろう」


「ノーモーションでか⁈」


 ビゼーは尋ねた。


「かなりの手練れのようだからな。あの生気濃度があれば朝飯前だろう」


「ねぇ、アダン。ミロクさんの生気濃度ってどのくらいなの?」


 ロッドはゆっくり立ち上がりながら質問した。

 アダン(エ)は機械を作動させた。


「詳しくは時間を置かなければ測定できないが、だいたい今は三十パーセント前後じゃないか?それよりさっさと移動するぞ」


 アダン(エ)は二階へ歩いていった。

 彼を追ってビゼーとロッドも階段を上がった。


 上から観る姉弟の剣戟は凄まじかった。

 ミロクが押しているように見えるが、クウヤも負けてはいない。

 刃がぶつかり合う音をBGMにビゼーは考えていた。


(どうしてこうなった?ミロクさんは争いたくなかったんじゃないのか?せっかくクウヤの考え方も変わったのに……何であんな焚き付けるようなことを言ったんだ?あの言い方でクウヤが鎮まるわけねぇのは知ってたはずだし。どうして?)


「結果が出たぞ」


 アダン(エ)が言った。


「三十一パーか。大方想定通りだな」


「さすが専門家……」


 ロッドは舌を巻いた。


「因みにクウヤの方は?」


「二人一気に見ることはできない。もう一度待て」


「ごめんなさい」


 アダン(エ)は再び測定を始めた。


「ねぇ、ビゼー。こう見るとクウヤも負けてないよね?」


「あ?あぁ、そうだな……」


「……始まっちゃったね」


 ロッドはビゼーの答え方から彼が何を考えているのか察した。


「もう俺たちじゃ止められない。見守ろう。そして祈ろう。それしかできない」


「分かってる。なぁアダン」


「……」


 アダンは二人の戦いを真剣に見つめていた。

 集中していて二人の声に気づかなかったのだ。


「アダン?アダン!」


「——!なんだ?」


 ようやく気づいた。


「一ヶ月何もしなくても能力が強化されることってあるか?」


「数年単位で見れば珍しくはないが、一ヶ月ではほとんど見られないだろう。しかしありえないとは言い切れない。精神的成長によって能力が強化されることもある。以前から言っているように、肉体よりも精神の状態の方が生気や能力に与える影響が大きいからな。加えて、それとは別に生気濃度が突然変異的に大幅に上昇する状況が三パターンある。一つは王道の性交渉だ。生命の根源たる箇所の接触は生気に多大な影響を与える。二つ目は高生気濃度者こうしょうきのうどしゃとの継続的接触。長時間、閉鎖空間で共同生活を送ったりすると、突如として生気濃度が爆発的に上昇することがある。三つ目は超高濃度生気の瞬間的接触だ。恐らく、今回はこれだろうな。クウヤ(あいつ)は彼女の腕に体を貫かれたんだろう?であればほぼ確実に影響は受けるだろう。超高濃度生気に当てられればなんらかの変化を起こすことは十二分にある。貫かれたともあれば体内で超高濃度生気を受けたことになるからな。体が急激な変化に耐えられなくなってしまう場合もあるが、眠っている間に適応したのかもしれないな。受け止められたことに関しては完全に才能だろう」


「それで動きが良くなってるってことか」


 ビゼーは納得した。


 一階ではしばらく殺陣を裕に超越する激しい戦いが繰り広げられた。

次回 左腕

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