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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第二篇 欧州篇

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第百三頁 自信

「おい!クウヤ!聞こえてんのか?おい!」


 ビゼーは大声でクウヤに呼びかける。

 しかし返事はない。

 彼は明らかに自分の方を向いているのだが、うんともすんとも言わない。


「ったく!アイツ!また人の話……」


「待って!ビゼー!なんかおかしいよ?」


 ロッドが言った。

 そう言われ、クウヤを注意深く観察してみる。


 次の瞬間、クウヤが突然こけた。


「何もないとこでこけて……大丈夫か?ん?」


 本来こけたのであれば何らかの音がするはずである。

 しかし無音だった。


 不思議に思っているうちに今度は指を痛めたような素振そぶりを見せた。

 

「ん?」


 彼にはクウヤが何をしているのかさっぱり分からなかった。

 その内にクウヤは理由がわからないノックを始めた。

 続いて壁を伝うように歩き出した。


「何やってんだ?」


「分からない、けど……」


「何かあったってことだよね?普通じゃなさそう……」


「壁ができたのかもよー?」


「はっ?んなこと……」


 ビゼー、ロッド、スカーレッド、クリスティナの四人で話し合いを進める。


 全員でクウヤの動きを観察する。

 真っ直ぐ進んでは直角に折れる動きを何度か繰り返している。

 その様子を彼らだけでなく、ロックウェルまで見ているという奇妙な光景だ。


「あれを見たら……」


「どう見ても壁はできてるよね?」


「認めざるを得ねぇな……」


 スカーレッド、ロッド、ビゼーはクウヤのおかしな行動を正当化する理由を見繕った。

 しかしその肝心の壁は彼らの目には見えない。


「あの人、壁を作る能力なの?」


 クリスティナが問う。


「いや、知らない。さっき本人が言ってたのが能力だとは思うけど」


 ロッドが答えた。


「だとすると、あの人の知識で壁を作り出してるってこと?」


 スカーレッドが問う。


「別の力かもしれねぇ。能力二個持ちも全然あるらしいしな。いずれにしろ情報がねぇ。とりあえず近づいてみるか」


 皆、賛成した。

 クウヤとロックウェルが彼らからなるべく離れた瞬間を見計らって動き出した。

 歩いているとアダンが何かにぶつかった。


「いたっ!」


「気をつけろよ……」


「だってどこにあるかわかんねーじゃん!みえねーんだから!」


 鼻を摩りながら言った。

 アダンがぶつかったあたりをビゼーはノックする。

 コンコンと音がする。


「こりゃノックしたくなるな」


「ビゼー、冗談言ってる場合じゃないよ……」


「悪ぃ。壊せるか?」


「やってみる」


 ロッドはデッキを手に取った。

 ワンテンポ置いてからカードを引いた。


「なんだよ?今の間?」


「あっ、いや、この前のこと思い出して……」


「この前?」


「モンブランでのこと……」


「今かよ……なんかあったのか?」


「あの、俺が最後に引いたカードなんだけど……」


「使う前にお前がぶっ倒れた?」


「そうそう。あれ実は大アルカナのカードだったんだよね。大アルカナはちゃんと全部抜いたはずだったんだけど。あれだけ入ってたみたいで……」


「なんのカードだったんだ?」


「DEATH……『死神』のカードだよ」


「えっ……」


 一同絶句した。


「ごめん!関係なかったよね!多分抜いたつもりでいただけだったのかも。ははは……」


 笑いながらカードを一枚選んだ。


「剣・切り札! ACE of SWORDS!」


 お決まりのモクモクから長い剣がお目見えした。

 ロッドは剣を見えない壁に向かって飛ばした。


 ——キンッ!


 甲高い音を立てて弾かれた。

 その後二、三度切りつけてみるが壊れる様子はない。


「無理っぽいね……」


「私もやってみる。危ないから離れて」


 ロッドが断念すると、続いてミクリが挑戦意欲を示した。

 皆が壁から距離を取ったのを確認すると杖を構えた。


「石澤流爆破魔導・其ノ伍 TNT」


 ——バンッ!


 耳を覆いたくなるような爆音が響く。

 しかし壁にダメージを与えることはできなかった。


「ごめんなさい。できなかった……」


「う、うん。それはいいんだけど、ミクリちゃん……爆発させるなら先に言ってほしかったかな……準備が……」


 スカーレッドが耳を気にしながら言った。


「はっ!ごめんなさい!」


 脚をきっちり揃えてスカーレッドの方を向き、手も揃えて深々と頭を下げた。


「そこまで謝んなくてもいいよ!」


 かしこまった謝罪にスカーレッドの方が罪悪感を覚えてしまった。


「ねぇ、パン屋君。斬撃も爆破もダメだったってことはどうすればいいの?」


「内側からなんとかしてもらうしかねぇな」


 一行は激戦(?)を繰り広げるクウヤとロックウェルを見た。



(クソッ!どうすりゃいいんだ?うごきはわかるのにこうげきがきかねー!)


 クウヤは状況を覆せないままでいた。

 様々試しているもののまるで効果がない。


「逃げ回ってるだけか?俺としてはバテてもらったほうがいいんだけどよ」


 ロックウェルの方は本気を出していないらしく、まだ余裕十分といった様子だ。

 一方クウヤは攻撃を避けながら、攻撃の試行錯誤をしている影響で体力の限界が近づいていた。

 一瞬でも隙を見せれば命はない。

 動きを止めることはできない。


 ロックウェルは余裕な表情で語る。


「もう楽になった方がいいんじゃねぇか?知の暴力(クイズ)で俺の知識とお前の知識の差がそのまま戦力差になってる。そんでもって、受験会場テストセンターで外部との連絡手段はねぇ。声を届けるにもこんなちゃっちぃもんがねぇといけねぇ。この中にいる間、信じられるのはテメェの頭だけだ。それが嫌ならここから抜け出すしかねぇが……その方法は俺を倒すことだけだ。分かるか?テメェは入院患者と同じなんだよ!外に出ることを夢見るだけでそのままくたばるんだよ!諦めることもしねぇで」


 この言葉にクウヤは笑った。


「へー。にゅういんしてるってことはまだなおるかもしれないってことじゃんか。あきらめるひつようねえよ。それに……たいいんだってできるからな」


「ああっ?」


 ロックウェルにクウヤの声は聞こえない。

 しかし表情を見れば、ネガティブになっていないことは分かる。

 ロックウェルはクウヤに殴りかかりにいった。

 今までと比べてそのスピードが早くなっている。

 決着を意識し始めたのだ。


 避けながら考える。


(なんとかかつほうほうかんがえないと!ちしき?あたまよくなればいいのか?……いや、ムリ!でもなんとかしなきゃ!……どうすりゃいいんだ?あっ、さっきビゼーがなんか言おうとしてたよな?……今からあいてのことはしれないって言ってたよな?じゃあどうする?コイツはオレのことぜんぶ知ってるって……父ちゃんと母ちゃんのことも知ってんのか?でも声はきこえないんだよな……あっ!)


 意を決して、距離を詰めた。

 ロックウェルに攻撃する、と見せかけて組み合った。

 ロックウェルの胸元にはマイクが付いていた。

 それに向かって話す。


「なあ?おまえオレの父ちゃんと母ちゃんのこと知ってんのか?」


「クソッ!テメェ……興味ねぇな。テメェの家族構成はテメェの情報だ。だが、テメェの両親はテメェの情報じゃねぇ」


「——!」


 何か閃いた気がした。


(ってことはアネキのこと。いることは知ってんのか?でもくわしくは知らないはず!知らないことがあったらコイツはどうなるんだ?たしかめるか!)


 一度距離を取る。

 クウヤは逃げることをやめた。

 ロックウェルの真正面で仁王立ちする。


「ようやく死ぬ気になったか」


 ロックウェルは笑ってクウヤに近づいた。


(この技は知らねーだろ?)


 タイミングを計る。

 ロックウェルがクウヤのパーソナルスペースに入った時だった。


「ソニック!オン!」


 ロックウェルの横を音速で駆け抜けた。

 

 突然視界から消えたクウヤに彼は驚いた。

 

 ——バキッ……


「何?」


 体の音ではない。


 バキバキ……


 クウヤの音でもない。

 自分が放っている音でもない。

 正体不明の音に不安が過った。

 その時だった。


 バリーン!


「なっ……」


「あっ!」


 外野も含め、全員が声を上げた。

 見た目からは何も分からない。

 しかしその場にいた全員が確信した。

 見えない壁が崩れ落ちたのだ。


「なぜだ?」


 大男は見た目に似つかわしくない情けない声を出した。

 代わりにクウヤは元気満々である。


「さっきまでのよゆーはどうした?やっぱ知らなかったんだな。ソニックのこと。知らねーことがあったらこうなんのか!おわりだ!」


 男の表情から自信は消失していた。

 目が死んだ大男を目掛けてクウヤは精一杯剣を振るった。

次回 親玉

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