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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第二篇 欧州篇

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第百二頁 不利

 立ち上がれないクウヤを見下みおろしながらロックウェルは自らの技をひけらかす。


「でもって、クイズってのは参加者の中で最も知識が多い奴を決定する競技だろ?俺の技も同じだ知の暴力(クイズ)。俺とお前のうちどちらがより相手のことを知ってるかを競うんだよ。知識一つにつき一ポイントがつく。ポイントが高い方が有利になるわけだ。俺はお前を知っている。だが、お前は俺をほとんど知らない。そこの差だ。さっきの攻撃が通らなかったのも知識の差。勉強量の差だ。俺はお前の行動を予測し、先回りすることで世界各地でお前と顔を合わせた。当たればそれが知識として俺の魔力元たくわえになる。外れてても一緒だ。『その行動はしない』っつう知識になるからな。俺はここしばらくテメェのことを考え続けた。お前ならどうするか。次はどこに行くのか。何をするのか。ついていったら不正行為カンニング扱いで知識として貯蓄インプットされねぇ。だから必死に頭を使った。的中率はまあまあだったな。ま、一年以上かけたおかげでテメェのことを知り尽くした。結果的にテメェを軽く捻り潰せる程度の戦力差ができたってわけだ。分かるか?俺の前では多くを知った奴がつえぇんだ。腕っぷしなんてなんの役にも立たねぇんだよ!そっちの方がフェアだろ?肉体的な努力より頭脳的な努力の方が報われる可能性はたけぇんだ。余程の天才うちゅうじんでもない限り、人間の脳味噌の容量なんて大して変わんねぇ。才能より努力が功を奏す。いい世界じゃねぇの。……おっ、立ったか!」


 長ーい話を聞く間にクウヤは肉体を回復させた。

 しかし彼は長い話は苦手だ。


「ずーっとなんか言ってっけど、オレのことが好きなんだろ?けっきょく。オレは男より女の子にモテたいんだよ!」


「いつ俺がそんなこと言った?あいにくテメェに対する好意的な感情なんか何一つ持ち合わせてねぇよ。別に恨みもねぇけどよ。済まねぇな、自惚れ野郎」


「てれかくしか?」


「よっぽど寿命を迎えてぇらしいな!」


 ロックウェルはクウヤに猛攻を仕掛けた。

 クウヤに攻撃の隙を与えず、軽いパンチを何十何百と叩き込む。

 

 それをクウヤはなんとか剣でガードする。

 攻撃は通用しないが、防御は機能しているようだ。


(チッ……この剣。前まで使ってたやつと違うな。情報がねぇ。コイツはちょっとした想定外だが、知識の総量は圧倒的に俺に分がある。問題なしだ!)


 ロックウェルは手数で押し切ろうとした。そのまま攻撃を続ける。


 一方、クウヤは防御で時間を稼ぐ間に対策を考える。


(剣でこうげきをうけるのはなんとかへーきか……でもどうしよ?てきにダメージが入んないんじゃかてねえ!アイツはオレのことゼンブ知ってるっつってるよな?オレもアイツのことを知ればいいんだ!でも……どうやって?あっ!)


 妙案を思いついた。

 クウヤは目の辺りに生気を集めた。


(これで、なんか見えてくれ!)


 彼自身もすっかり忘れていたが、こうすることで敵の動きがなんとなく分かるのだ。

 徐々に雲のような煙のようなものが見え始めた。

 一度距離をとる。


「無駄だ!」


 敵はすぐさま距離を詰めようとする。


 クウヤは煙に注意を向けながら剣を構えた。


「剣がダメならこれならどうだ!」


 クウヤは剣を大きく振った。

 この時敵の体は剣の射程に入っていなかった。

 剣を当てるのではなく、剣を通して生気の塊をぶつけようとしたのだ。

 アダン(エ)と特訓していた時のそれとは質や量が全く別物に成長している。

 彼はいろいろなことを試してロックウェルの行動を()()()とした。


 作戦1 生気の塊をぶつけてみよう作戦


 しかしロックウェルは冷静に右手でクウヤの生気の塊を払った。

 

「——あっ!」


「多少は頭使ったのか?それが出せるのは想定の範囲内だ。俺は()()()()ぞ?」


「くっ……」


 失敗。

 次なる作戦。

 

 作戦2 体術で攻めてみよう作戦


 フィッシャー人間科学研究所で体の使い方を学んでいる。

 煙で相手の動きを見つつ、隙のある箇所に打撃を加えてみる。

 相手に作戦がバレないように剣は持ったままだ。

 しかし見事なまでに失敗した。

 大男相手にリーチが全く足りない。

 初撃を簡単に止められてしまい、反撃のパンチを食らった。

 半分は剣で防御できたが、半分腕に当たってしまった。

 なんということもない攻撃だが、非常に堪えた。

 受けた箇所が麻痺している。


「ほ〜う。いい反応だ。仲間のおかげか?剣がダメなら体で、な。その発想には行き着くのは当然だ」


 完全に見破られている。


(クソッ!ほかのさくせん……思いうかばない!マジでかてないのか?)


「クウヤ!」


「——!」


 ビゼーの声が聞こえた。


「攻略法だ!聞け!」


「チッ……余計なことすんな!……おっ?」


 ロックウェルは敵気を放った。

 しかし効果はなかったようだ。


「二度も同じ手は食らわねぇか……」


 ボソリと呟く。


 その間にもビゼーは喋り続ける。


「いいか?奴の能力は知識を要求するものだ!でも今から相手のことを知ることは実質不可能!たとえ何か奴の情報を手に入れたとしても奴の知識量には及ばない!だから………………」


「うん?ビゼー?」


 クウヤの耳にビゼーの言葉が届かなくなった。

 遠目から彼のことを見ても何か喋っているはずだ。

 しかし何も聞こえない。

 心なしか風の音もやや小さくなっている。

 困惑するクウヤにロックウェルの声が届いた。


受験会場テストセンター。カンニングは不正行為と見なし失格だ。今回は未遂ってことで特別に許してやる。信じられるのは己の頭脳のみ。言ったよな?フェアじゃねぇってよ。この空間じゃ外部の声は届かねぇ。中での声すら届かねぇ。俺の声が聞こえてんのはスピーカーを通してるからだ。テスト中に聞こえるのはリスニングの音声だけだろ?あぁ、あと試験官が残り時間言うか?そんなことはどうでもいい。極限の集中環境は用意した。誰にも邪魔されない受験戦争だしぬきあいの始まりだ」


 ロックウェルの手には確かに小型マイクとスピーカーが握られていた。


「ついでに種明かしだ。俺がこうやってお前に俺の魔力について情報提供してるのは俺のためだ。お前に情報を与えることにもなるが、お前の頭じゃ全部は理解できねぇだろ?しかも一回しか言ってねぇからな。だが、俺が言葉にして喋ることで、俺自身を俺が知ることにも繋がる。プラマイゼロに見えて実はそうでもねぇんだ」


 ロックウェルは持ち物を投げ捨てた。

 口を開いて、何かを叫ぶ。

 膝を少し曲げ、両手で拳を作って、脇腹に置いている。

 「うおおおぉぉぉ〜!」というセリフがよく似合いそうなそんな体勢だ。

 しかし声は聞こえない。

 気合いの雄叫びを本当に挙げているかは定かではない。

 叫び終わったような様子を見せると、クウヤの方に近づいてきた。


 クウヤは全く理解ができていなかった。


(どうなってんだ?なんだこれ?しずかなへやの中にいるみてーだ!アイツの言ってることなんかわけわかんねーし!ビゼーはなにを言ってくれようとしたんだろう?ああ!とにかく一人でやるしかないってことだよな?あってっ……)


 クウヤが後ろに足を踏み出すと何かにぶつかった。

 しかしそこに躓く要因になり得るものが何もない。


「なんだよー!どうなってん、いったーっ」


 頭を抱えようと手を後ろに出すと、両人差し指、中指、薬指先に衝撃が走った。危うくこれら全て突き指するところであった。

 クウヤは右手の中指第二関節でノックするように自らの後ろを叩いた。


 ——コンコン。


「はっ?」


 鳴るはずのない音が聞こえる。

 クウヤはそこに手のひらを付けた。

 ピタッと張り付く。

 外の景色はしっかり見えている。しかし手はそれ以上先にいかない。

 ()()()()()がある。

 

 そんなことをしている間にロックウェルはどんどん近づいてきた。

 

(うしろにはいけない!よこは?)


 ロックウェルとの距離を保ちつつ、横に移動した。

 クウヤが横壁(?)にぶつかると、ロックウェルは動きを止めた。

 その後、先ほど投げ捨てたマイクを拾って喋り始めた。


「部屋の広さの確認か。それくらいさせてやる。フェアにやりてぇからよ」


 投げ捨てた影響か声にノイズが混じっていた。

 

 クウヤはロックウェルの動きに十分注意を払いながら見えない壁同士の距離を確認した。

 彼は言葉にできなかったが、だいたい標準的な教室ほどの広さだった。

 クウヤが壁から手を離すと、ロックウェルは再びクウヤに突っ込んでいった。

次回 自信

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