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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第二篇 欧州篇

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第百一頁 知識

一七三二四年七月十九日(水)

欧州連合国・フランセーズ ヘルヴェティア国境付近



 一行はマルセイユに向けて、一度きた道を引き返した道を再び歩いていた。


「この景色二回目だね」


 ロッドが言う。苦笑いしていた。


「実質三回目だろ!行く時も戻る時も見る方向が違うだけで景色は一緒だ」


 ビゼーが言った。新鮮味がなくつまらなそうである。


「行くのに一週間。戻るのに一週間。また行くのに一週間。全部で三週間だもんね」


 クリスティナが言った。数字に合わせて折っていた指を親指、人差し指、中指と順に伸ばした。


「すみません!私が欧連に来ちゃったから……」


「すーちゃんのせいじゃないよ〜」


 申し訳なさそうにするスカーレッドをクリスティナがフォローした。

 世間話に花を咲かせていた時だった。


「やっと現れたか!探したぞ!」


 クウヤ、ビゼー、ロッド、ミクリ、アダンは最大限の警戒をした。

 そうしなければならない人物の声が聞こえたからであった。

 彼らにとって見覚えのある顔面。見覚えのある巨躯。聞き馴染みのある不快な声色。

 久しく会わなかったあの男だ。


「テメェら。どこで何してやがった?なかなか会えねぇもんだからよ。途中離脱フェードアウトしたもんだとばかり思っちまった」


「知り合い?」


 何も知らないクリスティナが問う。


「知り合いっちゃ知り合いだな。関わり合いにはなりたくねぇけどよ」


 クリスティナの方は見ずにビゼーは答えた。

 その答えにクリスティナとスカーレッドは二人で目を合わせた。「どういうことなんだろ?」という表情で互いの目を見つめる。


「なんでまたいるんだよ?」


 一方でクウヤは目の前の男に問うた。

 いつものような陽気なテンションではなく、ひどくぶっきらぼうに言葉をぶつけていた。


「さっき言ったじゃねぇの。俺はお前を探してたんだよ」


 当たり前だろ、とでも言いたげだった。

 

「オレたちいそいでんだよ!あとにしてくんねーかな?」


「無理な話だ。なぜなら今ここでお前を殺すからよ」


「殺す⁈」


 物騒な言葉にスカーレッドとクリスティナは声をあげた。


「そういうことだ。なんでこうなったのかは俺らにもクウヤ本人にも分からねぇ」


「剣士君、何したの?」


「さぁ?」


 ビゼーは彼女たちに簡単な説明をした。


「なにもしてねーよ!」


 話を聞いていたクウヤが彼らの方を向いてツッコんだ。

 一つ咳払いをしてから、向き直った。


「おまえなんかにオレはころされねーよ!オレのことうらむのはいいけど、なかまに手出すなよ!」


「んな余裕ぶちこいてていいのか?その油断が命取りになるぞ」


「そっちこそ!よゆーそーにしてるとおおケガするぞ!」


 互いに引く気はなく、口撃が続いた。

 クウヤの言葉を最後に沈黙が訪れた。

 風の音が鮮明に聞こえる。

 ロックウェルは吹き出した。


「ブッ。でけぇ口叩くようになったなぁ?そんなら、口だけじゃなくて行動で示せよ」


「やってやるよ……」


 クウヤは剣に手をかけた。


「待て!」


 ビゼーに呼び止められる。


「力貸す」


 すると彼はクウヤの方に右手を置いた。

 目を閉じて言う。


1.1倍上昇(パワーアップ)!」


「私も!特性解放エンチャント・防衛、耐久、熟練!悪性発現あかエンチャント・殺傷低下、対人×(たいひとばつ)!」


 ビゼーに便乗してスカーレッドは剣に対して能力をかけた。


「俺の能力は知ってるだろ?ちょっとだけお前の底力を引き出した」


「サンキュ!」


「私は剣に特殊効果をつけたから。防衛で防御性能を上げて、耐久は意味通りね。熟練で使いやすくなってるはず。初めて使うし、今までアルミ剣だったからね。一応……。あと人は殺さないように攻撃性能は落としといたからね。悪く思わないでよ。あの人は殺すとか言ってるけど、そんなことしたら()()ダメだからね!」


「わかった!ありがとう!」


 クウヤは二人の目を見て、感謝を述べてから前へ出た。

 一歩一歩踏みしめる。


「あ……待って!私も!」


 ミクリが出てきた。


「あぶねーから下がってろ!」


 クウヤは手を横に出してミクリが前に出ないよう塞いだ。


「あ……あの、そうじゃなくて……負けないように、お手伝い……」


「あっ、そうか……ありがとう」


 クウヤは勘違いを理解し、ミクリの方に体を向けた。


「いくよ?石澤流身体強化魔導其ノ壱・筋肉増強。其ノ弐・骨肉強化。其ノ参・内臓強化。其ノ肆・心肺強化。其ノ伍・発達神経。終わり……頑張ってね」


「なんかガッツリかけてくれたけどオレだいじょうぶなのか?」


 ミクリの「お手伝い」が異様に長かったため、クウヤは体が耐えられるか不安になった。


 ミクリは焦った表情で答えた。


「はわわ……ふ、不安にさせたかったんじゃないんです。死んじゃったらやだから……体の負担にはならないから。安心して戦って!」


「ならいいや。サンキュー!ミクリ!」


 ミクリの顔にパーっと笑顔の花が咲いた。


「ほぉ〜。ムキムキに鍛えてもらったってか?付け焼き刃の強化でちゃんと動けんのか?」


「なかまがオレのためにやってくれたんだ!ムダになんかしねー」


「フッ。かかってこい!」


「言われなくても!」


 口撃は終了し、クウヤは飛び出した。

 こころなしか体が軽い。

 剣もかなり馴染んでいる。

 さっそく剣を振るって攻撃した。

 

 敵はヒラリと躱す。


「その攻撃は()()()()……」


 避けられるも冷静に次の攻撃へ移る。

 反転してもう一度攻撃する。

 その間一秒未満。


「それも()()()()……」


 クウヤの動きを予測していたようにロックウェルは後方に跳んでいた。

 しっかりと着地を決めてクウヤに言い放つ。


「お前の行動パターンは全て知ってんだよ!そんな単調な戦い方じゃ俺を倒すなんてできやしねぇぞ」


「うるせー!」


 クウヤは再び飛び出した。

 どんどん的に近づいていく。


「懲りねぇな……」


 クウヤは意識して、先ほどとは異なる軌道で剣を振った。


「言われてからじゃおせぇんだよ!」


 再び躱されてしまった。


「仕事だってそうだろ?言われなくてもやるから評価されるんだ。アドバイスを受けてから同じことやるだけなら誰だってできんだよ!しょうがねぇから人生の先輩からいいこと教えてやる。フィードバックを受けたら、次の機会にゃそれプラスアルファもやるんだ。それが成長ってやつだ」


「なに言ってっかわかんねーよ!」


 クウヤは理解しようともしなかった。

 相手を睨み続ける。

 構えを怠らず、集中する。


「そんじゃ、俺には勝てねぇな」


 そうロックウェルは呟くと、今までとは反対に彼がクウヤの方に走って近づいた。


知の暴力(クイズ)!」


 男が叫ぶが、目に見えて変わったことはない。

 しかし何もないはずはない。

 クウヤは警戒した。


 敵を迎え撃つ。

 剣を振った。

 ——当たった。

 しかし斬った感触がまるでない。

 アルミ剣ならともかく普通の鉄剣である。


 男はニヤニヤしていた。

 確実に剣は男の胸に当たっている。

 しかし食い込んでいない。

 それどころか服すら切れていなかった。

 スカーレッドによって殺傷能力を落とされているにしてもおかしな現象である。


「言ったろ。俺には勝てねぇってよ」


「——グェッ……」


 ロックウェルの蹴りを腹に食らった。

 今までと比べて非常に痛い。

 ミクリに体を強くしているにも関わらず、過去彼と戦った中で一番の痛みである。

 思わず膝をついてしまった。


「おいおい、降参か?どうせ死ぬんだ。何も知らずに死ぬのも理不尽だろう?俺の力を教えてやる。俺の魔力は『知識』だ。相手のことを知れば知るほど強くなる。今の俺にテメェの知らねぇとこなんかねぇ。つまり()()だ!」


 ロックウェルは自慢げに語る。

 クウヤはまだ立てていない。


 外野はそれを見て心配する。


「クウヤ、大丈夫かな?」


「押され気味……だよね?」


 ロッドとスカーレッドは状況をネガティブに捉えた。


「なんだかんだ毎回勝ってるし、悲観することはねぇと思うけど……」


「けど?」


 ビゼーの言葉にアダンとクリスティナが二人で反応した。

 言い淀むようにしてビゼーは言う。


「ん、まあ、なんつーかさ、敵の雰囲気もいつもと違う。っつーかそんな気がして……調子がいいのか、なんなのか」


 ビゼーは、油断ならないと感じていた。

 それは勘でしかないのだが。


「ところで、アダンってあの人に会ったことあったっけ?」


 突如、ロッドが話題を転換した。


「えっ?いや、ない……かな?うん?」


「少なくとも俺たちと一緒にいた時は会ってないよね?」


「はっ?じゃあなんで俺らと一緒に奴を警戒したんだよ?」


 ビゼーが言った。


 ロックウェルのことを知らなければ、アダンはクリスティナやスカーレッドと同じ反応を示すはずだ。

 しかしそうではなかった。

 彼は考えた。


「いわれてみればそーだよな……みんながピリピリってしてたからじゃねーか?」


「?」


 全員の頭の上にハテナが浮かんだ。

次回 不利

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