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魔人キコウ録  作者: 长太龙
第二篇 欧州篇

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101/107

第百頁 最後

お陰様でプロローグを除いて100話に到達しました!

いつも「マジロク」を読んでくださる皆様の支え合って、大きな節目を迎えることができました。

本当にありがとうございます!

完結する頃には何話になっているか推測できかねますが、これからも続きを追いたいと思ってもらえる話を創り続けていきます。

引き続き応援をよろしくお願いします。

一七三二四年七月十三日(木)

ヘルヴェティア フィッシャー人間科学研究所 F5 大浴場前


 先に大浴場から出てきたのは男子たちであった。

 一人、背中から腰にかけての広い範囲を摩っている。


 彼は大浴場で、地上五メートルの高さから転落していた。

 地面に打ち付けられた際、背中と腰を強打した。人間の本能で頭だけはどうにか守ることに成功していた。

 地面は石材であったため、かなりの痛みを覚えたと思われる。


 しかし彼は能力者。

 大きな怪我はなく、無事(?)に帰還した。

 生きてはいるが、痛みは長引く。


「いってー……」


「だからやめときなって言ったじゃん」


「完全に天罰だからな」


 ビゼーとロッドが非難した。


「クウヤは?なんでおれだけ?」


「オレは……みてねーし」


「おれだってみてねーよ!」


 共犯同士、醜い争いをしている。

 しかしアダン(バ)の頭の最高到達点は壁よりも高い位置にあったのだ。何も見ていないとはどういうことなのか。

 これをクウヤが尋ねた。


「えっ?……おばけ?……ようかい?がこっちみてて……」


「はっ?」


 やはり頭を打ってしまっていたのかもしれない。

 そうこうしているうちに女子も出てきた。


「いい湯でしたね!」


「でしょ?皆で入れてよかった〜!おっ……もう出てたんだ!」


 クリスティナとスカーレッドが会話をしていた。そして男子が先に出ていたことにも気付いた。


「大丈夫だった?滑っちゃうなんて、ついてなかったんだね」


 スカーレッドはアダン(バ)の身を案じた。


「おー。そうだな。ついて……なかったな」


 ぎこちない返答であった。


「立ち話もなんだから帰ろっか」


 クリスティナの音頭で一行は大浴場を後にした。


「話さなくていいのか?」


 小声でビゼーはロッドに確認をとった。


「やめとこ。俺たちも怒られそう。褒められることは一つもないけど、なんのとっかかりもない壁を上り切っちゃったのは凄いかも……」


「確かにな……」


 二人で苦笑いした。


一七三二四年七月十七日(月)

ヘルヴェティア フィッシャー人間科学研究所


 数日間、スカーレッドは能力のノウハウを叩き込まれ、幾らか自らの能力をものにすることができた。

 暴発の危険性もないと判断され、この日出発することになったのだった。

 二度目の出発にはアダン(エ)のみが見送りに来た。


 一行がアダン(エ)と会ったのはここに来た初日以来であった。

 所長室に篭り続け研究を行っているらしい。

 多忙なことが良いか悪いかは彼次第なのであるが、休んでいないことを一行は心配していた。

 彼らがそう思ったのは、アダン(エ)の顔色であった。

 少し窶れて具合が悪そうなのである。


「大丈夫か?休んでるか?」


 ビゼーは第一声でそう尋ねた。


「研究に休みなどない。睡眠はある程度取っている。お前たちに心配されるほどのことじゃない」


「ある程度って……」


 声の調子はいつも通りである。

 重症ではないのかもしれない。


「でも、疲れたらちゃんと休んでね」


「気遣いに感謝する。達者でな」


 やはり通常運転である。

 やりとりが二回目だからだろうか。心なしか淡白である。


 ここでスカーレッドが頭を下げた。 


「エストレ先生!お世話になりました!故郷に帰ったら父と母も能力者かどうか聞いてみます」


「あぁ。そうするといい。能力者であればこちらから声をかけて研究することもできる。嫌でなければと伝えてほしい」


「はい!ありがとうございます!でも私、母は能力者だと思うんですよね」


「なぜだ?」


 アダン(エ)の目の色が変わった。

 疲れた中でも研究に繋がる話題には敏感だ。


「あの、母は人に色がついて見えるらしいんです」


「詳しく聞かせてくれ!……済まない!その前に紙を持ってくる」


「はい……」


 スカーレッドの返事も聞かず、彼は所長室へ向かった。

 数分で戻ってくるとケビンも連れていた。


「俺も聞いていいですか?」


「はい!もちろん」


「では頼む。時間はかかってもいい。些細な情報でも構わない!」


 スカーレッドは男たちの研究意欲じょうねつを帯びた眼差しに気圧されそうだった。

 以下スカーレッドの談話である。


 ——スカーレッドの母、ヴァイオレット・ヴィオラは人間に色がついて見えるという。ペンキのようにベッタリと濃く塗られているわけではなく、輪郭に若干の色がついているのだそう。

 しかし全ての人間に色がついているわけではないそうだ。

 彼女が出会った有色人物は七人。


 自分自身。

 夫・ウィリアム・ヴィオラ。

 娘・スカーレッド・ヴィオラ。

 娘の友達・クウヤ・インディュラ。

 彼の叔父・ギョウキ・インディュラ。

 その妻・ヤヨイ・インディュラ。

 そして、昔トアル村ですれ違った若い女性。

 小さな村故に、顔が分からない人物はいないはずであるので、この女性は村の住人ではないという。すれ違った当時は高校生くらいの年齢だという印象だったそうだ。


 以上七名。

 彼らの色はそれぞれ、シアン、緑、シアン、緑、青、緑、赤。

 四色までは観察しているが、他にもある可能性も残っている。

 ある程度血縁が関係しているとも考察できなくもない配色であるが、一体何が色を決定する要因なのか確定ではない。

 またすれ違った女性は一度しか見ておらず、微かな記憶が示した色であるという。

 彼ら以外の人間に色はついていないそうだ。

 したがって色が見える条件も不明である。

 写真では効果がなく、生身の体がないと色は見えない。

 また、基本色はついているのだが、たまに色が見えなくなる時もあるらしい。

 多いのは月経期間中や疲労が溜まった時等らしい。

 自分の色も娘を妊娠してから見えるようになったらしく、彼女の両親(スカーレッドの母方の祖父母——どちらも故人——)の色は見えなかったという。



 研究者は険しい顔をしてスカーレッドの話を聞き、メモを取った。

 話を聞き終えた彼らは一度アイコンタクトをとった。


「所長……」


「間違いない」


 一言ずつ交わすとアダンはスカーレッドの方を向いて言った。


「お前の母親は間違いなく能力者だ!」


 スカーレッドは覚悟をもった表情であった。

 そのまま尋ねる。


「やっぱりそうなんですね。根拠とかって?」


「子供の頃に見えなかった色が妊娠を通して見えるようになったというエピソードだ。能力者は性交渉で能力が覚醒することがあるというのは話したことだ。それに伴う妊娠で体の中に能力者を飼った状態になる。性交渉で刺激された生気が妊娠を経て覚醒するというのもよくある話だ」


「せ、性こ……」


 スカーレッドは顔を赤らめていた。


「済まない。『両親』の話題で『性交渉』は配慮が足りなかったな。言い回しを変えることはできるが……」


「そのままで大丈夫です……」


 両頬に両手を当てていた。

 渋々受け入れたという印象だ。

 

「それと、月経期間に能力者のパフォーマンスが下がるというのも根拠のある話です。データとして出ています。能力の発動は体調と深い相関がありますからね」


 ケビンが説明を捕捉した。


「そうなんですね」


「あなた方も例外ではありませんよ」


 ケビンは女子たちに忠告した。

 彼女らの顔つきが引き締まった。


「ここからはビジネスの話をしたい」


 アダン(エ)がかしこまって言う。


「ヴァイオレット・ヴィオラ氏を我が研究所に招聘したい!ついては住所を提供願いたい!交渉には俺が直接行く」


「そんな!突然すぎませんか?」


 スカーレッドは話の展開の速さについていくことができなかった。


 アダン(エ)もある種興奮状態であった。


「説明が足りていなかったな。端的に言う。お前の母親は俺の人生の研究テーマ『能力分類』に深く関わる能力を保有している可能性が非常に高い!恐らく色が付いて見える人物は全て能力者だ!血縁で色が変わると言うのには無色の人間が多すぎる。血縁の近い人間に色が出るという仮説には無理がある。であればだ!能力分類は完成すれば世界に衝撃を与えるテーマだ!よって今すぐにでも研究に取り掛かりたい!俺の熱意を汲み取ってもらいたい!よろしくお願いします!」


 アダン(エ)が頭を下げた。

 礼がかなり深かった。

 続いてケビンも同じ深さで礼をした。


 一同驚愕した。

 あのアダン(エ)が頭を下げ、敬語まで使っている。

 余程の重要事項であることを理解した。

 スカーレッドは少々考えたあとで言った。


「分かりました。住所をお教えします」


「ありがとうございます!」


 アダン(エ)は頭を下げたまま感謝を述べた。

 スカーレッドから彼女の実家の住所を聞くと、ケビンと共に出国申請に向かってしまった。


 見送りに誰もいなくなったため、一行は出発することにした。



一七三二四年七月十九日(水)

欧州連合国・フランセーズ ヘルヴェティア国境付近


 短期間で入国と出国を頻繁に繰り返す怪しい服装の怪しい七人組は国境検問で異常に怪しまれた。

 しかし特別渡航許可書や業務用渡航許可書(スカーレッドが入出国に用いているもの。これのおかげで剣を自由に持ち運べる)の効果もあってなんとか再入国を許可された。

 苦戦したのはクリスティナだった。

 一般のパスポートしか持っておらず、服装(?)も相まってクウヤら以上に疑いの目を向けられた。

 登山の様子を撮影した写真を見せたことで、幾らか信用が高まった。

 なんとか入国を許されたがギリギリである。

 ビゼーは、ジャックに特別渡航許可書を頼もうと画策した。


 欧連に入国して少し歩いたところだった。


「やっと現れたか!探したぞ!」


 クウヤ、ビゼー、ロッド、ミクリ、アダンは最大限の警戒をした。

 そうしなければならない人物の声が聞こえたからであった。

次回 知識


これからの季節、毎日投稿が難しくなる可能性があります。

最低限、週5(主に平日)はキープすることを約束すると共に毎日エピソードを届けられなくなることをお詫びします。また、年末年始は週5も厳しいことが予想されます。その件はその時に告知をしたいと思います。

私自身も最新話を早くお届けしたい気持ちはあります。

この忠告が無駄な文となるように努力はするのですが、ご理解いただけると幸いです。

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