一番に似合ってる
「アンジェリカ様!なんて素敵なの??凄く似合ってるわ!」
「ありがとう。ミナミさんもランナさんもすごく可愛いわ!とっても似合ってる!」
そう言って、お互いの可愛さを称え合う3人だった。
今日は学園祭で着る衣装が出来上がったので試着してみたのだ。
「やっぱり肩にボリュームを持たせて正解ね」
「フリルはもっとあっても良くないかしら?」
微調整を終えればメイド(侍女)衣装はほぼ問題なさそうだった。
「…しかしなんと言うか…。」
ミナミが半ばあきれ気味でアンジェリカを改めて見る。
「?」
「さすがにここまで品のあるメイドは、王宮にもいないんじゃない??」
「まったくです」
ミナミの言葉にランナも激しく同意する。
どんな衣装を着てもやはりアンジェリカはアンジェリカだ。
高貴なオーラはまったく隠れていなかった。
「そうですか?……私的には結構馴染んでるかと……」
どう受け取ったのか、少し残念そうにアンジェリカが答える。
「まあ、アンジェリカ様はやっぱりアンジェリカ様って事だから!」
そう言って、ミナミが話をまとめようとした時だった。
ざわざわっ。
何やら周囲が騒がしい。
執事姿に着替えを終えた、リュークリオンとランフォースが入ってきたのだ。
明らかに異彩を放つ二人のオーラにその場に居た誰もが思っただろう。
ーこんな執事は絶対いない!!
仮に居たとしたら、主人であるこっちが恐縮してしまい、お茶の一つも頼めなさそうである。
「……ある意味失敗じゃない?あんな二人にお茶を頼む度胸のある人間いる??」
ミナミの言葉に「なにが?全然頼めるわよ」と言うアンジェリカはやはり彼らの幼馴染だと実感するランナであった。
ーランフォース様……素敵過ぎる!!
袖のボタンをとめるランフォースのしぐさをぼーっと眺めるランナの横で、
ーなんてことよ!ヒーロー補正か!何来てもキラキラしやがって!!攻略対象め!このやろう!
素直にカッコいい事を認められないミナミであった。
「アンジー!!なんって事だ。何を着てもアンジーはアンジーだな!」
リュークリオンとランフォースが3人の所にやって来る。
「それ?褒めてますの??」
訝しげに問うアンジェリカにリュークリオンは「もちろん。とっても素敵ってことだ」と笑いながら返す。
とても優しそうな笑みを浮かべて。
それにつられてかランフォースもふっと優しい笑顔を見せる。
3人の間に幼馴染の空気が流れていた。
「まあ、私の事はいいわ!それより……どお?二人ともとっても似合ってるでしょう!!」
アンジェリカがいきなりミナミとランナを前面に出す。
内心二人とも「勘弁して!!」と思っていたが、アンジェリカはその事に全く気付いていない様子だった。
ーまってよ!やめてよ!何?この地獄?!
アンジェリカに悪意がないのがわかってる分、余計に二人にはいたたまれなかった。
先に口を開いたのはランフォースだった。
「……その、とても良いかと思います」
恥ずかしそうに答える姿に、聞いてるこっちまで恥ずかしくなりそうだとランナは思ったが、アンジェリカは容赦しない。
「良いとは?具体的には??何がどう良いのかはっきり言って下さらないと!」
「……あっ。そうですね、えっと……胸元のリボンが愛らしくて、ランナ嬢にとてもよくお似合いだと…」
「え?!あっ…ありがとうございます……」
突然の名ざしにドギマギしながらもお礼の言葉を紡ぐランナだった。
そんな耳まで真っ赤な二人をニマニマ見つめるアンジェリカの横で、
ーえ??今はハッキリとランナ嬢って言ったわね??
自分だけ取り残された気分になるミナミだった。
「安心しろ、この衣装、お前が一番似合ってるぞ」
そんなミナミにそう声をかけるリュークリオンに、一瞬ドキッとするミナミだが、すぐに言葉の裏を理解する。
「……それは私が元平民だからとおっしゃいたのですよね?」
「ほうっ。お前も中々貴族文化を理解してきたではないか。まるで本物の侍女かと見間違えたぞ。思わずお茶を頼むところだった」
ーくそう!!
一言文句を言ってやろうと思ったが、そこにちょうど着替えを終えたタクマが入って来た。
ただ、ネクタイがうまくできないのか、もたついていた。
タクマがミナミに気づき助けを求めるような視線を送って来た。
「もう、しかたないなぁ。あっ、リュークリオン様、義兄が困っている様なので失礼します」
そう言って、わざと丁寧にあいさつをして、その場を去った。
ーどうせ私は侍女がお似合いよ!
「あっ!待っ……」
ミナミを引き留めようとするリュークリオンだが言葉が出てこない。
ー幼馴染のもとに行こうとする彼女を私がなんと言ってひきとめるのだ?そもそもなぜ彼女を引き留める必要がある??
そんな自問自答をしているリュークリオンを見てアンジェリカは大きなため息をつく。
「…可愛いとまでは言わなくても、せめて、”いつもと違った雰囲気で”、似合っているとか言えませんでしたの?」
軽くリュークリオンを睨みながら言う。
「はあ?なぜ私があいつにそこまで気を使わねばならんのだ?」
その発言を聞いたアンジェリカはあきれたような顔でリュークリオンを見上げると、また大きなため息をつき、「のどが渇いたので飲み物でも取ってきますわ」と言って、スタスタと行ってしまった。
ー何だって言うのだ?!
確かにアンジーの友人なら気を使って社交辞令の一つでも言ってあげるのが筋かもしれない。
しかし、ここは学園内だし、ミナミはアンジーの友人と言うよりも……。
ーよりも?
改めて遠目にミナミを見る。
「……別に私は嘘を言ったつもりはない」
リュークリオンには、この会場に居る誰よりもミナミが一番似合って見えた。




