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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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お菓子の試食会

執事侍女喫茶の準備は侯爵家の力もあり(グレーゾーンだが)、順調に進んで行った。

無理やり参加させらた形のセルジュールも、いざ始めるとスザンヌ達を指示し、他をよくまとめ動いてくれる。

根は真面目なのであろう。


「ランナ、お菓子の方はどう??」

「ええ、今焼きあがったところだわ」

ミナミの問いかけに、ランナが返事をする。


今日はお店で出すお菓子の試食会である。

先日、公爵家の料理人から簡単にアレンジしてもらったレシピを頂いて、実際に作ってみたというわけだ。


「さぁ、皆さん、今日は試食会ですので遠慮なく意見を出してくださいね。それから、お茶との組み合わせも考えて頂けると嬉しいですわ」


アンジェリカが皆にそう言うと、皆嬉しそうに色とりどりのお菓子に目を向ける。


「どれも美味しそうねえ。」

「素敵だわ」


立食パーティーの様に、テーブルに様々な菓子を並べ、反対側には数種類のお茶を作り置いて準備した。

セットの組み合わせを検討するためだ。

リュークリオン、ランフォース、タクマにそれぞれオススメセットを作るつもりだ。

アンジェリカは最後まで「お茶は時間が立てば、味が変わってしまうから」とごねてだが、どう考えても時間も人手もないのでミナミは却下した。


「パイは、ジャムやフルーツを入れれば見栄えもいいし、あのレシピの記事なら前日に用意しておけば、当日役だけで手間もかからなそうね……」

「レシピはお役に立ったかしら?」

ミナミが真剣に検討していると、アンジェリカがやってきてお茶を淹れてくれた。

「自分たちで飲む分くらいは淹れてもいいでしょう??」

ミナミはきょとんとしてアンジェリカをみたので、アンジェリカはバツが悪そうに話す。


「ふふっ、何も言ってないわよ。ただ、本当にお茶がすきなんだなあって思っただけ」

「作り置きのお茶をだすなんて……私的には大分譲歩しましたわ」

毎回、公爵家の侍女たちを総動員させてお茶を入れさせていてはさすがに、グレーゾーンが超えてしまいかねない。


「スザンヌさん、ちょっと取りすぎではなくて??」

「エリーさんだって!」

最初は侍女になるなんてっと思った3人だったが、いざ蓋をあけてみれば、皇太子であるリュークリオンやランフォースを間近に見られる機会もあれば、こうやって美味しいものも食べる事もできる。

セルジュール様に聞けば的確に指示してくれるし、なんと素敵なのだろうと思うのだった。


「次は……あら?これは何かしら。ただのクッキー??」

エリーはひときわ地味なクッキーのような焼き菓子を見つける。

形もシンプルな丸で、何の工夫もなく、チョコやジャムなどの装飾もない。

「地味……ねえ」

エリーは思わずそう呟いた。

「その、それ、ガレットって言って私の故郷の伝統菓子なんですけど……」

ふと見ると、素朴な女が話しかけてきた。

確か、ランナとかいう男爵令嬢だったろうか。

大した身分でもないのに、アンジェリカ様に気に入られているのか、やたらと目につく。

この前は選択授業でも隣に座って居た。

はっきり言って、3人は気に入らなかった。

たかが男爵令嬢がアンジェリカ様の側近になろうとでもいうのか。

おまけにこんな地味なお菓子を学園祭で出すと?


「なるほど……、どうりで」

エリーは意味深に返事をする。

「ランナ様の故郷は余程、畑が多いのでしょうねぇ。こんなにも素朴お菓子が伝統菓子だなんて……」

「あまりにも特徴がなさすぎて、逆に目立ってますわねぇ。あっ、もしかしてそれが狙いなのかしら??」

スザンヌとジュリアナも援護射撃をする。


「あっ……私は、そんなつもりじゃ……」


うっかりしていた。

セルジュールと和解したからといって、この子たちが私を受け入れてくれたわけではなかったのだ。

”地味な男爵令嬢が出しゃばるな”

伯爵令嬢の彼女たちにとって、当たり前の感情だろう。

ランナは3人に話しかけたことを後悔した。


そこへ、逞しい腕が3人を遮るように割って入っると、ひょいとその菓子をとって口にした。


ー?!


「うん……美味しい」


「ラッランフォース様?!」

3人は間近に見るランフォースに動揺を隠せない。

しかも、菓子を食べている。

強面の美しい顔がお菓子を食べるとというギャップに、心を奪われない乙女はいるのだろか。

ランフォースはもう一口食べる。

上品な獣がゆっくりと、味わうように趣向品を食らう……。

ー私も食べられたい!!

3人はもう、ランフォースしか見えていなかった。


「確かに素朴だが……だからこそバターの風味がしっかり効いていて、ざっくりとした触感もいい。ランナ嬢、君の故郷の味と聞いたが?」

「えっええ!そうなんです。ガレットと言って……。私の故郷は酪農と麦の栽培が盛んでして、それで……」

「なるほど……ランナ嬢らしいお菓子だな」

ランフォースがランナを見て、にっこりと微笑む。

それはいつか、アンジェリカ様を思って微笑んだあの笑顔だった。

「ランフォース様?!えっ……それはどういう……」


「まあ、本当に美味しいじゃないの」

「セルジュール様!!」

3人が振り返ると、セルジュールまでもが、あのガレットというお菓子を手に取って食べている。

「素材本来の味がとても活かされていて、とっても美味しいわ。これはこれで素敵なお菓子よ。さぁ、あなた達もお食べになりなさいな」

そうセルジュールに促されて、3人はしぶしぶガレットを口へ入れる。


「まぁ!」

「なんて、美味しいの!!」

「バターも小麦もとっても美味しいわ!何個だって入りそう!!」

3人はもう上機嫌である。


「ごめんなさいね、あの娘たちいい意味でも悪い意味でも素直なのよ……。あっ!あなたが地味だとかそう言う意味ではなくて、自分達の感情にって意味ですわよ?!」

慌てるセルジュールを前にランナは怒りなど、もうどこにもなかった。


ーガレットが私らしいって……やっぱり地味っていう意味かしら??

ランフォースの笑顔にやられて、今日も顔が熱くなるランナであった。


「流石セルジュールさん!あの子達はセルジュールさんに任せておけば大丈夫ね?」

ミナミは嬉しそうにアンジェリカに話す。

男爵令嬢のランナが、アンジェリカやリュークリオン達と親しくなることは、周囲からのやっかみを買うことになると少し心配していたのだ。

「これで、私たちがいない時でもセルジュールさんがいれば安心ね!あの子達ももう何も言ってこないでしょ」

「そっそうね」

アンジェリカは笑顔で答えながらも、あの(令嬢たちを諭す)ポジションは私のはずでは?!と謎の危機感を感じていた。


「……ランフォース、そんなにそのお菓子気に入ったのか?」

さっきから同じお菓子ばっかり食べているランフォースをいぶかし気にリュークリオンが尋ねる。

「ああ、……今日から俺の好物はガレットだ。いいな?」

「いや、何の宣言だよ??まあ、いいやそんなにうまいのか?なら私も1個もらおう」

「やらん。自分で取ってこい」

「ケチか!!それでも騎士か!!……もういい!いらふぁっ!」

文句を言うリュークリオンの口にランフォースがガレットをねじ込む。

「う……美味いな」

「だろ?」

照れながら言うリュークリオンに、極上の笑顔を見せるランフォースだった。


その後、密かにランフォース×リュークリオンというのが乙女達の間で話題になったのは、本人たちは知る由もなかった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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