幕間015 神イツキに関わったモノたち、その後 <近衛騎士団長:ケビン・キャプラー>
俺達は、国王の守護者という役割なんだが、実際にはあのババアが余計なことをしないようにする、旧三カ国の元王族から派遣された監視役だ。
派遣される時は、癒やしの御手の聖女という肩書に、うら若き美少女を想像して下半身にテントを張っていたものだが・・・実際には60超えのババアだった。萎えた、ふざけんなよ!
この近衛騎士団ってのは、各所からの秘匿情報がラクラクと手に入る。それをネタにして貴族たちを脅して小金を徴収した結果、貯蓄が貯まる貯まる!とっても美味しい仕事なのだ。
ただ、王都の貴族はすべて旧王族の関係者のため、流石に小遣い稼ぎ以上の悪事は出来ない。やりすぎると旧王族のトップに排除されてしまうからな。
なにか、大っぴらに悪事をしても反撃されない程の情報や、強大な力を手に出来れば!と考えているところに、ユグドラシル男爵家に神が降臨したという情報を得た。
流石に3日間の発光現象を見せられたら、ガセとは言い難い。
早速、偵察を生業にするモノを派遣したのだが、以後、音沙汰が無かった。ガードが固いのか?神の御業なのか?とりあえず様子を見ることにした。
その後入手した情報では、その神は人として生を受けたそうだ。ならまだ0歳だ、慌てて手を出す必要はないだろうし、国王が召喚した時にでも手を回せばいいだろう。
そちらは手を引いたのだが、ユグドラシル男爵家から今度は【殲滅の竜皇女】の話が出てきた。
こちらも数多くの目撃情報や実際に貴族学院が襲撃されていたのだ。一時捕縛命令も出たが、詰問状に対しユグドラシル男爵家からは「竜は操れない」と回答が来て、竜皇女の捕縛命令は解除された。
だが、王都に現れる竜の動きを見れば、うまく操っているのは丸わかりだ。
ならば・・・その竜皇女を俺の女にすれば、自動的に強大な竜の力を手に入れられる。名前はイザベル・ユグドラシル、13歳か。丁度貴族学院に入学してくるそうなので、国王名で捕縛してから、硬軟併せた手練手管で手籠めにすればいい。俺は顔はいいし、世間知らずの田舎貴族の小娘をたぶらかすのは容易い。
竜皇女が参加する入学式当日を狙って、近衛騎士団全員で行動に出たのだが、学院の生徒の一部が反撃してきた。実力的に簡単に一蹴出来るのだが、誰が何処の貴族の娘なのか分からない。こちらも後ろ暗い事をしていると自負しているので、大怪我をさせるのはまずい!対応が難しいな。
すると「あっ!?イザベルの姉御!」と言う声が聞こえた。なるほど確かに肩に竜を従えている。
「なに!?やつだ!あの小さな竜が肩にいる女だ捕縛しろ」と命を出す・・・ふむ、しかも良い女だ。まだまだ若いが、これは将来が楽しみだ!
などと呑気に考えていると、いきなり体が硬直した!しまった!魔道具か!?・・・しかし、これ程の高性能な魔道具だ。何度も使うことは出来ないだろうし、拘束時間も短いはずだ。
様子を伺っていると、赤子が一人でトコトコと歩いていき、白い水球が現れ、傷ついた生徒が次々に飛び込んでいった・・・これは一体何なのだ?と考えていると、ようやく拘束が解かれた、やはり短時間の拘束だった。
さて捕縛を開始するか?と考えていると、赤子の周りを漂う剣が『さて、うちの家族に手を出そうとした愚行を、身にしみて理解させないとな?』と喋りだした。どうやらあの赤子の代弁をしているようだな。
もしや、あれが噂の現人神か!?・・・とりあえず、王命を騙って言葉を掛けて様子を見てみるか。
「私は、近衛騎士団長のケビン・キャプラーだ。どんな魔道具で私達を拘束したのか知らないが、そんな高性能なものはいくつもないはずだ。お前たちの横暴を我が王は許さない!しかも竜を使って王に脅しをかけるとは許すまじ!大人しく捕縛され、おぶやぁ!!!」『話が長い!』・・・金的攻撃を食らってしまった。王命を騙っても全く躊躇がなかった。やはりこいつが神なのか?
痛みに悶絶していると、近づいてきた部下達が金的攻撃を受け悶絶。止めは、惚れ惚れするような地属性魔法で、あっという間に近衛騎士団は全滅となった。
その後、赤子がトコトコと近づいてきて『赤ちゃんに負ける最弱団長に朗報だ。私、【男の天敵】って、スキルを持っていてな、お前たちの息子がな?ぷぷぷ!やっぱ後のお楽しみだ!』
・・・俺達は一体何をされたのだろうか?
その後は、王城まで投げ飛ばされて大怪我を負わされ、後に事実を知った国王に激怒され、治療も無く放逐された。
国王が、俺の好みピッタリの成熟した女性になっていて驚き興奮したのだが・・・俺のドラゴンが反応しないだと!?
あの赤子にやられたのはこれか!?悪魔か!あいつは!
監視の依頼元に泣きついたが「0歳児に負ける騎士など用無しだ!」と捕縛され、魔物の寄せ餌として辺境地域に出荷された。
・・・出荷されていく人々の怯えた顔を見るのが楽しくて、喜々として行っていた仕事。今度は自分自身が出荷されるとはな。無理せず小金で満足していれば、とは思うが、後悔先に立たずだ。
あの赤子の話だと、あそこも立たないらしいしな。
ははは・・・もう疲れた。