別府温泉編 1
雪国の不倫騒動で死にかけたノゾミ。
だがその結果、彼女は昇進を果たす。
新しい赴任先が決まるまで、会社からの慰労の意味も込めて彼女に与えられた赴任地は・・・
雪国とは間逆。
地獄のような湯気沸き立つ観光地、「別府温泉」だった。
日本有数の温泉地、この地でノゾミは一時休息をとるのであった。
―――だがしかし
―――ノゾミが行くところ、人と交わる時、『恋』が生まれる
―――ノゾミは再び息をするように、不倫をしてしまうのだ
―――さすれば、そこに悪ある時、もう一人も現れる。
―――温泉地を舞台に、マイコとノゾミが再び出会うのだった
◆登場人物
ノゾミ 婚約破棄騒動で昇進。慰労の意味込めて、暫く別府勤務。20代前半。
マイコ ノゾミの親友。不倫を絶対許さないマン。妊娠8ヶ月目の妊婦。20代前半。
賢治 別府支社の副所長。結婚して5年目だが、子供はいない。30代前半。
――――
◆1
雪国の不倫騒動後。
ノゾミは一時的に「別府温泉」で有名な大分県別府市に赴任することになった。
毎年800万人は訪れる人気観光地だ。
新たな赴任先が決まるまでの慰労期間。
最初から数ヵ月後には別の地に赴任することが決まっている。
そのため気が楽だった。
ノゾミは今、別府温泉に来ていた。
別府温泉とはいっても、別府市内には「別府八湯」と呼ばれる、8箇所の温泉郷がある。
大まかな特徴は以下だ。
「別府温泉」:別府八湯の中心。JR別府駅の周辺に位置し、夜もネオン輝く繁華街。
「浜脇温泉」:比較的小さな共同温泉が多く並ぶ。
「観海寺温泉」:大型のレジャー施設が多く並ぶ。
「堀田温泉」:市街地から離れ、落ち着いた場所。
「明礬温泉」:江戸時代から「明礬=湯の花」が採取されてきた。
「鉄輪温泉」:入浴ではなく、奇妙な温泉の景観を楽しむ「別府地獄めぐり」の中心地。
「柴石温泉」:別府地獄めぐりの一つ「血の池地獄」がある。酸化鉄などによって赤く染まった温泉である。
「亀川温泉」:別府競輪場があり、場内に温泉があることでも有名。
それぞれに特色があり、雰囲気も大きく異なる。
で。
今ノゾミがいるのは、その中でも一番有名な「別府温泉」。
JR別府駅の周辺に位置する温泉郷である。
温泉の一つに入り、雪国での疲れを癒していた。
湯に浸かりながらもノゾミは思うのだ。
今回の赴任では、不倫をしないでおこうと。
ここにいるのは長くても3ヶ月程だろう。
それならば、久しぶりに恋人無しで、一人でゆっくりと楽しもうと思ったのだ。
幸いここ「別府」には観光地がたくさんある。
別府八湯を全てめぐるのも良いと思う。
それに入浴ではなく、奇妙な温泉の景観を楽しむ「別府地獄めぐり」をするのも楽しいだろう。
温泉料理も食べてみたい。
ノゾミは今後の楽しみを頭の中に思い描きながら、ゆっくりと湯に浸かったのだった。
―――いい赴任になれば良い
―――心からそう思ったのだ
―――この時は