4話:助け合いは当たり前
※こちらは2部になります。
1部もぜひ読んでみてください。
……ヒュー…
「咄嗟に顔守れてよかったー…腕は痛いけど!」
外へ放り出されたカナタは
武器もなく、丸腰になってしまった。
飛ばされながらも
改めて自分の『白い足』を見た。
「踏ん張ったら、全部力が逃げちゃった
コレすごい力を持ってるんだなぁ…げほ……」
「っとぉ、そんなことよ……っり!!」
カナタは腰になびかせている
羽のコートを翼に変え、体の捻りと共に
空中でブレーキをかけ滞空する。
「ストーーップ〜!…ふぅ。
派手に蹴っ飛ばしてれたなぁ!
両腕は少しビリビリしてるし……ん?」
少し遠いところに
両手を上下に動かしている何かを捉えた。
「あれ、なんだろ…?飛んでる?の?」
首を左右に振り下を見る。
「いやいや!今はシオン!」
──コンビニ内、シオン。
カナタはドロップに蹴り飛ばされ、
スタッフ専用部屋から壁を突き破り
遥か上空へ行ってしまった。
「……あ…そんな……私が、私…が…」
目から涙が出そうになるが
悲しみに浸る暇などなかった。
グゥゥゥァァ〜…。
ドロップは店内に残されたシオンを見た。
シオンは今、完全に
ライオンに狙われたウサギ状態だ。
「い、いや…や、やめて……」
ガァァァァ!!
ドロップが突進してくる。
口からはヨダレが飛び散っている。
とても美味そうに見えたようだ。
「ひぃ…!」
シオンは逃げ回っていた時の自分に戻り
脊髄反射で足が動き、突進を避けた。
ガシャーン!…ゴン!
ガタガタガタ。
ドロップは配置されている机などに
ぶつかり倒れ込む。
しかし、ビクともしないピンピンしている。
シオンは震えが止まらず、怖くて動けない。
だが、敵は待ってくれない。次の突進がくる。
「……来ないでッ…!」
シオンはまた避ける。
その突進は、飲み物の在庫を入れておく
冷蔵庫部分と商品棚、ガラスケースを
破壊し、レジの方へ直進する。
店内が壊れる音、ガラスが割れる音。
様々な音が折り重なっていく。
──上空、カナタ。
早く戻りたい……どうしたらいい……。
翼を上下に動かし滞空しながら
カナタは考え、そして思いつく。
思いついたが、地面の上でしかやったことがなく
空中ではやったことがなかった。
だが……やるしかない状況なのも事実だ。
カナタの目はコンビニを探した。
この街は明るくない、夜だとしても
コンビニは24時間いつでも、分かりやすく
そして迎え入れてくれる為、明るく光っている。
しかし、今はそんな光の欠片すらない灰色の街。
蹴られて壁を壊したが、それで出た煙は
優しく吹いている微風で既に消えている。
全てに色がない。
何かがないと見つけられない。
カナタが自分の目を恨んだのは初めてだ。
「あぁ!!くそー!!急がなきゃなのに!
どれがさっきまでいた所なのか分かんない!!
もう!もう!もうー!!!」
空中で足を地団駄させる。
──その時だった。
……ドゴォーーン!!ガジャーン!!
聞こえた。耳はシオン程じゃない。
だがこの音は、一つではなく折り重なっていた。
すぐに音の方を見た。
「あそこか!!!」
次にその目は、少しの土煙を捉えた。
あそこがシオンがいる場所で
自分がさっきまでいた場所と確信した。
「今……行くからねッ!!!」
カナタが思いついたのは
スーパーでドロップにトドメをさした時の
あの速さを空中で出すこと。
空中でカナタは深く足を曲げ
頭と体をコンビニに向け、斜めの姿勢になる。
軍手のことなど気にしていなかった。
翼を大きく広げ、翼と脚にとにかく集中した。
目を閉じ、息を吐く。
「……ふぅー…………。」
そして、ゆっくり開いたその目は
コンビニをロックオンする。
「(うまくいってね…)」
成功する不安は拭えず、それは賭けだった。
祈った直後、一度の羽ばたきと同時に
脚に溜めたその力を解き放った。
その場に羽が数枚抜け、舞い落ちる。
カナタは消えていた──。
1──。
2─。
3。
バァーン……!!!
爆音がその場に響き、スーパーの時より
段違いの速さを出した。
シオンを助けたい気持ちが強く働き
その速さは、爆速。
この時、カナタの脚には痛みが発生していたが
当然、気にしていない。
そんなことはどうでもよかった。
──コンビニ内。
バァーン!!……ヒュー…………
何かが爆発したような音と
その後に聞こえている極小の風を切るような音
シオンの耳はその音を逃がさず
カナタがこっちに向かっているのを理解した。
「カナタ…!無事だったんだ!
でも、どうやってここを…」
首を振り考えるのをやめ、
ドロップに集中する。
「いや、まずはコイツだ!
ココに何か使えそうなものはないかな……」
カナタのように戦えないシオンは
一人作戦会議を始めた。
だが、直後にドロップが声とともに
何かを投げてきた
ァァァァオォアッ…!
ブン─ブン──!
「うわぁ!ひっ…危ない……!」
「ちょっと!それは色がついちゃう玉!
落ちなくなっちゃう!」
ガラガラガラ…
グ……グォォォォー!!
ドロップは商品棚を両手で掴み、
頭上へと運ぶ、そしてそれを掴んだまま
シオンに向かって走ってきた。
ガァァァオオォォァア!!!
ドン!ドン!ドン!ドン!
「いや、ちょっと、それは…!待っ──」
ドーン!バゴォーン!!ガジャーン!
上空から、何かがとんでもない勢いで
天井をぶっ壊し、その勢いのまま、
ドロップの左膝を蹴り千切る。
アアアギャァァオオァァ……!!
さすがにドロップも激痛だった。
両手で掴んでいた棚を離し、後ろへ倒れる。
そして、千切れたソレは宙を舞い、
タイルの上に落下する。
千切れた箇所と千切れたソレからは
血が吹き出し、そこら辺に撒き散らす。
プシュー、シャー、ビチャビチャビチャ
ゴ…ト…ベチャ…プシュー……
ビチャ、ビチャ…
「………」
その一瞬だけ、カナタの顔はいつもと違った。
返り血を浴びても、ドロップの反応を見ても
何も反応しなかった。
しかし、それも2、3秒。
すぐいつものカナタに戻った。
「セーフ!間に合ったー!
初めてやったけどできたー!あははは!」
「シオン、大丈夫ー?!目印なくて困ったけど
煙と音出してくれて助かったよ!」
「私は……だ、大丈夫、カナタこそ平気なの!?」
「蹴られた腕がちょっと痛かっただけ!平気!」
「いや…腕も体もだけど、そうじゃなくて
あの、そっちより、カナタ……
足……も、燃えてるよ?」
「え、足?燃え……あーーーーっつ!!
なんで!?なんで燃えてんのぉー?!?!?
あーっつ!!」
カナタの速度に耐えられなかった軍手は
摩擦熱により燃えていた。
脚をパタパタやるだけでそれは取れた。
燃えた軍手は、倒れているドロップの
顔に舞い降りた。
ドロップの顔が熱くなる。そして燃える。
パチパチ…バチ!バチ!
ドロップは叫んで両手で顔を叩き
火を消そうと必死になる。
暴れて、千切れた箇所から血も舞う。
しかし《痛さ》より《熱さ》の方を嫌がっている。
ォォォ…!!フー…!フー……!グォォァ!
ドロップの様子を見て、シオンは気づいた。
こいつの弱点は『火』なのだと。
「足を全く気にしないで、
燃えてることを嫌がってる?……そうか!
確か…これがそうだよね?カナタ!」
「ふぅー!ふぅー!あちちち…
な、何?どうしたの?ふぅー!」
「このドロップ、燃えてるのを嫌がってる!
たぶん、火が弱点なんだよ!
だからコレ!あいつに全部かけて!」
シオンは曖昧な記憶を頼りに
今必要な容器を取り、
飛び散ったガラス片を使い穴を開け
カナタにも手渡し、自分もやる。
手に取ったもの、それは料理を作る時に
当たり前に使う《サラダ油》。
作戦名《火に油を注ぐ》を実行した。
ドロップは苦手な火に耐えられず
燃え続け、火はだんだん大きくなり
叫び声はだんだん小さくなっていく。
やがて、灰になり壊れたコンビニに入る
すきま風に乗って消えていった。
「……や、やった…!
ど、どんなもんだい…私だって……!」
「うわぁ!すごーい!あの液体で
もっとぶわーって!」
「何とかなったね、シオン!やったね!
あーでも、アレもなくなるのかぁ、仕方ないか。」
「……」
「ん?どうしたの?倒したのに」
「いや、あの、その…」
シオンは全く嬉しそうではない。
その理由を説明をしようとした時だ。
シオンの耳は、別のやつがこちらに
向かってくる音を捉えた。
「カナタ、説明はあと!すぐここを離れよう
別のが近づいてきてる!」
「げっ、もう一体はまずいね。
お腹減って喉も乾いたから無理だー!
あーっとその前に武器武器…」
カナタ達はその場を離れた。
シオンの耳を頼りにコンビニとは逆方向で
やや遠くにあった建物の中に逃げ込んだ。
「とりあえず逆方向だし、平気そうかな」
「そうだね、ここに食べ物あるかなぁ?」
シオンはさっきのことを話し始める。
「あの、カナタ……その、私…」
「んん?なぁに?」
「私がカナタの爪に履かせた…
白い布のせいで、その…蹴っ飛ばされて……
その…(ぐずぐず……)」
シオンはずっと後悔していた。
良かれと思った行為が
まさかカナタをあんな目に合わすなんて
思いもしなかった。
あれさえなければ、もっと楽だったのにと。
ドロップばかり気にして、
カナタの事を考えてなかったなと。
後悔と共に考えてしまった。
一緒に来ない方がよかったのではないか。
また同じことをしでかすかも分からない。
お荷物になるんじゃないかと。
しかし、そんな思考やシオンの事など
気にせず容赦なくぶった斬ってくる。
「あぁ!あの白い布ね!ツルツル滑るやつ!
あれ凄いよ!足の力が全部逃げちゃって、
踏ん張れないの!びっくりした〜!」
「でも武器はなかったし、どうなるかと
思ったけど、でもあの時はシオンのことで
いっぱいいっぱいで、助けなきゃ!って
それだけだった!でも無事でよかった!」
「あの煙と音の目印だってシオンが私に
伝えようとして何とかしたんでしょ?」
「シオンが一人でも戦ってるんだって
わかったし、シオンも強いよ!
うん!すごかったよ!」
シオンは、その場にしゃがみこむ。
下を向き、もう言葉を発しなかった。
涙を溢れさせ、泣いた。
泣き声は最小限に抑えたまま。
泣いてるシオンを見て、アワアワするが
カナタはしゃがみ
そっと自分の体に寄せ抱きしめた。
そして─。
「え、えっと……まだ、シオンと
一緒の時間は短いけど私には
シオンは必要なの。その耳も必要なの。
食べ物と飲み物が分かるのもシオンのおかげ
さっきだってシオンが戦ってたから
戻れたんだから。」
「だから……離れようとか考えなくていいよ。」
カナタはシオンの考えがわかった訳じゃない。
けれど、自分が分からない事や
耳で危険を教えてくれること
食べ物と飲み物のことを教えてくれること。
カナタにはシオンが
自分にとって必要な人だと直感が告げていた。
その直感が、シオンの考えを見透かし
抱きしめ、言葉をかけたのだろう。
シオンは……喋らなかった。
シオンは……涙が止まらなかった。
シオンは……強くなると決意した。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
この作品は「勢いとテンポ」を大事に、とにかく楽しく書き進めています。
ゆるい気持ちでお付き合いいただけると嬉しいです!




