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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第40話『ノクス、血の記憶に触れる』

 ばあちゃんの家の奥――一切の光を遮る結界の間で、ノクスはただ一匹、静かに座っていた。


 封印陣に囲まれたその空間は、まるで外界との繋がりを絶った“内側”のようだった。




「にゃう……(力を馴染ませろ、ってか)」




 小さく吐息を漏らし、ノクスは瞳を閉じた。


 次の瞬間――闇が、深く沈む水のように広がり、その中に“記憶”が浮かび上がった。



 赤い月が空を裂き、世界が血に染まっていた。


 燃える修道院。

 聖職者達の祈りは空しく、黒い影が一つ、炎の中に佇んでいた。


 それが、“彼”だった。

 真名はノスフェラトゥ・アルフレッド。

 真祖の吸血鬼。

 死を超越した、常夜の王。


 だがその身は、あまりにも傷ついていた。


 


「……もういい。終わりでいい……」


 


 不死と呼ばれながら、彼は確かに“死”を望んでいた。


 孤独、飢え、戦い、裏切り――何百年も続いたそれらに、心がすり減っていた。


 血の渇きが満たされる事はなく、ただその存在が“災厄”と呼ばれるだけの人生。


 


 それでも死にきれなかった彼は、夜の町外れで倒れた。


 


 そして――。


 


 小さな手が、そっと額に触れた。


 


「だいじょうぶ……? こわくないよ。ここにいていいから」


 


 その声は、あまりに澄んでいて。


 その瞳は、夜よりも優しかった。


 


 少女は、幼い愛菜だった。


 


 家族にさえ見放された“得体の知れない存在”を、彼女はただ、当たり前のように受け入れた。


 


「きみ……ねこさん、なの?」


 


 ノスフェラトゥは答えられなかった。

 言葉も、力も、なかった。


「怖くないよ。ボク、歌えるから……イノトゥア、導きの唄……」


 妙に温かさを持つ唄だ……。 


 だがその夜から、彼は少女のもとに留まる事を決めた。


 


 猫の姿を真似て、小さな命として。


 常夜の王ではなく、ただの“ノクス”として。


 


 初めて、名前を持った。


 


 それは、呪われた怪物が“誰かに救われた”瞬間だった。



「にゃう……(あの時、おれは確かに……)」


 


 ノクスは目を開けた。


 己の中に渦巻いていた“力”は、もはや暴れるだけのものではない。


 静かに、形をなそうとしていた。


 


「にゃう……(見てろよ、愛菜)」


 


 この力を、もう誰かを傷つける為にではなく、守る為に使いたい。


 


 それが、今の“おれ”だ。


 


 その瞳が、一瞬だけ赤く光った。


 


 


 ――それは、真祖の力と、幼い優しさの記憶が繋がった証。


 次回予告


 第41話『ばあちゃん式・地獄の霊力修行②:限界修行』


 ノクスの秘められた記憶と“力の代償”を胸に、修は歩き出す。

待っていたのは、ばあちゃん式・問答無用のスパルタ修行!

飛ぶ!跳ぶ!祓われる!?

「これ……修行って名の地獄じゃねえか!」

「にゃにゃう!(しゅー、今こそ“本物”になる時だ!)」


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