第38話『霊力の鍛錬』
ばあちゃんは、ノクスの前でぴたりと足を止めた。
そしてしばらくじっとその姿を見つめ――小さく呟く。
「……こいつ、根源を喰ったな?」
その言葉に、俺も愛菜も息を飲んだ。
「無茶しよって……だが、喰えたという事は、それだけの器を持ってるという事じゃ。いや、こいつだからこそ、喰えたのかも知れん」
ばあちゃんは膝をつき、ノクスの目を覗き込むようにして言った。
「この気配……やはり、ただの妖怪じゃないな。――真祖に連なる者、もしくは……」
「にゃう……(見抜くか、ばあさん)」
ノクスはふてぶてしく尻尾を振ったが、どこか誇らしげだった。
「なるほど、道理で厄介な気配を引き寄せやすい訳じゃ。だが、喰ったはいいが、まだ力を持て余しておるな」
「……え?」
俺が問いかけると、ばあちゃんは俺とノクスを交互に見た後、静かに立ち上がる。
「お前ら、これからしばらく“修行”じゃ。――修、お前には、より深い霊力の扱い方と術式を。そしてそこの猫……ノクスと言ったな、お前には喰らった力を“自身のもの”にする鍛錬が必要じゃ。今のままでは暴走の危険もある」
「にゃう……(うげ、マジで?)」
「おうマジじゃ」
「にゃう……(愛菜以外でおれの喋ってる声が分かる奴がいるとはな……) 」
ばあちゃんの笑みは、どこか怖いものだった。
「力が満ちれば……いずれ“姿を変える力”も得られよう。自分の力としてな」
ノクスがピクリと耳を動かす。
「にゃう……(つまり、修行の果てに“本来の姿”を得るって訳か)」
俺はノクスを見やった。
「……やるか、ノクス」
「にゃう(しゃーねーな)」
ばあちゃんが奥の襖を開ける。
その向こうには、張り巡らされた封印陣と、見慣れない祭具がずらりと並んでいた。
長い戦いの、その第一歩。
俺達は、ただ静かに――頷いた。
次回予告
第39話『ばあちゃん式・地獄の霊力修行』
封印された“悪意の核”と対峙した修とノクス。
それぞれに残された異変と力を前に、修は決意する。
頼るべきは、最強の祓い師――ばあちゃん。
始まる、逃げ場なき霊力修行。
ばあちゃんの笑顔が一番怖いって、知ってたか?
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